このページの要点
- 店の営業許可を、間借りする事業者に使わせることはできない。営業許可は営業する人ごとに必要(食品衛生法55条)。
- 同じ厨房を時間帯で分ける場合の扱いは保健所の運用によるため、契約前に図面とメニューを持って相談してもらう。
- 間借りさせるには大家の承諾が必要。大家に隠す前提の秘匿条項は、発覚時に店も間借り側も営業の場所を失う。
- 使える時間と場所、光熱費の按分、食品事故の保険の被保険者を、契約書で具体的に決める。
間借りのさせ方と、店が決めておくこと
| させ方 | 内容 | 店が決めておくこと |
|---|---|---|
| 昼営業の間借り(ランチ・カフェ) | 夜営業の店の、昼の時間帯に別の事業者が飲食店を営む | 営業許可の名義、厨房設備の使い方、仕込み品の保管場所、夜の営業への引継ぎ時刻 |
| 曜日貸し | 定休日だけ店全体を使わせる | 看板・のれんの掛け替え、店の電話や予約への問い合わせの扱い |
| 厨房の一角での製造 | 空きスペースで菓子・惣菜などを製造させ、別の場所やネットで販売させる | 製造業の許可の要否、保管場所と表示のルール、出入りの時間 |
| イベント的な出店 | 1日だけ、数日だけ使わせる | 臨時営業の扱い、保健所への相談を誰がいつまでに行うか |
営業許可は「営業する人」ごとに必要
飲食店営業などの食品衛生法上の営業を営もうとする者は、都道府県知事(保健所設置市などでは市長など)の許可を受けなければなりません(食品衛生法55条1項)。許可は営業を営む者が受けるものなので、場所を提供する店がすでに許可を持っていても、別の事業者がその許可を使って営業することはできません。
- 間借りする側が、自分の名義で営業許可を取るのが原則。店の許可を貸すことはできない。許可の申請では、施設の設備が基準を満たしていることが求められる
- 同じ厨房を時間帯で分けて複数の営業者が使う場合に、それぞれが許可を取ることを認めるかどうか、どのような条件を付けるかは、自治体や保健所の運用によって異なる
- 営業の施設ごとに、食品衛生責任者を定める必要がある
- 提供するもの(調理した料理か、包装済みの菓子か、製造して持ち出すか)によって、必要な許可の種類が変わる
- 火を使う設備や客席の配置によっては、消防署への届出が必要になることがある
間借りの申込みを受けたら、契約を結ぶ前に、施設の図面とメニューを持って管轄の保健所に相談してもらいます。店の設備で間借り側の許可が取れるかどうかは、店にとっても、空き時間を押さえたまま収入が入らない事態を避けるための確認です。契約書には、許可の取得を利用開始の条件にし、写しの提出を受けてから厨房を使わせる条項を入れておきます。美容・リラク系など飲食以外の業種の届出は、シェアサロンの始め方のページで業種別に整理しています。
条文例:営業許可の取得を利用開始の条件にする
乙は、本件営業に必要な食品衛生法上の営業許可その他の許認可を、自己の名義、責任及び費用において取得し、その写しを甲に提出する。
前項の許可を取得できないときは、乙は、本契約を解除することができる。この場合、甲は、受領済みの使用料を乙に返還する。
事務所が見た飲食の間借り契約には、営業許可を誰が取るのかを定めた条項がありませんでした。食品を扱う契約では、最初に確認すべき欠落です。
大家の承諾は「隠さず取る」
間借りを提供する店も、多くは物件を借りて営業しています。賃貸借契約で転貸や第三者の使用が禁止されていれば、無断で間借りさせることは解除の原因になります(民法612条)。
事務所が見た間借り契約には、「店は、利用者の事前の同意なく、本契約の内容を大家に開示してはならない」という条項がありました。大家に知られると困る、という前提が透けて見える条項です。発覚したときには、店だけでなく、間借りしている側も営業の場所を失います。大家に隠す前提の間借りは避け、承諾を取ってから始めます。
| 確認すること | 見る資料・相手 |
|---|---|
| 物件の賃貸借契約で、第三者の使用・転貸・使用目的がどう定められているか | 自分の賃貸借契約書 |
| 間借りの業種・時間帯・看板・のれんについて、書面で承諾を得たか | 大家・管理会社 |
| 店の営業許可の内容(施設の範囲)と、間借り側の許可の申請がぶつからないか | 管轄の保健所 |
| 自分の物件の契約期間と更新の見込みを、間借り側に開示できるか | 自分の賃貸借契約書 |
使える「時間」と「場所」を特定する
事務所が見た飲食の間借り契約は、使える範囲を「未使用時間帯」と「未使用スペース」の二つの軸で特定していました。
| 軸 | 内容 |
|---|---|
| 時間帯 | 朝から夕方まで。夜の営業がない日に限り、前後の延長を書面の承諾と別料金で認める。それ以外の時間の立入りは禁止 |
| 専用部分 | 階・区画ごとに指定。範囲は店の判断で調整することがある |
| 共用部分 | トイレ・シンクなどは共用。清掃の分担を決める |
| 敷地内のスペース | 専有は禁止。使い方は店の指示に従う |
| 立入禁止の区域 | 階段・事務所など、指定以外の区域 |
同じ契約書には、締結してすぐに現地で、設備の使い方と原状回復の範囲を協議し、その結果を記録して契約の一部にする、という条項がありました。厨房機器の使い方は、言葉で書き切れない部分が多いものです。写真や一覧で記録して契約の一部にする方法は、間借りに限らず、居抜きの物件や設備付きの場所貸しにも使える工夫です。
条文例:現地での協議結果を契約の一部にする
