このページの要点
- 利用者募集は事業者向けの表示が中心で、独占禁止法のぎまん的顧客誘引、民法の取消しと損害賠償が主な論点になる。お客様向けの表示は景品表示法の対象。
- 「初期費用ゼロ」は、契約開始時だけでなく、期間中と終了時の費用も洗い出し、ゼロの対象を契約書とそろえる。
- 「集客サポート」は実施する行為を別表で特定し、結果の保証しない旨と分けて書く。結果を約束する「集客保証」は、条件と返金の定めまで要る。
- 売上の例は、平均の対象・人数・期間・時点を数字の近くに示し、元のデータを残す。
募集広告に重なる法律は、誰に向けた表示かで変わる
最初に決めるのは、その表示を誰が読むのかです。運営者が出す表示には、場所を借りる施術者に向けた利用者募集と、施術を受けるお客様に向けた施設の紹介や予約ページの、二種類があります。同じ「無料」「満席」という言葉でも、読み手によって重なる法律が違います。
| 読み手 | 主に重なる法律 | 見られるポイント | 表示の例 |
|---|---|---|---|
| 事業として借りる施術者(募集ページ、面談での説明) | 独占禁止法の不公正な取引方法(ぎまん的顧客誘引。一般指定8項)、不正競争防止法2条1項20号、民法(詐欺による取消し96条1項、錯誤95条、債務不履行による損害賠償415条、不法行為709条) | 重要な条件を示さない、実際より著しく有利と誤認させる、説明と契約内容が違う | 「初期費用ゼロ」「集客保証」「平均月商○万円」 |
| 顧客のあっせんで収入が得られると誘い、利用者に金銭の負担を求める形 | 特定商取引法の業務提供誘引販売取引(51条の定義、52条の不実告知等の禁止、54条の誇大広告等の禁止) | 収入が得られると誘っているか、利用者が特定の負担(利用料など)を負うか。当たるかは実態で決まる | 「予約を紹介します。月○万円の収入に」 |
| 開業準備中の個人、副業の個人 | 上の二つに加え、景品表示法の考え方が問題になる場面がある | その個人が事業として契約するのか、消費者に近い立場なのかは、事情で判断される(消費者契約法2条1項は、事業として又は事業のために契約する個人を消費者から除く) | 「未経験でも安心」「副業で月○万円」 |
| 施術を受けるお客様(施設のサイト、予約サイト、SNS) | 景品表示法(5条1号の優良誤認、2号の有利誤認、3号のステルスマーケティング)、7条2項の合理的な根拠 | 実際より著しく優良・有利と一般消費者に誤認されるか | 「全員有資格」「口コミ高評価」「今だけ半額」 |
事業者に向けた募集の表示については、公正取引委員会が、フランチャイズ本部による加盟者募集に関するガイドラインで、考え方を示しています。重要な事項を十分に開示しなかったり、虚偽や誇大な開示をしたりして、実際より著しく優良・有利だと誤認させて顧客を誘引する場合は、一般指定8項(ぎまん的顧客誘引)に該当しうる、という内容です。加盟者募集のためのものなので、利用者募集にそのまま当てはまるとは断定できません。ただ、「重要な条件を開示しているか」「予想の売上に合理的な根拠があるか」「中途解約の違約金などを示しているか」という観点は、点検の参考になります。
不正競争防止法2条1項20号は、役務やその広告に、役務の質・内容・用途・数量について誤認させるような表示をする行為を、不正競争として挙げています。差止めを請求できるのは、営業上の利益を侵害された者です(同法3条1項)。競合の施設が、事実と違う設備や稼働の表示に異議を唱える場面が想定されます。条文に挙がっているのは「質・内容・用途・数量」なので、費用の条件の食い違いは、この号よりも、ぎまん的顧客誘引や契約責任の問題として現れやすいといえます。
利用者自身が責任を問う場面では、民法が前面に出ます。広告で示された事柄を前提に契約し、それが事実と違った場合、詐欺による取消し(民法96条1項)や、動機の錯誤による取消し(95条1項2号。基礎とした事情が表示されていたときに限る。同条2項)、契約上の約束を果たさなかったとしての損害賠償(415条)が主張されます。「集客を保証」と募集ページに書き、利用者がそれを理由に申し込んだのであれば、その事情が契約の基礎として表示されていたと言いやすくなります。契約書の末尾に「成果を保証しない」と一文あっても、募集ページの文言が消えるわけではありません。
