このページの要点
- 表題、主語、署名欄、説明者欄、連絡先に施設名を入れると、お客様は施設を契約の相手と受け取る。契約の相手は、利用者の屋号と氏名を入れる空欄で示す。
- 施設は「場所の提供者」として一行だけ登場させる。お客様向けの書面に施設の免責を書くのは避け、施設の責任の範囲は利用契約と館内のご案内で整理する。
- 予約、決済、領収書、看板、メニューの決め方が施設名のままなら、書面を直しても実態が重く見られる。運営の型を確かめてから書き方を選ぶ。
- 写真は利用者の分と施設の分を分けて同意を取り、原本は利用者が保管し、事故時に施設へ伝える範囲を同意書で取る。利用契約には、ひな形の提供と使用の条文を置く。
このページでは、施設を運営して場所を使わせる側を「オーナー」、施設で自分の名前と責任で施術をする独立した事業者を「利用者」、利用者の施術を受ける人を「お客様」と呼びます。この三者の間に契約が二本あります。オーナーと利用者の契約、利用者とお客様の契約です。ひな形とは、オーナーが用意し、利用者が自分のお客様に使う施術同意書やお客様向け規約の下書きのことです。
施設の名前が入ると、なぜお客様は施設を契約の相手と受け取るのか
お客様は、条項を読む前に、表題、ロゴ、宛名、連絡先を見て「誰の店か」を判断するからです。書面のどの箇所が、どう受け取られやすいかを整理します。
| 書面の箇所 | お客様の受け取り方 | 起きがちなこと |
|---|---|---|
| 表題・ロゴ(施設名入りの同意書) | 施設が提供する施術だと受け取る | 仕上がりや返金の苦情を、施設の受付に直接言う |
| 本文の主語「当サロンは」 | 施設が施術の責任を引き受けていると読む | 書面の文言どおりに施設の責任を主張される |
| 署名欄の宛名(施設名+御中) | 契約の相手は施設だと受け取る | 説明を尽くしたかどうかの責任が、施設に向けられる |
| 問合せ欄が施設の電話番号 | 窓口は施設だと受け取る | 利用者と連絡がつかないとき、施設が対応を求められる |
| 説明者欄に施設のスタッフ名 | 施術前の説明は施設がしたと受け取る | 説明義務をめぐる争いに、施設の担当者が関わる |
| 領収書・返金先が施設名義 | 代金の受取人は施設だと受け取る | 返金の責任が、施設と利用者の間で曖昧になる |
契約の相手が誰かは、書面の表題だけでは決まりません。予約を誰が受けたか、代金を誰が受け取ったか、メニューと料金を誰が決めたか、看板やウェブサイトでどう紹介されているかといった、外から見える事実も踏まえて見られると考えておくのが安全です。書面に「施設は当事者ではありません」と書いても、予約サイトも決済端末も領収書も施設の名前であれば、その一文は運用に打ち消されやすくなります。
ここで目指すのは、施設が責任を逃れる書面ではありません。施術に関する責任は利用者、設備の管理に関する責任は施設、という事実どおりの分担を、お客様に誤解なく伝える書面です。施設の設備が原因の事故まで利用者側に押しつける書き方は、利用者の入居を遠ざけます。責任を原因で分ける考え方はシェアサロン利用契約書・利用規約の作り方のページで、お客様の苦情が施設に届いたときの初動は利用者トラブル対処のページで整理しています。
配る書類は三層に分ける:利用契約・ひな形・館内のご案内
施設に関わる書類は、当事者が違うものを混ぜないことが出発点です。ひな形は、そのうち「利用者とお客様の間」に属する書面として扱います。
書類の流れと、それぞれの当事者
| 書類 | 当事者 | 書くこと | 書かないこと | 原本の保管 |
|---|---|---|---|---|
| 利用契約 | オーナー・利用者 | 場所の使い方、料金、ひな形の提供と使用、事故時の連絡と費用の分担 | お客様への施術の約束 | オーナー |
| 施術同意書 | 利用者・お客様 | 施術の説明、申告、想定される反応、拒否・中止、写真や情報の同意 | 施設の設備や館内の運営 | 利用者 |
| お客様向け規約 | 利用者・お客様 | 予約、キャンセル、料金、返金、お直し、禁止事項、責任の範囲 | 利用契約の内容 | 利用者 |