甲及び乙は、本契約の締結後速やかに、本物件において、乙が使用する設備の範囲及び使用方法並びに原状回復の範囲について協議し、その結果を記録した書面(写真を含む。)を作成する。
前項の書面は、本契約の一部を構成する。
費用の決め方:使用料・光熱費・ゴミ・延長
- 使用料は場所の基本的な対価だけと明記し、他の費用は別建てにする
- 光熱費は、店の過去1年の平均の一定割合を負担し、平均を超えた月は超えた分を追加で精算する
- ゴミ処理費は月額の定額で別建て。分別は店の指示に従う
- 時間の延長は1〜3時間の段階料金とし、前月25日までに申請して承諾を得る
- トイレの紙・ハンドソープなどの消耗品は、間借りする側が自費で補充する
- 大家から家賃の値上げがあった場合は使用料の改定を協議し、まとまらなければ解除を協議する
食品事故と保険
飲食の間借りで最も重いリスクは、食中毒などの食品事故です。事務所が見た契約では、食品事故・対人対物・火災・盗難をカバーする保険に店が加入し、その保険料を間借り側に請求する形をとっていました。
ところが同じ契約に「店は一切責任を負わない」とも書かれており、保険の被保険者が誰なのか、店の免責とどう関係するのかがはっきりしませんでした。保険をまとめて手配するなら、誰が被保険者か、間借り側の営業中の事故が補償されるか、保険で足りない部分を誰が負うかまで、契約書で確認しておきます。間借り側の使用料の未払いやルール違反への対処は、利用者トラブルの対処のページをご覧ください。
スタッフ・衛生・鍵
- 間借り側の従業員・アルバイト・委託先の行為は、間借り側の責任とし、教育と管理の義務を負わせる。改善がなければ解除を検討できるようにする
- 専用部分と共用部分(トイレ・シンクなど)の清掃の義務を分けて書く
- 鍵はキーボックスで管理し、持ち出し・複製・再配布を禁止する。違反は即時解除の事由。店の都合で鍵を交換する場合は店の負担
- 構造的な改修は書面の承諾を必要とし、無断の工事は原状回復させる
- 冷蔵庫・保管棚の使い分けと、食材の表示(誰のものか、いつのものか)のルールを決める
終わり方:予告期間と、大家から退去を求められた場合
事務所が見た間借り契約は期間の定めがなく、双方とも2か月前の予告で解約できる形でした。そのうえで、大家から退去を求められた場合を、原因によって分けて定めていました。
| 原因 | 扱い |
|---|---|
| 間借り側の違法行為・重大な違反 | 退去を受け入れる |
| 店の家賃滞納など、店側の事情 | 間借り側の事業の継続に配慮して協議する |
店が家賃を滞納して賃貸借契約を解除されると、間借りしている側は、店との契約がどうなっていても、物件を使い続けることは難しくなります。店としては、自分の物件の契約期間と更新の見込みを契約の段階で開示し、物件を出ることになった場合の予告期間を定めておくと、後で責任を問われにくくなります。詳しくは間借り契約書・転貸の承諾のページで解説しています。
事務所の実例:飲食の間借り契約で、実際に確認・指摘したこと
| 場面 | 初版の書き方 | 修正版 | 直した理由 |
|---|---|---|---|
| 営業許可 | 許可・届出に関する条項がない | 間借り側が自分の名義で許可を取り、写しを提出する。取れなければ解除できる | 食品を扱うのに、許可の主体が決まっていなかったため |
| 大家への開示 | 利用者の同意なく契約内容を大家に開示してはならない | 大家の承諾を前提に組み直す | 転貸禁止に触れることを前提にした条項で、発覚時に双方が営業の場所を失うため |
| 保険と免責 | 店が保険に入り保険料を請求する一方、店は一切責任を負わない | 被保険者と補償の範囲を明記し、免責は故意・重大な過失を除く形に | 保険と免責の関係があいまいで、事故時に誰が負うか分からないため |
| 契約の名目 | 業務提携契約 | 名目にかかわらず、場所の使用の実態に合わせて条項を整理 | 名目だけで賃貸借や転貸に当たるかどうかは決まらないため |
よくあるご質問
間借り営業は、店の営業許可で営業できますか?
できません。営業許可は営業を営む者が受けるものなので、間借りする側が自分の名義で許可を取るのが原則です(食品衛生法55条)。同じ厨房を時間帯で分けて使う場合の扱いは自治体によって異なるため、契約前に保健所に相談します。
間借りカフェに店を貸すときに、用意しておく書類は何ですか?
間借り契約書(施設利用契約書)のほか、大家・管理会社の承諾書、設備の使い方と原状回復の範囲を記録した書面(写真を含む)を用意します。間借り側には、自分の名義の営業許可の写しと、保険の加入を証明する書類を提出してもらいます。
間借りさせることを大家に黙っていても大丈夫ですか?
賃貸借契約で第三者の使用が禁止されていれば、無断で間借りさせることは解除の原因になります(民法612条)。発覚すると店も間借り側も営業の場所を失うため、書面で承諾を取ってから始めます。
間借りの光熱費は、どう分ければよいですか?
店の過去の平均額の一定割合を負担し、超えた月は超えた分を精算する方法がよく使われます。ゴミ処理費や消耗品の補充も、別建てで決めておきます。
間借り営業で食中毒が起きたら、誰が責任を負いますか?
原則として、その料理を提供した間借り側の営業者が責任を負います。保険を店がまとめて手配する場合は、被保険者が誰か、間借り側の営業中の事故が補償されるかを契約で確認しておきます。
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