募集と契約書をそろえる基本は、シェアサロンの始め方のページで整理しています。このページは、その中でも表示の言葉に絞って掘り下げます。
「初期費用ゼロ」と書くとき、ゼロにしなければならないものは何か
「初期費用ゼロ」と書いたなら、利用者が契約開始の時点で負担する金銭が、実際にゼロでなければなりません。保証金だけをなくして、返還しない契約手数料を取るのであれば、「初期費用ゼロ」ではなく「保証金は不要」と書くのが正確です。
契約書を並べて眺めると、初期費用は一つの名目ではなく、いくつもの名目に分かれています。募集で「ゼロ」と書く前に、どの名目がどこにあるかを洗い出します。
| 時期 | 名目の例 | 返還の有無 | 募集で「ゼロ」と書くときの注意 |
|---|---|---|---|
| 契約開始時 | 保証金・敷金・礼金 | 保証金は返る型と、預からない型がある | 預からない型でも、他の名目で取っていれば「ゼロ」とは書けない |
| 契約開始時 | 契約手数料・事務手数料・鍵やカードの発行費 | 返還しない定めが多い | 月額1か月分の返還しない手数料があると、初期費用は実際には1か月分かかる |
| 契約開始時 | 初月の月額(前払い) | 日割りで精算する型が多い | 月額は初期費用ではないが、前払いの時期を示さないと「最初の支払いがいくらか」が分からない |
| 終了時 | 解約手数料、原状回復費、鍵の交換費 | なし | 契約を始めるときは0円でも、やめるときに費用が出るなら、そのことを募集で示す |
表の最後の二行が、見落とされやすい部分です。初期費用をなくす代わりに、解約手数料や最低利用期間で回収する設計は、珍しくありません。設計そのものが問題なのではなく、募集の「ゼロ」の近くに、その条件が見える形で書かれているかが問題になります。消費者庁のQ&Aは、消費者向けの価格表示で、価格が適用される範囲や顧客の条件を示さなければ、不当表示に当たるおそれがあるとしています。事業者向けの募集に直接適用される話ではありませんが、「ゼロ」がどの範囲に、どんな条件で当てはまるのかを示す考え方は通用します。
募集の月額と、実際に負担する額の違い(仮の数字)
6か月で解約すると、売上に関係なく払う額は、月額36万円+契約手数料6万円+解約手数料18万円=60万円です。1か月あたりに直すと10万円で、表示の月額6万円の約1.7倍になります。売上に連動する歩合がある型では、さらに加わります。募集には、月額だけでなく、こうした固定的な負担がある場合はその存在を示します。
この計算は、運営者が自分の契約書でやっておくものです。募集の月額と実質負担が大きく離れているほど、「説明と違う」という主張を招きやすくなります。料金プランの組み方は料金プランと売上歩合の精算のページにあります。
条文例:初期費用に関する条項
利用者は、本契約の締結にあたり、保証金、敷金、礼金その他名目のいかんを問わず、預託金を当社に預けることを要しない。
前項は、次に掲げる金銭を妨げない。(1)第○条に定める利用料。(2)第○条に定める契約手数料(金○円。返還しない。)。(3)第○条に定める解約手数料。(4)第○条に定める原状回復費用の実費。
当社は、利用者の募集にあたり、前項各号の金銭について、募集ページその他の募集資料に、金額と発生する時期を表示する。
(書き方の例)「預からない」と「費用がかからない」は別の話です。1項で預り金がないことを定め、2項で別に発生する金銭を列挙し、3項で募集資料と一致させる、という三段にしておくと、募集の文言を点検するときの基準にもなります。契約手数料を廃止して、募集も契約書も「初期費用なし」にそろえる方法もあります。
「集客保証」「集客サポート付き」は、何を約束したことになるのか
「集客サポート付き」と書くなら、運営者が行う行為を約束した、という読み方になります。「集客保証」と書くなら、予約や来店といった結果を約束した、という読み方になります。この二つは、約束の対象がまったく違います。募集ページで、どちらを言っているのかをはっきりさせておくことが、出発点です。