| 館内のご案内 | オーナー・来館者 | 防犯カメラ、撮影、共用部、緊急時の連絡 | 施術の内容や結果 | オーナー(掲示) |
よくあるのが、お客様向けの同意書に「施設は、施術に関するいかなる責任も負いません」と書く形です。お客様と施設の間に契約がなければ、この一文には、施設とお客様の合意として働く足場がありません。それどころか、一文があること自体が、施設を契約に関わる立場に見せてしまいます。施設の責任の範囲は、利用契約と館内のご案内で整理し、お客様向けの書面には持ち込まない、というのが基本です。
防犯カメラや撮影のルールのように、施設自身の運営に関する事項は、館内のご案内に書きます。時間貸しで多数の利用者に同じ条件で使わせる場合の規約の細目は、ミラーレンタル・時間貸しの利用規約のページで扱っています。カメラは玄関など防犯上必要な範囲にとどめ、施術室の内部を常時撮影しないと案内に書く例があります。お客様は利用契約の当事者ではない第三者だからです。
施設が当事者に見えないようにするには、書面のどこをどう直すのか
直す場所は五つです。表題と主語、署名欄、説明者欄、連絡先と代金の受取り、施設の登場のさせ方です。施設名で書いた箇所を、「提供者」という空欄に置き換えます。
| 箇所 | 施設名で書いた例 | 直した書き方 |
|---|---|---|
| 表題 | 「〇〇サロン 施術同意書」 | 「施術同意書」。直下に提供者(屋号・氏名・連絡先)の記入欄を置く |
| 本文の主語 | 「当サロンは、お客様に…」 | 「提供者は、お客様に…」。提供者は冒頭で定義する |
| 署名欄の宛名 | 「〇〇サロン御中」 | 「提供者(屋号・氏名)」の記入欄 |
| 説明者欄 | 「当サロンスタッフ」 | 「説明者(提供者本人、又は提供者がその責任で使用する者)」 |
| 連絡先 | 施設の電話番号・メール | 提供者の連絡先。施設の窓口を載せるなら「施設の案内窓口」と別に書く |
| 領収・返金先 | 施設名義 | 提供者名義。施設が代金を受け取る場合は、そのとおりに書く(後述) |
条文例:同意書の冒頭:提供者の表示と、施設の一行
本書は、下記の提供者がお客様(以下「私」といいます。)に提供する施術(以下「本施術」といいます。)について、提供者から説明を受けた内容を確認し、私が同意する事項を定めるものです。
提供者の屋号:________ 提供者の氏名:________ 提供者の連絡先:________
本施術の契約の相手は提供者であり、本施術の内容、料金及び結果についての責任は、提供者が負います。
本施術は、提供者が、〇〇(施設の名称。以下「施設」といいます。)の施術スペースを使って行うものです。施設は、本施術の契約の当事者ではありません。
(書き方の例)施設の名称が出てくるのは、最後の一文だけです。施術スペースの所在を示すための一行で、施設の責任を書く場所ではありません。
書面だけ直しても残る落とし穴
- 予約サイトの店名が施設名のままで、利用者の名前がどこにも出ない。
- 決済端末の明細や領収書が施設名義で、利用者名義の領収がない。
- 看板やウェブサイトが「当サロンの施術メニュー」と書き、施術者の名前を出していない。
- メニュー表と料金表を施設が作り、利用者が料金を決められない。
- 施術前のカウンセリングを施設のスタッフが代わりに行っている。
運営の実態は、おおむね三つの型に分けられます。型によって、同意書での書き方が変わります。
| 型 | 実態 | 同意書での書き方 |
|---|---|---|
| 独立型 | 利用者が自分で予約を受け、代金を受け取り、領収を出す | 提供者=利用者。施設の記載は、場所を示す一行だけ |
| 取次ぎ型 | 施設の予約窓口やシステムで予約を受け、施設の端末で決済し、後日、利用者に精算する | 提供者=利用者。予約の取次ぎと代金の受領を、施設が「利用者のために」行うと書く |
| 施設ブランド型 | 施設の名前とメニューで集客し、料金も施設が決める | 書面を直しても施設は当事者に近づく。ひな形ではなく、施設が当事者になる前提の契約・規約を整えるほうが実態に合う |
