このページの要点
- 国の指針は契約書への排除条項の導入を求め、東京都の条例は契約時の確認と解除の特約を努力義務としている。条例は地域ごとに違うため、所在地の条例を確認する。
- 表明保証の対象者は、利用の形(個人事業主、法人、時間貸し、面貸し)に合わせて絞る。名義貸しは、実際の利用者を把握できる条項とセットで防ぐ。
- 大家との契約に同種の条項があるとき、利用契約の解除事由は、それと同じかそれ以上の広さにする。疑いの段階は確認と一時停止、確定後に解除する。
- 解除は撤回できない。免責は全部免除でなく、故意又は重大な過失を除く上限の形にし、保証金は差引き後の残額を返す計算式で書く。
反社会的勢力の排除条項は、法律で入れることが義務づけられているのですか?
結論から言うと、場所を貸す事業者すべてに、罰則つきで条項の記載そのものを義務づける定めは、確認できた範囲ではありません。ただし、国の指針と各地の条例が、契約書に排除の仕組みを置くことを求めており、条項がない契約書は、いざというときに解除の根拠が弱くなります。
国の指針は、2007年(平成19年)6月に、政府の犯罪対策閣僚会議の幹事会で申し合わされた「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」です。基本原則として、組織としての対応、外部の専門機関との連携、取引を含めた一切の関係遮断、有事における民事と刑事の両面からの法的対応、裏取引や資金提供の禁止が掲げられています。契約書や取引約款の面では、反社会的勢力が取引の相手方となることを拒絶する旨と、取引の開始後に相手方が反社会的勢力だと判明した場合や、相手方が不当な要求を行った場合に、契約を解除して取引から排除できる旨を盛り込むことが有効だとされています。ここでいう「反社会的勢力」は、法令に定義がある言葉ではありません。指針の注記は、暴力団、暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団といった属性に着目するだけでなく、暴力的な要求行為や法的な責任を超えた不当な要求といった行為にも着目することが重要だと述べています。条項の中で言葉の範囲を自分で定める必要があるのは、このためです。
条例は、2011年(平成23年)10月までに、すべての都道府県で施行されました。内容は地域ごとに異なります。東京都暴力団排除条例を例にすると、次のような構成になっています。他の地域では条文の番号も内容も違うことがあるため、施設の所在地の条例は原文で確かめてください。
| 根拠 | 内容の要約 | 性質 | 場所貸しでの意味 |
|---|---|---|---|
| 国の指針(2007年6月) | 取引を含む関係遮断。契約書への排除条項の導入。判明後は速やかに関係を解消する | 取組の指針(法令ではない) | 条項を置く考え方の根拠。外部機関との連携や、担当者任せにしない体制も求めている |
| 東京都条例18条1項 | 事業に係る契約が暴力団の活動を助長し、又は運営に資する疑いがあると認める場合に、相手方や代理人などが暴力団関係者でないかを確認する | 努力義務 | 申込審査の位置づけ。スーパーでの日用品の販売のような日常の取引まで一律に求めるものではないと、警視庁のQ&Aは説明している |
| 同条2項 | 書面で契約するときは、暴力団関係者と判明したときに催告なしで解除できる旨などの特約を定める | 努力義務 | 解除条項を置く根拠 |
| 同19条 | 不動産の譲渡や貸付けのとき、暴力団事務所に使わせないことを確認し、使わせない旨と、使われたときに催告なしで解除できる旨の特約を定める | 努力義務 | 場所を貸す契約が対象に当たるかは、条例の文言と契約の実態で確かめる |
| 同24条3項 | 暴力団の活動を助長し、又は運営に資することを知りながら、利益供与をすることを禁じる(法令上の義務や正当な理由がある場合を除く) | 禁止 | 不当な要求に応じて金銭などを渡す対応は、条例上も問題になりうる |
| 民法541条・542条 | 催告をして解除するのが原則。催告なしで解除できるのは、履行不能など542条1項に列挙された場合 | 解除の一般ルール | 反社会的勢力への該当は、そのままでは列挙に当てはまるとは限らない。特約で補う |
最後の行が、条項を置く実質的な理由です。契約の相手が暴力団関係者だと分かったとしても、民法の定める解除の要件(541条の催告、542条1項の列挙)にそのまま当てはまるとは限りません。「判明したら催告なしで解除できる」と契約書に書いておくことで、はじめて迷わず動けます。解除の意思表示は撤回できない(民法540条2項)ため、解除できる場面は条項で具体的に決めておきます。
