このページの要点
- 時間貸しは「次の利用者」がいる契約。準備・片付けを含めた利用時間の数え方、最低利用時間、端数の切上げを規約に書く。
- キャンセル料は段階制にする。利用者が消費者なら、平均的な損害を超える部分は無効(消費者契約法9条1項1号)。
- 無断延長の違約金は、次の利用者への影響まで含めて設計する。ただし違約金の重ね取りと、実力での退去措置は避ける。
- 防犯カメラは目的と範囲を規約に書き、施術室の内部は常時撮影しない。
利用時間の数え方を、時計の針まで決める
時間貸しの利用規約で最初に決めるのは、「何時から何時までが利用時間か」です。準備と片付けを利用時間に含めるかどうかを書いていないと、延長料金をめぐって必ず揉めます。
- 準備・設営・片付け・原状回復の時間も、利用時間に含めることを明記する
- 利用の開始は「入室できるようになった時点」と「実際に入室した時点」の早いほう、終了は「原状回復を終えて退出した時点」と定める例がある
- 最低利用時間(例:1時間)を置き、それに満たない場合も最低時間分の料金とする
- 延長は30分単位で、30分未満の端数は切り上げる
- 予約は毎時00分・30分を起点に30分単位、受付は30日先まで、と受付のルールを決める(スタジオの例)
- 終了5分前には作業を終え、片付け・換気・清掃・電源オフまで済ませて時間内に退室する
事務所が修正したレンタルスペースの規約では、初版で時計の起点・終点を細かく定義し、修正版で読みやすく簡略化しました。細かく書くほど争いは減りますが、利用者に読まれなくなっては意味がありません。規約本文では原則を短く書き、細目は予約画面やハウスルールで示す、という分け方が現実的です。規約型と契約書型の選び方や、規約を変更するときの手続はシェアサロン利用契約書・利用規約のページで解説しています。
キャンセル料は段階で決める
| 施設の種類 | キャンセル料 | 特徴 |
|---|---|---|
| 法人向けの時間貸し | 前日までは無料、当日・無断は全額 | 初版の過剰な条項を削り、2文だけにした |
| 個人向けのレンタルスペース | 前日50%、当日100%。無断は当日と同じ扱い | 実際の損害がキャンセル料を超えれば、超えた分も請求できる(利用者が事業者の場合) |
| 音楽スタジオ | 7日前〜前日50%、当日100%、無断は全額+実損 | 日時・部屋・人数・目的の変更もキャンセル扱い。気象警報や大地震で施設が運営を止めたときだけ免除・返金 |
利用者が個人のお客様(消費者)である施設では、平均的な損害の額を超えるキャンセル料は、その超える部分が無効になります(消費者契約法9条1項1号)。このとき、キャンセル料と実損の請求の合計が平均的な損害を超える部分も無効になる点に注意が必要です。サロンの時間貸しの利用者は通常は事業者ですが、ヨガや撮影など個人の趣味で借りる人が混じる施設では、この規制を意識した料率にしておきます。また、施設の都合や不可抗力で提供を中止したときはキャンセル料を取らない、と明記しておくと、規約全体の信頼性が上がります。
無断延長と「次の利用者」への影響
事務所が修正したレンタルスペースの規約では、初版で「無断延長は30分ごとの定額違約金」「原状回復をしなかった場合は定額違約金」と定めていたものを、修正版で次のように強化しました。
- 無断延長や原状回復の未了によって、次の利用者の開始に支障が出た場合、または運営に影響が出た場合の定額違約金を、別に設ける
- 損害の範囲に、次の利用者への返金・割引の対応、苦情対応の費用を明記する
- 終了時刻を過ぎても退室せず、指示にも従わない場合の退去の措置を定める
ただし、同じ原状回復の不履行について違約金を二本並べ、どちらも「損害賠償の予定ではなく、実損は別に請求できる」としておくと、重ねて請求したときに過大だと争われるおそれがあります。民法420条3項により、違約金は損害賠償額の予定と推定されるため、実損を別に請求するならその旨を明記し、全体の金額のバランスを見ておく必要があります。