見落とされやすいのが三つ目の型です。施設ブランドで集客している以上、お客様から見て施設が契約の相手であることは自然で、書面だけ「施設は当事者ではない」と書き換えても、紛争になれば実態が重く見られます。まず自分の施設がどの型かを確かめてから、書き方を選びます。
条文例:予約の取次ぎと代金の受領を施設が行う場合(取次ぎ型)
私は、本施術の予約を、施設が運営する予約窓口を通じて行うことができます。施設は、予約の内容を提供者に取り次ぐものです。予約が成立するかどうかは、提供者が承諾したときに決まります。
私が施設の決済端末で支払った本施術の代金は、施設が提供者のために受領するものです。私が支払った時点で、本施術の代金の支払は完了したものとして扱われます。領収書は、提供者の名義で発行されます。
返金、お直し、キャンセル料に関する取り決めは、提供者と私の間のものです。返金が必要になったときは、提供者が行います。
(書き方の例)この条文を置くなら、利用契約にも「施設は、お客様が支払った代金を利用者のために受領し、〇日までに精算する」と書き、両方をそろえます。精算の組み立ては料金プランと売上精算のページで整理しています。
同意書に入れる項目のうち、シェアサロンで特に気をつける六つ
施術同意書の項目そのもの(申告事項、施術を断る基準、想定される反応の書き方)は、ネイル、エステ、整体など、業種別のサイトで扱っています。ここでは、複数の利用者が同じひな形を使うシェアサロンだからこそ決めておくべき六つに絞ります。
1 申告と説明者:説明したのは誰か、を残す
同意書は署名をもらう紙ではなく、「誰が、いつ、何を説明したか」の記録です。説明者、日時、範囲が書面から分からないと、署名があっても証拠としては弱くなります。説明者欄は利用者本人の欄とし、施設のスタッフ名を入れません。申告事項(既往歴、服薬、アレルギー、皮膚や体の状態)の欄は、メニューによって内容が違うため、利用者が選べる空欄にしておきます。
2 責任の置き場所:同意書ではなく規約の一か所に
責任の範囲を、同意書、お客様向け規約、回数券の契約書のそれぞれに書くと、食い違いが生じます。責任の範囲は規約の一か所にまとめ、同意書は「定めのない事項は規約による」とつなぎます。同意書には、「説明を受けた通常想定される反応が生じたこと自体では、施術に誤りがあったものとは扱わない」という確認にとどめ、過失による損害は規約の定めによると書いておくと、全部免責に見えません。
お客様は、個人が事業と関係なく受ける施術であれば、消費者契約法上の消費者にあたります(同法2条1項)。利用者は事業者です(同条2項)。この関係では、次のように整理されます。
| 書き方 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 事業者の債務不履行による賠償責任の全部を免除する | 無効 | 消費者契約法8条1項1号 |
| 事業者の不法行為(債務の履行に際してのもの)による賠償責任の全部を免除する | 無効 | 同項3号 |
| 事業者側の故意又は重大な過失による責任の一部を免除する、又は責任の限度を決める | 無効 | 同項2号・4号 |
| 軽い過失による責任の一部を免除するが、その条項が、重大な過失を除く過失にのみ適用されることを明らかにしていない | 無効 | 同条3項 |
責任の上限を設けるなら、上限を定める一文の中に、「事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き」と書きます。別の文で除外しても足りません。
3 写真とSNS:利用者の分と施設の分を分けて同意を取る
写真や動画の利用は、誰が使うのかを分けて同意を取ります。利用者が自分のSNSに載せるのと、施設が公式アカウントで載せるのとでは、使う主体が違うからです。「ご利用いただいた時点で掲載に同意したものとみなします」という書き方は、個別の選択になっておらず、避けます。
条文例:写真・動画の利用への同意(利用者の分と施設の分を分ける)
私は、本施術の前後の写真及び動画について、次のとおり、利用を認めるかどうかを選びます。選ばなかった項目は、認めないものとして扱われます。