条項には何を書くのか:定義・表明保証・禁止行為・解除の四層
反社会的勢力の排除条項は、おおむね四つの層でできています。第一に、誰を排除の対象とするかの定義。第二に、「現在も将来も該当しない」という表明と確約(これを表明保証と呼びます)。第三に、暴力的な要求などの禁止行為。第四に、違反したときの解除と、その後の扱いです。次の条文例は、利用者が個人事業主や法人である場合を想定して、新しく書き起こしたものです。
条文例:反社会的勢力の排除(定義・表明保証・禁止行為)
1 利用者は、申込みの時点及び利用期間中、自己(法人の場合は、その役員及び経営を実質的に支配する者を含む。)が、次の各号のいずれにも該当しないことを表明し、将来にわたって該当しないことを確約する。
(1)暴力団、暴力団員、暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者、暴力団準構成員
(2)暴力団関係企業、総会屋、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団その他これらに準ずる者
(3)前二号に掲げる者が経営を支配し、又は経営に実質的に関与していると認められる者
(4)前各号に掲げる者に対し、資金を提供し、又は便宜を供与するなど、その運営に協力していると認められる者
2 利用者は、自ら又は第三者を利用して、次の各号の行為をしてはならない。
(1)暴力的な要求行為 (2)法的な責任を超えた不当な要求行為 (3)脅迫的な言動をし、又は暴力を用いる行為 (4)偽計又は威力を用いて当社の信用を毀損し、又は業務を妨害する行為
3 利用者は、本施設を、前項各号に該当する者その他の反社会的勢力の事務所、連絡拠点その他その活動の用に供してはならず、これらの者に本施設を利用させてはならない。
4 利用者は、利用者の使用人、施術の補助者その他本施設を実際に利用する者が前三項に違反することのないよう、必要な措置を講じなければならない。
(書き方の例)「5年を経過しない者」の類型は、金融機関の取引約定書の参考例などで使われているものです。何を含めるかは、利用者の層に合わせて決めます。第3項は、暴力団事務所として使わせないという、場所貸しに固有の確約です。
「該当しない」と約束するのは誰か:利用の形で変える
表明保証の対象に「役員、従業員、株主、関連会社その他の関係者」を並べる書式がよく見られます。法人の取引ではそれで足りますが、一人で施術する個人事業主の利用者に、そのまま当てはめると、対象が実態に合わず、かえって運用しにくくなります。場所貸しでは、利用の形によって、誰を対象にするか、どう確認するかが違います。
| 利用の形 | 約束させる範囲 | 確認・表明の取り方 | 解除と清算の注意点 |
|---|---|---|---|
| 月額で専用席を使う会員(契約書型) | 利用者本人(法人なら役員・実質的支配者)。施術の補助者や同席者 | 契約書への署名に加え、申込時に屋号・氏名・連絡先・本人確認書類で確認。更新時は変更の届出義務で足す | 保証金・前払い料金がある。清算の条文を先に決める |
| 時間貸し・会員制の多数利用者(規約型) | 予約者本人と、その同伴者・施術を受ける人の入室の仕方 | 予約画面で規約への同意と表明のチェックを必須にする。初回利用前に本人確認 | 1回ごとの料金が小さく、前払いの返金の扱いが論点。定型約款の変更の手続も関係する |
| 既存の店の席を借りる面貸し・間借り | 借りる側本人と、その顧客・仕入先が店に出入りする場合の扱い | 店主が相手を知る場面が多い。契約書で表明し、屋号・取引先の変更を届け出させる | 転貸の承諾と一体で見る。大家の契約との連動が最も効く |
| 法人の利用者・複数施術者の入居 | 法人の役員、実質的支配者、施術者として入る個人 | 法人の登記事項と、入居する施術者の名簿を提出させる | 施術者の入れ替わりのたびに確認が必要。名簿の更新を義務にする |
時間貸しでは、予約サイトのアカウントしか分からない相手に貸す場面があります。名義を借りた別人が実際に使うことを防ぐには、「予約者以外の者に利用させてはならない」「実際に入室する者の氏名を求められたら申告する」という条項が必要です。時間貸しの規約の全体像はミラーレンタル・レンタルサロン・時間貸しの利用規約で整理しています。
大家との賃貸借契約にも同じ条項があるとき、利用者との契約はどう連動させるのですか?
