間借り契約書・転貸の承諾・サブリース

契約書の題名が何であっても、実際の使い方が賃貸借なら賃貸借として扱われます。間借りを契約にする二つの道を整理します。

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承諾を得た転貸でも、中間の店の家賃滞納による解除は、間借りしている側に対抗できます。原契約の終わり方まで見据えて設計します。

このページの要点

  • 間借りの契約は、題名ではなく実際の使い方で、賃貸借・転貸借かどうかが判断される。
  • 道は二つ。占有させない利用許諾として組むか、大家の承諾を得た転貸借として正面から組むか。
  • 承諾を得た転貸でも、店の家賃滞納による解除は間借り側に対抗できるとされる。元の契約が期間満了などで終わるときは、転借人への通知が必要(借地借家法34条)。
  • 期間満了で確実に終えるなら定期建物賃貸借(借地借家法38条)。契約書とは別の説明書面の交付が必要。
間借りの契約書の題名は、「業務提携契約」「施設利用契約」「転貸借契約」とさまざまです。しかし、どの題名を付けても、実際の使い方が賃貸借なら賃貸借として扱われます。このページでは、間借りを契約書にするときの二つの道(占有させない利用許諾と、承諾を得た転貸借)と、物件の元の契約が終わったときに何が起きるかを、事務所が作成したマスターリース・サブリースの契約書をもとに解説します。

二つの道:利用許諾か、転貸借か

間借りを契約にする二つの道
項目占有させない利用許諾承諾を得た転貸借
考え方場所の一時的・非独占的な利用を許すだけで、賃貸借ではない物件の貸主の承諾を得て、正面から又貸しする
大家との関係転貸に当たらないよう運用を合わせる必要がある貸主の承諾書、または原契約での包括的な承諾が前提
借地借家法適用されない設計だが、実態次第で適用される余地がある適用される(一時使用のためであることが明らかな場合を除く。借地借家法40条)。期間満了で確実に終わらせたいなら定期建物賃貸借にする
向いている場面時間帯で区切る間借り、短期・お試しの出店店全体を長く借りる、設備投資をする間借り
主な書類施設利用契約書(業務提携契約書)転貸借契約書、貸主の承諾書、定期建物賃貸借の説明書面

時間帯で区切る間借りや、厨房の一角だけを使う間借りなら、利用許諾として組める余地があります。反対に、店全体を長期間借りる、自分で内装に投資する、自分の鍵で自由に出入りする、という形なら、転貸借として正面から組むほうが、後で争いになりにくくなります。利用許諾として組む場合の条項の作り方は、面貸し契約書のページで解説している「占有を与えない設計」が参考になります。

転貸を正面から:マスターリースでの包括承諾

事務所が作成した飲食店舗のマスターリース(定期建物賃貸借)では、物件の所有者が、借主(中間の事業者)が第三者に転貸することを、あらかじめ包括的に承諾していました。そのうえで、所有者を守るために次のような定めを置いています。

  • 借主が転借人を選び、転借人の行為について自分の行為と同じ責任を負う
  • 転貸借契約には、原契約と同等以上の義務、原契約が終われば転貸借も終わること、明け渡さない場合の違約金・損害賠償を必ず入れる
  • 転貸借の内容が原契約と抵触する場合は、原契約が優先する
  • 所有者と転借人の間には直接の契約関係がないことを、転借人に明示する
  • 原契約が終わったときは、借主の責任と費用で転借人を退去させる。転借人が退去しなくても所有者は責任を負わず、借主が賠償する
  • 転借人にも同等以上の保険と、食品衛生・消防の法令の遵守を課す

同じ契約では、消防法・食品衛生法に基づく設備の設置・届出・点検は借主の責任で行い、転借人にも守らせること、グリストラップの設置と定期清掃、排気設備と臭気漏れの防止、害虫・ねずみの防除まで列挙していました。飲食店の転貸では、建物を傷めるのは設備の管理不足であることが多いからです。飲食の間借りで必要な営業許可や、時間帯で区切る間借りの組み方は、間借り営業を受け入れる店の準備のページで解説しています。