また、「退去の措置」として、利用者の荷物を運び出す、鍵を替えて締め出すといった実力行使をすることは、判例上、原則として許されない自力救済に当たるおそれがあります。規約には「退室を求め、応じない場合は以後の利用をお断りし、生じた損害を請求する」という手順を書き、実力行使を前提にした書き方は避けます。退去や原状回復をめぐるトラブル全般は、利用者トラブルの対処のページで整理しています。
条文例:無断延長
利用者が予約した利用時間を超えて本施設を利用したときは、超過した時間について30分ごとに延長料金の〇倍の額を支払う。
前項の超過により、後続の利用者の利用開始に支障が生じたときは、利用者は、前項の金額に加え、後続の利用者への返金又は割引に要した費用その他当社に生じた損害を賠償する。
鍵・スマートロック・入退室
| 鍵の種類 | 定めておくこと |
|---|---|
| スマートロック・暗証番号 | 暗証番号や認証情報の管理は利用者の責任とし、漏えいによる事故は利用者が負う。利用時間外に入室・滞在しない |
| 指紋認証 | 認証の権限を第三者に使わせない。違反した場合は権限を止められる |
| 物理鍵 | 紛失したときは店がシリンダー交換などの措置をとれる。費用は利用者の負担とし、損害賠償は別に請求できる |
| キーボックス | 持ち出し・複製・再配布の禁止。違反は即時解除の事由。店の都合で交換する場合は店の負担 |
事務所が見た時間貸しの規約には、鍵の交換費用について「一定額を下回らない」と下限額を置く書き方がありました。利用者が個人のお客様である場合、実際の費用を大きく超える下限額は、消費者の利益を一方的に害する条項として問題になりうるため(消費者契約法10条)、実費を基本にしておくほうが無難です。
清掃・ゴミ・退出時の写真報告
- 使用後の清掃と原状回復を義務づけ、次の利用者がすぐに使える状態に戻すことを到達点として書く
- 使用済みタオルを含む廃棄物は持ち帰り、施設に残さない(修正版で追加した例)
- 学習教室向けの例では「消しゴムのかすや紙くず程度は施設で処理してよい、それを超えるものは持ち帰る」と線を引いた
- 指定した箇所を撮影して送信することで退出報告を完了とし、写真と送信の記録を清掃の証拠とする
- 著しい汚れや備品の散乱で次の利用者が使えなかった場合は、清掃費を実費で請求できるようにする
退出時の写真報告は、無人運営の時間貸しで特に効果的です。清掃が不十分だったという苦情が次の利用者から来たときに、どの時点で誰が汚したのかを確かめる手がかりになります。
禁止事項は「具体的に」書く
「他の利用者の迷惑になる行為」とだけ書いても、注意するときの根拠になりにくいものです。事務所が修正したレンタルスペースの規約では、次のように例示を増やしました。
| 分類 | 具体的な書き方 |
|---|---|
| 音・振動 | 大音量の音楽・機器音、施術による過度な振動、床に直接置く打楽器 |
| におい | 強い香料・アロマ・薬剤の臭気、強い香水 |
| 共用部 | 共用部での長話・滞留・占有 |
| 目的外の利用 | 宿泊・居住、承諾のない物品の販売や勧誘、承諾のない撮影・配信・収録(商用・非商用を問わない) |
| 人数 | 同じ時間帯に入れる最大人数。人数には講師・付き添いなど立ち入る全員を含む |
| 法令違反 | 医療行為とそれに準じる行為、風俗営業等の規制に関わる営業 |
アロマを使うエステやリラクゼーションの利用者が多い施設では、「におい」の基準が争いになりやすいため、例示が特に効きます。個室でリラクゼーションの施術を行う場所を貸す場合は、性風俗関連の営業に施設が使われることのないよう、禁止事項と、発覚したときの即時解除を明記しておきます。
防犯カメラは「撮らない場所」も書く
無人の時間貸しでは防犯カメラが欠かせませんが、施術を受けるお客様は、施設と契約していない第三者です。事務所が修正したレンタルスペースの規約では、修正の過程で「カメラは玄関入口など防犯上必要な範囲に限り、施術室の内部を常時撮影しない」と明記しました。