契約書では、この区別が崩れていることがあります。たとえば、月額の高いプランを「集客サポート付き」とし、安いプランを「集客サポートなし」として料金差をつけながら、サポートの中身が契約書のどこにも書かれていない。そのうえで、契約書の雑則の末尾に、物件側の事情による終了の条項などと並べて、「サポートの成果・効果を保証せず、売上・集客・予約件数について一切責任を負わない」と一文だけ置く。こうした作りは珍しくありません。この書き方には、二つの弱さがあります。一つは、価格差の対価である「サポートの中身」がないので、何を実施すれば債務を果たしたことになるのかが決められないこと。もう一つは、「一切責任を負わない」の範囲が、サポートを実施しなかった場合まで及ぶように読めることです。結果は保証しない、という否認は、実施するという約束があって初めて意味を持ちます。
書き方の例(一般的な例):集客サポートの書き方
| 場面 | よくある書き方 | 整えた書き方 | 整える理由 |
|---|---|---|---|
| サポートの中身 | 「集客サポート付き」とだけ書く | 公式サイトへの掲載、予約システムの提供、SNSでの紹介の回数などを別表にする | 価格差の対価を特定し、実施の有無を確認できるようにする |
| 結果の扱い | 雑則に「一切責任を負わない」と一文 | 独立した条にして、「実施する行為は別表のとおり。予約件数・売上・来店数は保証しない」とする | 実施する約束と、保証しない結果を、分けて読めるようにする |
| 実施しなかったとき | 定めなし | 別表の項目を実施できなかった月は、サポート分の差額を日割りで減額する | 約束した行為が果たされなかったときの、具体的な手当てを書く |
条文例:集客サポートに関する条項
当社は、利用者が第○条に定める「集客サポート付きプラン」を選択した場合、別表に定める集客サポート(以下「本サポート」という。)を実施する。
当社は、本サポートの実施内容を記録し、利用者の求めに応じて、その内容を示す。
当社が、ある月に別表の項目の全部又は一部を実施しなかったときは、当該月の利用料のうち、別表に定める当該項目の相当額を減額する。
本サポートの実施によっても、利用者の予約の件数、来店数、売上その他の結果を、当社が保証するものではない。
(書き方の例)4項が否認するのは「結果」であり、1項から3項で約束した「行為」ではありません。「一切責任を負わない」と広く書くと、行為を実施しなかった場合まで免責するように読めてしまうので、結果の保証だけを否認する書き方にします。個人に近い立場の利用者が相手になり得る募集では、特に大切です。
「満席」「予約が埋まっている」「稼働率○%」「口コミ高評価」といった実績の表示も、集客の言葉に含まれます。いつ時点の、どの範囲(全席か一部の席か)の数字なのかが分からない表示は、読み手に実際より好調な印象を与えます。お客様向けの表示であれば、優良誤認の問題になります。景品表示法7条2項は、内閣総理大臣が、事業者の表示が優良誤認(5条1号)に当たるかを判断するために必要があるときは、表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、提出されなければその表示は5条1号に当たるものとみなすと定めています。事業者向けの募集であっても、数字を載せるなら、載せた日付と元のデータを残しておくという備えは同じです。契約書側の更新や解約の定めは、シェアサロン利用契約書のページで扱っています。
「売上保証」「月○万円」は、どこまで書いてよいのか
募集でよく見かけるのは、売上の保証そのものより、「先輩の利用者は月○万円」「平均月商○万円」「未経験でも○か月で黒字」といった、収入の例示や見込みです。保証と書いていなくても、読み手が「自分もその額になる」と受け取る表示は、保証と同じ働きをします。
収入の例を出すときは、数字の背景を、読み手が分かる形で示します。
平均額の見せ方で、印象が変わる例(仮の数字)