物件を借りて利用者に使わせる運営者は、大家から見れば借主であり、利用者は借主が使わせている相手です。大家との契約に反社会的勢力の排除条項があると、利用者が該当した場合に、運営者自身が大家から解除される側に回るおそれがあります。そのため、利用者との契約の解除条件は、大家との契約の解除条件より狭くならないようにしておきます。
条項が連なる関係と、食い違いの出やすい場所
大家との契約の条項は、国土交通省が公表している賃貸住宅標準契約書にも、当事者が反社会的勢力でないことの確約が盛り込まれています(2012年2月の改訂で追加)。事業用の賃貸借でも、同様の条項や、反社会的勢力に転貸してはならないという定めが置かれている例があります。物件を借りて運営している以上、「利用者を入れるときに自分が確認しなければならない」という義務の入口になります。
連動させるときの要点は、次の三つです。
利用契約と大家との契約をそろえる手順
- 大家との契約の該当条項を読み出す反社会的勢力の定義、表明の対象者、転貸・使用させる相手に関する禁止、解除の条件(催告の要否、通知の方法)、大家が情報の提供を求める権利の有無を書き出します。
- 利用契約の解除事由を、同じかそれ以上の広さにする大家の契約で解除される事由は、利用契約でも催告なしで解除できるようにしておきます。逆に、利用契約だけが重いと、疑いの段階で不要な争いを生みます。
- 大家に利用者の情報を伝える根拠を、利用契約に置く大家から利用者の氏名などの提供を求められる場面に備え、必要な範囲で提供することへの同意を取っておきます。個人データの第三者提供は、原則として本人の同意が要ります(個人情報保護法27条1項)。
大家の承諾の取り方と、転貸の考え方は間借り契約書・転貸の承諾・サブリースのページに整理しています。民法612条は、賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借物を転貸し、第三者に使わせたときは、賃貸人が契約を解除できるとしています(同条2項)。反社会的勢力に使わせることが、承諾の範囲を超える使用になる、という整理も成り立つため、承諾書の中でも「反社会的勢力に使わせない」ことを確認しておくと安全です。
大家との契約にこの種の条項がないときでも、運営者が利用者に対して持つ条項は必要です。シェアサロン利用契約書・利用規約の作り方でも、この条項が入っていない書式が目立つ点を指摘しています。
申込審査では何をどこまで確認し、断るときに何と言うのですか?