□ 提供者が、自己のSNS、ウェブサイト及び店頭で利用することを認める(顔が写る場合を含む/含まない)。
□ 施設が、施設の公式SNS及びウェブサイトで利用することを認める(顔が写る場合を含む/含まない)。
私は、認めた後でも、提供者又は施設に申し出て、以後の利用の停止及び公開済みのものの削除を求めることができます。ただし、すでに印刷、配布されたものについては、この限りではありません。
(書き方の例)施設の名前を出すのは、施設自身が写真を使うときだけです。施設が使わない運用なら、二つ目のチェック欄は置きません。
4 個人情報の保管:原本は利用者、施設は預からない
同意書の申告欄には、既往歴や服薬など健康に関する情報が書かれます。書面で直接、本人から個人情報を取得するときは、あらかじめ利用目的を明示しなければなりません(個人情報保護法21条2項)。病歴にあたる記述は要配慮個人情報にあたり、取得するにはあらかじめ本人の同意が必要です(同法2条3項、20条2項)。どの項目が要配慮個人情報にあたるかは政令などで定められているため、迷う項目は、必要がなければ取らない、という考え方が安全です。
保管は、取得した利用者が行います。受付の引き出しに全員分の同意書をまとめて入れる運用は、施設が他人の顧客情報を持つ形になり、退去したときの扱いも決まりません。利用目的の達成後は、不要になった個人データを遅滞なく消去するよう努め(同法22条)、漏えいなどを防ぐ安全管理の措置を講じる(同法23条)のは、データを持つ事業者です。誰が持つのかを、先に決めます。
5 事故時の情報共有:施設に伝えてよい範囲を同意書で取る
施術中の事故や体調不良が起きたとき、施設は、館内の安全確保や救急の手配のために、お客様の情報を必要とすることがあります。ところが、利用者が持つお客様の個人データを施設に伝えることは、第三者への提供にあたり、原則としてあらかじめ本人の同意が要ります(同法27条1項)。生命や身体の保護のために必要で、同意を得ることが困難な場合は例外ですが(同項2号)、通常の苦情対応や連絡までは、この例外では賄えません。同意書の段階で取っておきます。
条文例:事故・体調不良の際の情報共有への同意
私は、本施術の前後に、事故、体調不良その他の事態が生じたとき、館内の安全の確保、救急の手配及び状況の確認のために必要な範囲で、提供者が、私の氏名、連絡先及び生じた事態の内容を、施設の管理者に伝えることに同意します。
施設の管理者は、前項により知り得た情報を、前項の目的のためだけに使います。
前二項の事態への対応及び賠償その他の責任は、提供者と私の間で取り決めます。施設の管理者は、連絡の取次ぎ及び館内の安全確保にとどまります。
(書き方の例)施設は、お客様との賠償額の取り決めや交渉をしません。取次ぎと安全確保に役割を限ると、当事者に見えにくくなります。
6 未成年と版の管理:誰の同意で、どの版に同意したか
成年は18歳です(民法4条)。未成年者が契約をするには、原則として法定代理人(通常は親権者)の同意が必要で、同意のない契約は取り消すことができます(同法5条1項・2項)。同意書に親権者の同意欄を置き、来店時に確認する方法を、利用者ごとに決めておきます。また、同意書と規約には、版の番号と改訂日を入れます。署名のとき、どの版に同意したかが分からないと、書面を改訂したあとの争いで、同意の内容を特定できません。
オーナーはひな形をどう配り、利用契約にどう書けばよいか
利用契約には、ひな形は参考様式であること、採用と加除修正は利用者の責任であること、ただし最低限の説明と同意の取得は利用の条件であること、の三点を書きます。施設が文面を決めてしまうのではなく、「枠」と「最低項目」を決めて、書式は利用者に委ねる形です。
条文例:利用契約:ひな形の提供と使用
甲は、乙が顧客との間で用いる施術同意書及び顧客向け規約の参考様式(以下「ひな形」という。)を、乙に提供することができる。
乙は、ひな形を使用するかどうか、及び使用する場合の加除修正を、自己の責任で判断する。甲は、ひな形が乙の施術内容に適合することを保証しない。
乙は、顧客に対し、施術の内容及び想定される反応を説明し、顧客から健康状態等の申告を受けたうえで、同意を書面又は電磁的記録で取得してから施術を行う。同意の書式は、ひな形によらなくても差し支えない。