「平均月商80万円」と書くことは、事実に基づいていても、上位3名の平均であることを示さなければ、利用者全体の姿とは大きく離れた印象を与えます。平均を載せるなら、どの範囲の平均か(全員か、一定期間以上の継続者か)、人数、期間、集計の時点を併せて示します。
公正取引委員会のフランチャイズに関するガイドラインは、予想の売上や収益を示す場合は、類似の環境にある実績などの根拠のある事実や、合理的な算定方法に基づく必要があり、モデルの収益や収益のシミュレーションは実際の予想ではないことが分かるように示すべきだとしています。シェアサロンの募集に当てはまると断定はできませんが、収入の例を載せるときの確かな手がかりになります。「実績」「予想」「モデル」のどれなのかを、表示の中で区別します。
次に、特定商取引法の業務提供誘引販売取引です。物品の販売や有償の役務の提供の事業者が、その役務を利用する業務で得られる利益(業務提供利益)が得られると誘って、相手方に特定の負担(金銭の負担)を伴う取引をさせる場合が対象です(51条)。施設を貸すだけの契約は、これに当たらないのが通常です。しかし、運営者が顧客の紹介やあっせんをして、その収入を示しながら、利用料などの負担を求める設計になると、当たるかどうかの検討が必要になります。当たる場合には、不実のことを告げる行為などの禁止(52条)や、誇大広告等の禁止(54条)が関係します。消費者庁の解説は、収入が得られるわけではないのに得られるかのように告げることや、高収入の話だけを強調して条件を伏せることを、不実告知の例として挙げています。当たるかどうかは実態で決まるので、ここでは断定しません。募集の文章で避けるべき書き方を知る手がかりになる規定です。
避けたい書き方
- 「毎月○万円の収入になります」と、結果として断定する
- 高い売上の例だけを大きく示し、期間・人数・稼働時間を小さな文字にする
- 「最低保証」と書いて、運営者が払う額なのか、利用者が払う額なのかを示さない
最後の例は、料金の型を読むときの落とし穴です。面貸しの契約では、利用者が運営者に支払う最低額を「最低保証額」と呼びます(美容室の面貸し契約書のページ)。この言葉を募集に出すと、利用者は「売上の下限が保証される」と読むかもしれません。料金の話なのか、売上の話なのかを、言葉を分けて書きます。売上を保証する形を作るなら、売上そのものではなく、運営者が果たせる行為(営業時間枠の確保、予約システムの提供など)に置き換えて約束する方が、実行可能で、広告と契約の整合も取りやすくなります。
条文例:収入の例を示すときの注記
本ページに示す売上の例は、○年○月から○年○月までの○か月間に、当施設を継続して利用した利用者○名のうち、○名の申告に基づく平均額です。
利用者ごとの稼働時間、料金設定、既存のお客様の数により、売上は異なります。本例の額を、利用者の売上として当社が保証するものではありません。
(書き方の例)数字を示す場所のすぐ近くに置きます。ページの隅にまとめて書くだけでは、数字と注記が離れて、注記が読まれません。募集ページの数字と注記の元データは、掲載の日付とともに保存しておきます。
割引・無料体験・オープン記念は、実施の実態と終了の仕方を合わせる
「オープン記念 3か月無料」「通常月額○円のところ、今だけ○円」「先着○名」のような表示は、募集の反応を高める反面、実態とのずれが最も指摘されやすい部分です。
まず、通常の価格と比べる表示(二重価格表示)です。消費者庁のQ&Aは、「当店通常価格」のような言葉を比べる価格にするには、最近相当期間にわたって実際にその価格で販売していたことが必要だとし、目安として三つを示しています。表示する時点から遡って8週間のうち、その価格で販売した期間が過半であること。通算で2週間以上あること。最後にその価格で販売してから2週間を経過していないこと、の三つです。これは商品の販売を例にした目安で、月額の施設利用にそのまま当てはまるかは、個別に判断されます。それでも、実際には一度も通常の価格で貸していないのに、「通常月額」を示す書き方は避けるべきだという考え方は、利用者募集でも変わりません。