入口の確認は、三段で考えると整理できます。申込みの時点で表明させる段、本人や屋号を確かめる段、疑いが出たときに外部の情報を使う段です。
入口の確認の三段
- 申込みの時点で、表明させる契約書型は署名の前に、規約型は予約画面で同意と表明のチェックを必須にします。東京都の警視庁のQ&Aも、契約の際に、暴力団員やその関係者でないことを表明する書面を取ることを勧めています。
- 本人・屋号・連絡先を確かめる氏名、屋号、住所、連絡先を、運転免許証などの確認書類や、折り返しの連絡で裏づけます。個人事業主か法人かによって、登記事項の提出を求めるかが変わります。
- 疑いが出たときだけ、外部の情報を使う広く情報を集める運用にせず、具体的な疑いが出たときに限って、警察や暴力追放運動推進センターなどの外部機関へ照会します。
警察への照会の方法は、地域で運用が異なることがあります。東京都の警視庁のQ&Aでは、契約の相手方の氏名、生年月日、住所(可能なら電話番号)、排除条項のある契約書、疑いを持った理由を準備することが案内されています。警察が相手方を暴力団関係者と回答した場合、断る理由を相手に説明する義務はないとも案内されています。照会先は、施設の所在地の警察署や暴力追放運動推進センターで確かめます。
審査で集める情報の扱い
本人確認書類の写しや、屋号、役員名を集めることは、個人情報の取得に当たります。次の点を、規約や申込画面に書いておきます。
- 利用目的を特定して示す。たとえば「本人確認、反社会的勢力でないことの確認、違法な利用の防止及び発覚時の対応」。契約書や申込書に書かれた本人の情報を直接取得する場合は、あらかじめ利用目的を明示します(個人情報保護法17条、21条2項)。
- 利用目的の範囲を超えて使わない(同法18条)。審査のために集めた書類を、営業の勧誘に流用しない。
- 犯罪の経歴にあたる情報は、要配慮個人情報です(同法2条3項)。取得するには、原則としてあらかじめ本人の同意が要ります(同法20条2項)。審査のために、自分から前科や逮捕歴を聞き出す運用は、避けるのが基本です。
- 集めた書類の保管場所と閲覧者を限る(安全管理措置、同法23条)。不要になった写しは廃棄する。
断る場面では、理由の伝え方が問題になります。実際には疑いにとどまる段階で「反社会的勢力だから」と伝えると、後で事実と違ったときに、名誉や信用を傷つけたと争われるおそれがあります。申込みの承諾は運営者が決めるものとし、承諾しない場合に、理由を開示しないことがある旨を規約に書いておくと、断る側の負担が軽くなります。なお、外見や国籍、入れ墨の有無だけで、反社会的勢力に当たると決めつけることは避けます。条項が見ているのは、属性として定義された類型と、不当な要求などの行為であり、見た目の印象ではありません。
疑いが出たときと、該当が分かったときに、運営者は何をするのですか?
疑いの段階と、確定した後の段階を分けます。疑いだけで解除すると、後で事実と違ったときに、運営者が責任を問われます。解除は撤回できない(民法540条2項)ので、確認の段階を一つ挟むのが安全です。実際に違法な営業が見つかったときの退去と私物の扱い、実力行使を避ける理由はレンタルサロン・個室の時間貸しで違法営業を防ぐ規約に整理しています。ここでは、反社会的勢力に特有の点に絞ります。
条文例:確認・利用停止・解除
1 当社は、利用者が前条に違反するおそれがあると認める合理的な理由があるときは、利用者に対し、必要な範囲で資料の提出又は説明を求めることができる。利用者は、正当な理由なくこれを拒んではならない。
2 当社は、前項の確認が終わるまでの間、予約の受付及び本施設の利用を一時停止することができる。この間の利用料金は、〇〇とする。
3 当社は、利用者が前条に違反したとき(表明が事実に反していたときを含む。)は、催告をすることなく、直ちに本契約の全部又は一部を解除することができる。
4 当社は、前項の解除について、判断の根拠とした関係機関からの情報の内容を開示する義務を負わない。ただし、当社は、解除の事実及び根拠となる条項を、書面又は電子メールにより利用者に通知する。
5 第3項により解除した場合、利用者は、当社が指定する期限までに退去し、貸与物を返還しなければならない。当社は、既に受領した利用料金のうち解除日以後の期間に対応する部分を返還しない。保証金は、利用者の債務及び当社に生じた損害の額を控除した残額を返還する。