乙は、前項の書面又は電磁的記録及び施術の記録を、自己の責任で保管する。甲は、これらを預からない。
乙は、顧客向けの書面に、乙の屋号及び氏名を施術の提供者として記載する。甲の名称は、施術の場所を示す記載を除き、記載しない。
甲がひな形を改訂したときは、乙に通知する。改訂後のひな形は、乙が採用した後の顧客との契約から使用される。
(書き方の例)乙は利用者、甲はオーナーです。第3項で、最低限の説明と同意を「利用の条件」にしている点がポイントです。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 固定(オーナーが決める枠) | 同意書に入れるべき最低項目(申告、説明、同意、中止)、版番号と改訂日、個人情報の取扱いの骨組み、事故時の情報共有の同意欄 |
| 空欄・選択(利用者が決める) | 提供者の屋号・氏名・連絡先、施術メニューと想定される反応、料金・キャンセル・お直し、資格や届出の表示、写真利用の範囲 |
| 置かないもの | 施設の免責や責任の一文、施設のロゴや社印、施設名義の領収・返金先、お客様向けの書面での施設の連絡先 |
オーナーがひな形の文面を一字も変えさせない、お客様ごとの同意書をオーナーが点検する、といった運用は、施設が施術の内容と方法に深く関わっているように見せます。独立した事業者という利用者の位置づけとも合いません。統制の強い条項と独立性の関係は、面貸し契約書のページで型ごとに整理しています。
もう一つ、文面の性質にも触れておきます。利用者が同じ文面を不特定多数のお客様に使うなら、その文面は定型約款にあたりえます。契約の内容とする旨の合意か表示があれば個別の条項にも合意したものとみなされますが、お客様の利益を一方的に害すると認められる条項は、合意しなかったものとみなされます(民法548条の2第1項・2項)。ひな形を改訂するときは、効力が生じる時期を定め、変更する旨と内容を、インターネットなどの適切な方法で周知します(同法548条の4第2項)。ひな形を作ったのはオーナーでも、採用してお客様に使うのは利用者ですから、これらの規定は主に利用者とお客様の関係で問題になると考えるのが素直です。
ひな形を作り、配り、保つまでの流れ
- 運営の型を確かめる予約、決済、領収、看板、メニューの決め方を書き出し、独立型、取次ぎ型、施設ブランド型のどれかを決める。
- 書類の当事者を割り振る利用契約、同意書、お客様向け規約、館内のご案内に、それぞれ誰が当事者かを書き込む。
- 提供者欄の方式で下書きする表題、主語、署名欄、説明者欄、連絡先を提供者の空欄にし、施設の登場は一行にする。
- 利用契約に条文を足すひな形の提供と使用、最低限の説明と同意、保管、改訂の通知を書く。
- 利用者に説明して渡す採用は任意であること、直してよい部分と、最低項目を示す。版番号と渡した日を記録する。
- 運用を点検する予約サイトの表示、領収書の名義、看板、掲示が書面と食い違っていないかを見る。
- 改訂の手順を決める改訂の通知、採用の確認、古い版の使用停止の時期を決める。
よくある失敗と直し方
失敗の多くは、施設の名前が入っていること、施設の責任の一文があること、書面の対象が特定されていないこと、の三つに集まります。次のような書き方が、実務ではよく見られます。
書き方の例(一般的な例):ひな形で見られる書き方と、直した書き方
| 場面 | よくある書き方 | 整えた書き方 | 整える理由 |
|---|---|---|---|
| 表題と主語 | 表題が「〇〇サロン 施術同意書」で、本文が「当サロンは」で始まる | 表題は「施術同意書」。冒頭で提供者(利用者の屋号・氏名)を定義し、主語を「提供者」にする | お客様が施設を契約の相手と受け取らないようにするため |
| 施設の免責 | お客様向けの同意書に「施設は、施術に関するいかなる責任も負いません」と書く | 同意書には書かない。設備の管理に起因するものは施設が負う前提で、利用契約と館内のご案内で整理する | お客様と施設の間に契約がなければ、免責の足場がなく、施設を関与者に見せるため |