無料体験や無料期間では、無料の範囲を決めます。時間の上限、お客様を入れてよいか、消耗品の扱い、体験中の事故の責任と保険です。さらに、無料期間が終わった後に、自動的に有料に移るのか、利用者が申し込んだときに有料に移るのかを、募集に書きます。自動的に移る型は、移る日と金額を、無料の表示と同じ場所に示します。時間貸しのキャンセル料や延長料金の考え方は、時間貸しの利用規約のページにあります。
景品の観点もあります。消費者庁のQ&Aによれば、取引に付随してくじなどで物品を提供する場合は、相手が事業者でも一般消費者でも懸賞として景品規制の対象になります。くじによらない提供は、一般消費者向けなら総付景品として規制され、事業者向けは原則として対象外です。紹介特典に抽選の景品を付けるときは、この違いに注意します。
条文例:無料期間に関する条項
当社は、募集資料に定める条件を満たす利用者に対し、利用開始日から○か月間、第○条の利用料を免除する(以下「無料期間」という。)。
無料期間中も、利用者は、第○条の禁止事項、第○条の原状回復及び第○条の事故の報告に関する定めに従う。
無料期間の満了日の○日前までに、当社は、満了日の翌日から第○条の利用料(月額金○円)が発生することを、利用者に書面又は電磁的方法で通知する。
利用者が、前項の通知の後、満了日までに解約の意思表示をしたときは、利用料を請求しない。
(書き方の例)無料の表示と、無料の後の費用を、同じ条項の中で結びつけています。3項の事前通知を入れると、「無料の後が高かった」という食い違いを、契約の仕組みで防げます。
お客様向けの表示は、施設と利用者のどちらの責任になるか
施設のサイトに利用者の施術例を載せる、予約サイトに施設名で掲載する、SNSで利用者を紹介する。こうした場面は、お客様に向けた表示なので、景品表示法が直接関係します。誰が表示の責任を負うのかが、この節の中心の問いです。
消費者庁のQ&Aによれば、景品表示法5条の対象は、事業者が自己の供給する商品・役務について行う表示です。表示の内容の決定に関与した事業者が規制の対象になり、決定に関与した場合には、他者の説明に基づいて内容を定めた場合や、決定を他者にゆだねた場合も含まれます。故意や過失がなくても対象になります。一方、広告の制作に関わった広告代理店や媒体は、自ら商品・役務を供給していなければ対象になりません。シェアサロンでは、利用者が独立して施術を提供する場合でも、予約・料金・施術者の選定を施設が握り、施設の名前で宣伝しているなら、施設が供給に関わると見られて、施設の表示としても問題になる場面が考えられます。断定は個別の事情によりますが、施設の名で出す表示には、施設が責任を持つ前提で臨む方が安全です。
利用者の申告がそのまま施設の表示になる流れの中で、施設が取れる備えは三つです。一つ目は、利用者の申告を、掲載の前に裏づける資料で確かめること(免許や届出の写しなど。資格が必要な施術は違法営業を防ぐ規約のページでも触れています)。二つ目は、効果の表現、ビフォーアフター、価格の書き方の基準を、規約に置いておくこと。三つ目は、事実と違う掲載が見つかったとき、施設が直ちに修正・削除できる権限を、規約に書いておくことです。
口コミの扱いにも注意が必要です。内閣総理大臣の指定する告示により、事業者の表示であることが分かりにくい表示(いわゆるステルスマーケティング)は、景品表示法5条3号の不当表示とされ、令和5年10月1日から運用されています。施設の関係者や、報酬を受け取った利用者が、そのことを伏せて口コミを投稿すれば、この対象になりえます。報酬や割引と引き換えの投稿を募るなら、広告であることの表示を条件にします。
よくある失敗と直し方
実務で多い誤った書き方と、その直し方を、募集と契約書の食い違いに絞って整理します。
書き方の例(一般的な例):募集と契約書の食い違い
| 場面 | よくある書き方 | 整えた書き方 | 整える理由 |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | 募集は「初期費用ゼロ」。契約書は、契約開始時に月額1か月分の契約手数料を取り、返還しない | 募集を「保証金・敷金・礼金は不要。契約手数料は○円」に直す。又は契約手数料をなくす | 「ゼロ」の対象を、実際の契約の内容に合わせる |