6 前各項の措置により利用者に損害が生じた場合における当社の損害賠償責任は、当社、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、利用者が直近の〇か月間に当社に支払った利用料金の総額を上限とする。
(書き方の例)第6項は、利用者が消費者になりうる施設を想定した形です。「一切責任を負わない」と全部を免除する書き方は、消費者との契約では無効とされるおそれがあります(消費者契約法8条1項)。上限を設けるなら、故意又は重大な過失による場合を除く旨を、上限を定める一文の中に書きます(同条3項)。
第2項の一時停止は疑いの段階で使い、停止の上限日数は運営の実態に合わせて決めます。第4項は、警察などから得た情報を理由に解除する場面を想定しています。情報の出どころを示せない場合があっても、解除の事実と条項は書面で伝えます。
解除した後のお金の片づけ方:保証金の設例
解除したときに、前払いの利用料金をどうするか、保証金をどう精算するかは、条項に書いていないと争いになりやすい部分です。利用料金の返還の有無は、解除の原因が利用者にあることを踏まえて決めます。保証金は、債務や損害を差し引いて返す型にすると、納得を得やすくなります。なお、料金が前払いで、日割りでの返還をしない設計にする場合、利用者が消費者のときは、解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項のうち、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分が無効になりえます(消費者契約法9条1項1号)。契約を続けたまま違反に違約金を科す形は、この条文の対象外で、民法420条や消費者契約法10条で検討することになります。違約金は、賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。
設例:月額利用料50,000円(前払い)、保証金100,000円の利用者を、月の20日に解除した場合
前払いの月額利用料を日割りで返す設計にする場合の目安は、50,000円×(30日−20日)÷30日=16,666円(円未満切捨ての例)です。返さない設計にする場合は、その旨を条項に書き、解除の原因が利用者にあることと、後続予約への影響が大きいことを理由として説明できるようにしておきます。金額は設例です。
解除による原状回復や損害賠償の請求は、民法545条に定めがあり、解除権の行使は損害賠償の請求を妨げません(同条4項)。損害として請求できる範囲は、解除と因果関係のある損害にとどまります。「解除により生じた一切の損害(間接損害、逸失利益を含む)」と広げるより、後続予約への返金、特別な清掃、調査にかかった費用など、具体的に例示するほうが、請求の根拠として強くなります。
不当な要求を受けたときの考え方
利用者や来訪者から、金銭の支払いや便宜の提供を求められたときの原則は、国の指針が示しています。不当な要求は拒絶し、担当者や一部の部署だけに任せずに、組織として対応し、民事と刑事の両面から法的な対応をとります。一方で、不当な要求に応じて金銭を渡すことは、相手を勢いづけ、被害の拡大を招くとして、絶対に行わないとされています。東京都条例24条3項も、暴力団の活動を助長し、又は運営に資することとなることの情を知っての利益供与を、正当な理由がある場合を除いて禁止しています。現場の運用としては、要求の日時、言われた内容、同席者を記録し、警察や暴力追放運動推進センターへ早めに伝える体制を決めておきます。利用者との関係が悪化したときの全般的な対処はシェアサロン・間借りの利用者トラブル対処で整理しています。
よくある失敗と、直した書き方
実務で見かける書式には、条項はあるのに運用で使いにくいもの、強く書きすぎて効力を争われやすいものがあります。次の表は、そうした書き方と直し方の例です。
書き方の例(一般的な例):反社会的勢力の排除条項
| 場面 | よくある書き方 | 整えた書き方 | 整える理由 |
|---|---|---|---|