- 設置の目的(防犯・事故防止・施錠の確認・規約違反の確認・トラブル時の事実確認)を規約に書き、施設内にも掲示する
- 撮影する場所と、撮影しない場所(施術室の内部、更衣スペース)を示す
- 映像を警察や弁護士などに提供する場合と、保存期間を定める
- 利用者がお客様に説明できるよう、撮影範囲を利用者向けの案内にも載せる
法人に貸す場合は「一方的すぎない」こと
子ども向け施設の空き時間を別の法人の学習教室に貸す契約では、初版が30条を超える分量で、借地借家法の不適用の承諾、継続利用の期待権の否定、相殺・支払拒絶の禁止、「異議を述べない」「何らの請求も行わない」の多用、原因を問わない包括的な免責といった、貸す側に一方的な条項が並んでいました。修正版ではこれを20条弱に絞り、免責は「故意・重大な過失を除き」に整理し、中途解約も「1か月前の通知で理由を問わずどちらからでも」に改めています。
相手が交渉力のある法人の場合、貸す側に一方的すぎる案は、締結そのものが進みません。守りたい点(料金・利用時間・原状回復・事故の責任)を厚くし、それ以外は対等に近づけるほうが、結果として早く確実に契約できます。時間貸しを始める前に確認したい物件の承諾や業種の届出は、シェアサロンの始め方のページをご覧ください。
事務所の実例:時間貸しの規約・契約で、実際に直したこと
| 場面 | 初版の書き方 | 修正版 | 直した理由 |
|---|---|---|---|
| キャンセル(法人向け) | 「変更の申出で予定の利用が実質的に行われないと判断したらキャンセルとみなす」「損害がなくても支払義務を免れない」 | 前日までは無料、当日・無断は全額、の2文だけ | みなしキャンセルの判断が貸す側の裁量に過ぎ、損害がなくても払わせる部分は過大と受け取られるため |
| 中途解約(法人向け) | 更新後の期間中に、やむを得ない事由があるときだけ1か月後に解約できる | 期間中でも1か月前の書面・電磁的通知で理由を問わず解約できる(双方) | 利用の見込みが不確かな時間貸しで、双方が柔軟に終われるようにするため |
| 紛争の範囲 | 利用者の業務に起因する紛争・苦情・事故は利用者が解決、とだけ | 施術中・後の事故や体調不良、苦情、料金の未払い・返金請求、説明・同意をめぐる紛争、第三者への損害を例示 | 整体・エステ系の利用者の顧客トラブルが施設に持ち込まれる場面を具体化するため |
| 防犯カメラ | 設置の目的と、利用=撮影への同意 | 玄関入口など防犯上必要な範囲に限り、施術室の内部を常時撮影しない | 施術を受けるお客様のプライバシーへの配慮と、利用者の安心のため |
よくあるご質問
時間貸しの利用時間に、準備や片付けの時間は含めるべきですか?
含めることを明記するのが一般的です。含めるかどうかを書いていないと、延長料金をめぐって争いになります。最低利用時間と端数の切上げ単位もあわせて定めます。
無断延長の違約金はいくらにしてもよいですか?
延長料金の数倍程度とする例が多く見られます。次の利用者への影響に対する違約金を別に設ける場合は、同じ行為に違約金が重なって過大にならないよう、全体の金額を確認します。
時間を過ぎても退室しない利用者を、強制的に退去させてもよいですか?
荷物の運び出しや締め出しなどの実力行使は、原則として許されない自力救済に当たるおそれがあります。規約には、退室を求め、応じない場合は以後の利用をお断りし、損害を請求する、という手順を定めます。
無人のレンタルサロンに防犯カメラを付けるときの注意点は?
設置の目的と撮影範囲を規約に書き、施設内に掲示します。施術室の内部や更衣スペースは常時撮影しないことを明記しておくと、利用者もお客様に説明しやすくなります。
時間貸しの規約は、後から変更できますか?
定型約款に当たる場合は、民法548条の4の要件を満たせば個別の同意なく変更できます。利用者に不利な変更は、効力が生じる時期までにインターネットなどで周知しておく必要があります。
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