| 預り金なし条項 | 「保証金・敷金・礼金その他名目を問わず預からない。返還請求もできない」とだけ書く | 預り金がないことと、別に発生する費用(利用料・手数料・原状回復の実費)を、同じ条で並べる | 預からない=費用がかからない、という誤読を防ぐ |
| 集客サポート | 雑則の末尾に「成果・効果を保証せず、一切責任を負わない」と一文 | 独立した条にして、実施する行為を別表で特定し、結果は保証しないと分けて書く | 実施の約束と結果の否認を分け、価格差の対価を示す |
| 中途解約 | 1年未満の解約には月額3か月分の手数料。通知から14日以内に払わなければ解約は無効 | 最低利用期間と解約手数料を募集に示し、解約の効力は手数料の支払と切り離す(手数料は債務として請求) | 手数料を払うまで解約が無効となる形は、争いの種になりやすい |
| 施設名の使用 | 施設名・写真・ロゴを使った広告を、承諾なくしてはならないとだけ書く | 承諾の基準(他の利用者やお客様が写り込まない、施設の提供サービスと誤認させない等)を示す | 利用者の集客と、施設の表示管理を両立させる |
ヒヤリングで確認すること
募集広告の点検では、契約書だけでなく、実際に利用者の目に触れている言葉を集めるところから始めます。確認する事項とその理由を整理します。
運営者に確認する問い
募集ページ、SNS、予約サイト、面談での説明の中で、いま使っている言葉をすべて見せてもらえますか
- 聞く理由
- 契約書だけを直しても、別の場所に古い表示が残っていれば、食い違いは解消しません。担当者が口頭で補う説明も、表示と同じ重さで問題になります。
- 気になる答えの例
- 担当者ごとに説明が違う。古い募集ページが検索で出てくる
「ゼロ」「無料」とうたっている費用の対象は、どの名目ですか
- 聞く理由
- 名目ごとに洗い出さないと、「保証金は不要」と「初期費用はかからない」が混ざります。
- 気になる答えの例
- 契約手数料や事務手数料が別にある
集客サポートの中身を、回数・場所・時期で言えますか
- 聞く理由
- 価格差の対価を特定できなければ、実施したと言えない月が出たときの扱いが決められません。
- 気になる答えの例
- 「SNSでたまに紹介する」という説明で、実施の記録がない
売上や稼働の数字を載せていますか。その元のデータと時点はありますか
- 聞く理由
- 数字は、根拠の資料を示せなければ、実際にどうであったかにかかわらず、問題にされやすくなります。
- 気になる答えの例
- 数字の出典を、掲載した本人が覚えていない
募集ページを出す前の点検
- 言葉を集める募集に使う文言を、ページ、SNS、予約サイト、面談の台本の順にすべて集めます。
- 契約書の条項と一対一で突き合わせる「ゼロ」「無料」「保証」「サポート」「最大」といった言葉ごとに、対応する契約の条項を探します。見つからない言葉は、削るか、条項を足します。
- 数字の根拠を残す実績、平均、稼働率には、集計した日付と元のデータの保存場所を決めます。
- 近くに条件を書く「ゼロ」「無料」の近くに、例外や条件を、読める大きさで書きます。
条文例:募集資料に関する条項
当社は、利用者の募集にあたり、募集ページその他の募集資料に、料金、費用、本サポートの内容その他の契約条件を、本契約及び別表と一致する内容で表示する。
募集資料の表示と本契約の内容に相違があることが判明したときは、当社は、直ちにその表示を訂正し、利用者に通知する。
前項の相違が、利用者の契約の判断に影響を及ぼすものであるときは、利用者は、利用開始日の前日までに限り、費用を負担することなく、申込みを撤回することができる。
(書き方の例)広告と契約書が食い違うこと自体は、人の作業である以上ゼロにできません。食い違いが見つかったときの手順を、契約に書いておくことで、被害の拡大を止められます。3項の撤回の期限は、運営の実情に合わせて決めます。
起きがちなこと
募集表示の場面ごとの、起きがちなことと確認すること