| 条項の有無 | 反社会的勢力の排除と合意管轄の条項が、そもそも入っていない | 定義、表明保証、禁止行為、解除、存続を一つの条にまとめて置く | 解除の根拠がなく、判明しても民法541条の催告の手順を踏むことになるため |
| 解除事由の範囲 | 「反社会的勢力と社会的に非難されるべき関係を有するとき」「当社が不適切と判断したとき」まで無催告で解除できるとする | 排除条項の解除事由は、該当・表明の虚偽・禁止行為・名義貸し・資金提供など、具体的な事実に絞る。一般的な不適切行為は別の条で催告による解除とする | 排除条項が何でも解除できる条項に変わり、濫用だと争われやすいため(民法1条2項、548条の2第2項) |
| 判断者と理由 | 当社が合理的に判断したときは、理由を開示せず、一切の責任を負わないとする | 判断の根拠は合理的な情報に基づくものとし、理由は開示義務を負わない。賠償責任は、故意又は重大な過失の場合を除き上限を定める形にする | 誤認だったときの責任まで全部を免除すると、消費者との契約では無効とされるおそれがあるため(消費者契約法8条1項) |
| 疑いの段階 | 「疑われる場合」「関与または交流があると認められる場合」に直ちに解除する | 疑いの段階は確認と一時停止。確認に応じないこと、資料が虚偽だったことを解除事由に加える | 解除は撤回できず(民法540条2項)、誤認の影響が大きいため |
| 賠償と違約金 | 解除された側は一切請求できず、違反した側は「一切の損害」を負う。固定額の違約金を定めたうえで、実損も請求できるとする | 請求できる損害を例示し、違約金は賠償額の予定か、実損とは別かを明確にする。消費者が相手のときは平均的な損害の額を超えない | 二重請求になるおそれと、消費者契約法9条1項1号、10条、民法420条の検討が必要なため |
| 返金の書き方 | 既払い料金は「相当額」を返還する、または没収する、とだけ書く | 返す部分と返さない部分を、金額の計算式で書く。保証金は差引き後の残額を返す | 「相当額」では額が決まらず、没収の根拠が問われるため |
| 他条との引用 | 解除の条が「第8条(反社会的勢力の排除)」と番号で引用したまま、条を追加して番号がずれた | 条名で引用するか、相対的な書き方を避け、条を足したときに全体の引用を再点検する | 番号がずれると、解除条項が別の条を引用して働かなくなるため |
規約型の施設で、あとから排除条項を足す場合は、定型約款の変更の手続が必要です。民法548条の4は、変更が相手方の一般の利益に適合するときなどに、個別の合意なしで変更できるとしていますが、その場合は効力発生時期を定め、変更する旨と変更後の内容をインターネットなどで周知しなければなりません(同条2項)。新規申込みの画面での同意に加えて、既存の利用者への周知と、更新時の再同意の機会を設けると、運用が安定します。
ヒヤリングで確認すること
条項を作る前に、運営の実態を聞いておかないと、書いた条項が使えません。次の問いは、条項の中身と運用を決めるうえで、順番に確認するものです。
反社会的勢力の排除条項を設計する前の問い
どんな利用者が入るのか(個人事業主、法人、施術者を連れてくる店舗など)
- 聞く理由
- 表明保証の対象者と、確認の方法が、利用の形で変わるためです。
- 気になる答えの例
- 「基本は個人だが、法人も、アシスタントも入る」と、形が混在している
申込みの経路はどこか(対面、フォーム、予約サイトのアカウント)
- 聞く理由
- 表明をいつ、どの方法で取るか、本人確認ができるかが決まるためです。
- 気になる答えの例
- 予約サイトのアカウント名しか分からず、実際に入室する人を把握できない
大家との賃貸借契約に、排除条項と転貸・使用の制限はあるか。解除の条件は何か
- 聞く理由
- 利用契約の解除事由を、大家の契約より狭くしないためです。
- 気になる答えの例
- 契約書をまだ読み返していない、写しが手元にない
利用者から預かるお金は何か(前払い、保証金、月額、時間単位)。解除時にどう扱うか
- 聞く理由
- 清算の条項を、お金の種類ごとに分けて書くためです。
- 気になる答えの例
- 「解約時は協議」とだけ決めている
規約型か契約書型か。すでに利用している人がいるか
- 聞く理由
- 新しい条項を足すとき、定型約款の変更の手続か、個別の合意かが分かれるためです。