元の契約が終わったら、間借り側はどうなるか

民法613条3項は、賃借人が適法に転貸した場合、賃貸人は、賃借人との賃貸借を合意で解除したことを転借人に対抗できない、と定めています。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を持っていたときは、この限りではありません。

元の契約の終わり方と、間借り側への影響
元の契約の終わり方間借り側(転借人)への影響
貸主と借主の合意解除承諾を得た転貸なら、合意解除を理由に転借人を追い出すことはできない(民法613条3項本文)
借主の家賃滞納などによる解除転借人に対抗できるとされる(転借権は元の賃借権を前提とするため。合意解除の形をとっても、その当時に債務不履行による解除権があれば対抗できる=同項ただし書)。判例上、貸主が転借人に返還を求めた時点で、転貸借も終了すると扱われる
期間満了普通借家でも定期建物賃貸借でも、貸主が転借人に終了を通知しなければ転借人には対抗できず、転貸借は通知の日から6か月が過ぎて終了する(借地借家法34条)。転借人に不利な特約は無効(同法37条)
無断転貸だった場合そもそも転借人は貸主に使用の権利を主張できない

つまり、間借りさせる店が家賃を滞納すれば、落ち度のない間借り側まで場所を失うことになります。そのため、設備に投資する転借人からは、この点の手当てを求められることがあります。事務所が作成したサブリース側の契約書では、交渉の結果、初版の「原契約が終われば転貸借も当然終了し、損害は貸主(中間の事業者)が負わない」を、修正版で「原契約が終わっても、中間の事業者は所有者に貸主の地位を承継させ、契約は終了しない。手続に双方協力する」に改めました。この条項に応じる場合、店は所有者に貸主の地位を承継させる手続をする義務を負い、所有者が応じなければ責任を問われるおそれがあります。マスターリースの側で、所有者が承継に応じる旨をあらかじめ定めておくことが前提になります。

条文例:原契約が終了した場合の地位の承継

原契約が期間の途中で終了した場合であっても、本契約は終了しないものとし、甲(転貸人)は、本物件の所有者に対し、本契約における貸主の地位を承継させるよう必要な手続を行い、乙(転借人)はこれに協力する。

乙は、甲の承諾の有無にかかわらず、本契約に基づく賃借権を譲渡し、担保に供し、又は本物件を転貸し、その他名目のいかんを問わず第三者に本物件を使用収益させてはならない。

二つ目の段落は、修正版で新設した「再転貸の禁止」です。間借りのさらに下の又貸しを防ぎ、所有者との関係を守るための条項です。

期間で確実に終わらせたいなら定期建物賃貸借

転貸借として組むと借地借家法が適用され、期間が満了しても、貸す側に正当な事由がなければ更新を拒めないのが原則です。期間満了で確実に終わらせたいなら、定期建物賃貸借(借地借家法38条)として契約します。

定期建物賃貸借の要件
要件内容
書面による契約公正証書などの書面で契約する(38条1項)。内容を記録した電磁的記録による契約は書面による契約とみなされる(同条2項)
事前の説明契約の前に、更新がなく期間満了で終了することを記載した書面を交付して説明する(同条3項)。承諾を得て電磁的方法で提供することもできる(同条4項)
説明がなかった場合更新がないこととする定めは無効になる(同条5項)
終了の通知期間が1年以上なら、満了の1年前から6か月前までの間に終了の通知をしなければ、終了を借主に対抗できない(同条6項)。期間を過ぎてから通知した場合は、通知の日から6か月後に対抗できる(同項ただし書)

判例上、事前の説明書面は、契約書とは別の独立した書面であることが必要とされています(最高裁平成24年9月13日判決)。契約書の中に説明の文言を入れただけでは足りません。

中途解約の違約金

事務所が作成した飲食店舗のマスターリース・サブリースでは、初版で「原則として中途解約できない。やむを得ない場合は6か月前の予告で解約できるが、残存期間の賃料全額を違約金として一括で支払う(実損は別)」としていました。修正版では交渉の結果、「双方とも6か月前の書面予告で中途解約でき、違約金その他の金銭は発生しない」に改めています。