募集ページに「初期費用ゼロ」とあり、契約に手数料があった
- 起きがちなこと
- 利用者が契約手数料の請求を受けて、「聞いていない」と主張する。運営者は契約書の記載を挙げるが、募集の表示が先に読まれていたことは変わらない。
- 先に確認すること
- 名目ごとの洗い出し、募集の書き換え、手数料の廃止の可否
集客サポート付きプランの月に、掲載が一度も行われなかった
- 起きがちなこと
- 価格差の対価である掲載が実施されていないのに、「成果は保証しない」の一文を理由に、差額の返金を断ってしまう。
- 先に確認すること
- サポートの別表、実施の記録、実施しなかった月の減額の定め
募集に「先輩の平均月商」を載せた
- 起きがちなこと
- 平均の対象が一部の利用者で、後から入った利用者の売上が大きく下回る。「平均の出し方が違う」と指摘される。
- 先に確認すること
- 平均の対象、期間、人数、集計の時点、注記の位置
「初期費用ゼロ」「集客サポート」「売上の例」はいずれも、利用者を呼び込むために必要な言葉です。問題は、言葉が強いことではなく、言葉の裏づけが契約書や運営の実態にないことです。言葉ごとに、対応する条項、実施の記録、数字の根拠を用意しておけば、募集の力を保ちながら、食い違いによる争いを減らせます。借りる側が募集の説明を契約書と突き合わせる方法は借りる前のチェックポイントのページに、入居後の食い違いの対処は利用者トラブルの対処のページにあります。
よくあるご質問
シェアサロンの利用者募集の表示にも、景品表示法は適用されますか?
景品表示法は、一般消費者に向けた表示を対象にしています。消費者庁の資料は、事業者間の取引には独占禁止法、消費者向けの取引には景品表示法を適用するという整理を示しています。事業として場所を借りる施術者への募集は、独占禁止法のぎまん的顧客誘引や民法の責任が中心になります。ただし、お客様向けの表示や、個人に近い立場の利用者への表示では、景品表示法の考え方が問題になります。
「初期費用ゼロ」と書いて、契約手数料を取ってもよいですか?
返還しない契約手数料を取るなら、「初期費用ゼロ」とは書けません。保証金・敷金・礼金は不要だが契約手数料がかかる、と実際の範囲を書くか、契約手数料をなくして募集も契約書もそろえます。契約の開始時だけでなく、解約手数料のように終了時にかかる費用も、募集に示すのが安全です。
契約書に「成果を保証しない」とあれば、募集で「集客保証」と書いても大丈夫ですか?
大丈夫とはいえません。募集ページの文言を理由に申し込んだ利用者は、詐欺による取消し(民法96条1項)や、動機の錯誤による取消し(95条)、債務不履行による損害賠償(415条)を主張できます。契約書の不保証の一文は、募集で示した約束を消しません。約束する行為と、保証しない結果を、募集と契約書の両方で同じように書きます。
利用者の売上の例を募集に載せるとき、気をつけることは何ですか?
平均が誰の平均なのか(全員か、継続者だけか)、人数、期間、集計の時点を、数字の近くに示します。上位の利用者だけの数字を、利用者全体の姿として見せないことも大切です。公正取引委員会のフランチャイズ・ガイドラインは、予想の売上を示すときは根拠のある事実や合理的な算定に基づくこと、モデルの収益は予想でないと分かるようにすることを求めています。
無料期間やオープン記念の割引で、注意する点はありますか?
「通常月額」と比べる表示は、実際にその価格で貸した実績が必要です。消費者庁のQ&Aは、商品について、8週間のうち過半、通算2週間以上、最後の日から2週間以内という目安を示しています。月額の施設利用への当てはめは個別に判断されます。また、先着や期限を示したなら実際に終了させ、無料期間の後に有料へ移る日と金額を、無料の表示と同じ場所に書きます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の施設に必要な対応は、物件の契約内容、利用者の業種、料金の受け取り方によって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 法務省 / 公正取引委員会 フリーランス法