- 気になる答えの例
- 既存の利用者に、周知の方法がない
疑いが出たとき、誰が判断し、誰が連絡し、何を記録するか
- 聞く理由
- 担当者任せにせず、組織として対応する体制が、国の指針の中心だからです。
- 気になる答えの例
- 現場のスタッフ一人の判断で、利用を断ったり、解除を伝えたりしている
料金や精算の細部は、シェアサロンの料金プランと売上歩合の精算とそろえて決めます。保証金の返還や、カード売上の精算と、排除条項による解除が重なると、差引きの順序が問題になるためです。
起きがちなことと、備え
反社会的勢力の排除条項をめぐる、起きがちなこと
大家の契約と、利用契約の解除の条件が食い違っていた
- 起きがちなこと
- 大家との契約では催告なしで解除される事由でも、利用契約では催告が要り、運営者が先に解除される立場に立った
- 先に確認すること
- 利用契約の解除事由を、大家の契約と同じかそれ以上の広さにする
疑いの段階で直ちに解除した
- 起きがちなこと
- 後で人違いだったと分かり、利用者から損害の賠償を求められた。解除は撤回できなかった
- 先に確認すること
- 疑いの段階は確認と一時停止にとどめ、確定の根拠を整える
免責を強く書きすぎた
- 起きがちなこと
- 「一切責任を負わない」と書いたが、利用者が消費者のとき、全部免責は効力を認められなかった
- 先に確認すること
- 上限の形にし、故意又は重大な過失の場合を除く旨を一文の中に書く
不当な要求を、現場の担当者が一人で受けた
- 起きがちなこと
- 要求を断れず、記録もなく、対応が遅れた
- 先に確認すること
- 記録、組織としての対応、外部機関への相談の順を決めておく
定義と表明保証で入口をそろえ、大家の契約と連動させ、疑いと確定を分けて動き、解除後のお金は計算式で片づける。この四つがそろっていれば、条項は書面の飾りではなく、実際に使える道具になります。利用契約書・利用規約の全体の設計はシェアサロン利用契約書・利用規約の作り方、借りる側の確認事項はシェアサロンを借りる前のチェックポイントにもまとめています。
よくあるご質問
反社会的勢力の排除条項は、法律で入れることが義務づけられていますか?
場所貸しの事業者すべてに、罰則つきで条項の記載そのものを義務づける定めは、確認できた範囲ではありません。国の指針は契約書への導入を求め、東京都の条例では契約時の確認と解除の特約を事業者の努力義務としています。条例は地域ごとに違うため、施設の所在地の条例を確認します。
暴力団を辞めた人も、条項で排除できますか?
金融機関の取引約定書の参考例などには、「暴力団員でなくなった時から5年を経過しない者」を類型に含める書き方があります。条項に入れておけば、辞めて間もない人も対象にできます。何を含めるかは、利用者の層と運用の実態に合わせて決めます。
疑いがあるだけで、利用契約を解除してよいですか?
疑いの段階では、確認の依頼と一時停止にとどめるのが安全です。解除の意思表示は撤回できない(民法540条2項)ため、人違いだったときの影響が大きくなります。確認に応じないことや、申込み時の表明が事実に反していたことを、別の解除事由として書いておくと、確証がなくても動けます。
警察に、利用者が暴力団関係者かどうかを問い合わせられますか?
東京都の警視庁のQ&Aでは、契約の相手方が暴力団関係者かを、最寄りの警察署などに相談でき、氏名、生年月日、住所と、疑いを持った理由などを準備するよう案内されています。運用は地域で違うことがあるため、施設の所在地の警察署や暴力追放運動推進センターで確かめます。
大家との契約に反社会的勢力の排除条項があるとき、利用者との契約で気をつけることは?
利用者が該当した場合に、運営者が大家から解除されるおそれがあります。利用契約の解除事由を、大家の契約と同じかそれ以上の広さにし、大家から利用者の情報の提供を求められる場面に備えて、必要な範囲での提供への同意を取っておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の施設に必要な対応は、物件の契約内容、利用者の業種、料金の受け取り方によって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 法務省 / 公正取引委員会 フリーランス法