残存期間の賃料全額に加えて実損まで請求できる、という設計は、違約金が損害賠償額の予定と推定される民法420条3項との関係や、公序良俗(同法90条)の観点から、過大だと争われるおそれがあります。違約金を置くなら、次の借り手が見つかるまでの期間など、実際の損害の見込みに沿った金額にしておきます。

居抜き・残置物・看板

間借りやサブリースでは、前の店の厨房機器や看板がそのまま残っていることがよくあります。誰の物で、誰が撤去するのかを決めておかないと、明渡しのときに必ず揉めます。

  • 残置物を写真と一覧で特定し、契約期間中だけ利用する権利を与える(対価は賃料に含む)
  • 明渡しのときは、別段の意思表示がない限り、借主が撤去する
  • 賃料が共益費を含むかどうか、賃料の発生日(引渡し日か、営業開始日か)を独立に定める
  • 原状回復の範囲を、スケルトン(内装を撤去した状態)にするのか、使用開始前の状態にするのかを決める
  • 通常の使用による損耗と経年劣化は、原状回復の対象外であることを明記する

施設の一部を使う契約では、撤去と回復を終えた後に双方で状態を確認し、原状回復確認書に署名する、という手順を定めた例もあります。運営側が立ち会い、確認書を書面または電子で残すことで、明渡し後の追加請求をめぐる争いを防げます。退去後の残置物の扱いは、利用者トラブルの対処のページでも整理しています。

事務所の実例:マスターリース・サブリースで、実際に直したこと

初版から修正版で直したこと
場面初版の書き方修正版直した理由
原契約が終わった場合転貸借も当然に終了し、使用収益の権利も消滅。損害は中間の事業者が負わない中間の事業者は所有者に貸主の地位を承継させ、契約は終了しない。手続に双方協力実際に店を営む転借人の投資を守るため
再転貸定めなし承諾の有無にかかわらず、賃借権の譲渡・担保提供・転貸、名目を問わず第三者に使用収益させることを一切禁止さらに下の又貸しを防ぎ、所有者との関係を守るため
中途解約原則不可。やむを得ない場合は6か月前予告で可能だが、残存期間の賃料全額を違約金として一括払い(実損は別)双方とも6か月前の書面予告で解約でき、違約金その他の金銭は発生しない交渉の結果。初版は過大と争われうる設計だったため
残置物(看板)扱いの定めなし写真・一覧で特定し、期間中だけ利用権を与え、明渡し時は借主が撤去。賃料は共益費を含むと明記し、賃料の起算日を独立に定めた居抜きの設備をめぐる「誰の物か・誰が撤去するか」の争いを防ぐため

よくあるご質問

間借りの契約書の題名を「業務提携契約」にすれば、転貸にはなりませんか?

なりません。転貸や賃貸借に当たるかどうかは、題名ではなく実際の使い方で判断されます。店全体を長く使う、自分の鍵で出入りするといった実態があれば、題名にかかわらず転貸と評価されるおそれがあります。

間借りさせている店が家賃を滞納して物件を出ることになったら、間借り側はどうなりますか?

承諾を得た転貸であっても、賃借人(店)の債務不履行を理由とする解除は、転借人に対抗できるとされています(判例。合意解除の形でも、その当時に債務不履行による解除権があれば同様=民法613条3項ただし書)。店としては、自分の物件の契約期間と状況を契約前に間借り側へ開示し、物件を出ることになった場合の予告期間を定めておきます。

間借りを定期建物賃貸借にするには、何が必要ですか?

書面(または電磁的記録)による契約と、契約前に「更新がなく期間満了で終了する」ことを記載した別の書面を交付して説明することが必要です(借地借家法38条)。説明をしなかった場合、更新がない旨の定めは無効になります。

中途解約の違約金に、残りの期間の賃料全額を定めてもよいですか?

定めること自体は可能ですが、実損の請求と併せて定めると、過大だとして争われるおそれがあります。実際の損害の見込みに沿った金額にしておくのが無難です。

前の店の厨房機器が残っている物件で間借りさせるときは、どうすればよいですか?

残置物の所有者を確認したうえで、写真と一覧で特定し、間借り側に期間中だけ使う権利を与えるのか、明渡しのときに誰が撤去するのかを契約で定めます。退去時の争いを防ぐための基本です。

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