| 説明者欄・連絡先 | 説明者欄に施設のスタッフ名、連絡先が施設の電話番号 | 説明者欄は利用者本人。連絡先は提供者のもの | 誰が説明したかの証拠と、苦情の窓口を利用者に戻すため |
| 署名の対象 | 「利用規約を確認し、同意します」とだけ書き、どの規約か特定されていない | 「提供者のお客様向け規約(第〇版・〇年〇月〇日)」と特定し、交付した方法を記録する | 署名した対象が分からないと、同意の範囲を争われるため |
| 説明の集積 | 長い説明だけで、責任の線引きがなく、規約との関係も書かれていない | 同意書は施術契約の一部とし、定めのない事項は規約による、と書く。通常想定される反応と過失の線引きは規約へつなぐ | 説明した事実の記録にとどまらず、契約と結び付けるため |
| 口コミの制限 | 「SNSでの誹謗中傷は禁止します」とだけ書く | 虚偽の事実の摘示、違法な侮辱、脅迫、業務妨害を禁止する。ただし、真実に基づく正当な意見表明、相談、通報を妨げないと書く | 正当な苦情や口コミまで萎縮させる条項は、消費者契約法10条で争われるおそれがあるため |
| 写真のみなし同意 | 「ご利用いただいた時点で、掲載に同意したものとみなします」 | 利用者の分と施設の分をチェック欄で選ばせ、撤回の方法を書く | 個別の同意になっておらず、使う主体も不明確なため |
| 原本の保管 | 同意書の原本を、受付でまとめて施設が保管する | 原本は利用者が保管する。施設が預かる場合は、目的、期間、返却を利用契約に書く | 施設が他人の顧客情報を持つ形になり、退去時の扱いが決まらないため |
ヒヤリングで確認すること
ひな形を作る前に、運営の実態をオーナーに確認します。答えによって、どの型の書き方を選ぶか、条文を足すかが決まります。
オーナーに確認する問いと、その理由
予約は、どの窓口やシステムで受けていますか。
- 聞く理由
- 予約の窓口が施設なら、取次ぎ型の条項が要ります。窓口が利用者ごとに別なら、独立型で足ります。
- 気になる答えの例
- 予約サイトの店名が施設名で、利用者の名前がどこにも出ない。
お客様の代金は、誰の端末や口座で受け取り、領収書は誰の名義ですか。
- 聞く理由
- 代金の受取人が書面と食い違うと、返金の責任の所在が曖昧になります。
- 気になる答えの例
- 施設の端末で受け、領収書も施設名で、利用者への精算は月末にまとめて行っている。
メニューと料金は、誰が決めていますか。
- 聞く理由
- 施設が決めているなら、施設ブランド型に近く、提供者欄方式だけでは実態に合いません。
- 気になる答えの例
- 施設が統一のメニュー表を作り、利用者は料金を変えられない。
看板、ウェブサイト、SNSでは、施術をする人をどう紹介していますか。
- 聞く理由
- 紹介の仕方は、お客様が契約の相手を受け取る材料になります。
- 気になる答えの例
- 「当サロンの施術メニュー」とだけ書き、施術者名がない。
同意書や規約の原本は、どこに、誰が保管しますか。
- 聞く理由
- 保管する者が、安全管理や消去の責任を負う形になるためです。
- 気になる答えの例
- 受付の引き出しに、全員分をまとめて入れている。
事故や苦情があったとき、お客様は誰に連絡し、施設はどこまで関わりますか。
- 聞く理由
- 施設が取次ぎと安全確保にとどまるのか、対応を引き受けるのかで、情報共有の同意の書き方が変わります。
- 気になる答えの例
- 利用者の連絡先が書面になく、苦情が施設に集まっている。
未成年のお客様は来ますか。来る場合、親権者の同意をどう確認しますか。
- 聞く理由
- 同意のない契約は取り消されうるため、確認の方法を決めておく必要があります。
- 気になる答えの例
- 学生のお客様が来るのに、親権者の同意欄も確認の手順もない。
施設は、お客様の写真を自分の公式SNSで使いますか。
- 聞く理由
- 使う主体が違うので、利用者の分と施設の分を分けて同意を取る必要があります。
- 気になる答えの例
- 利用者が撮った写真を、同意を取らずに施設の公式アカウントに載せている。
ひな形を使わない利用者が出たとき、どうしますか。
- 聞く理由
- 最低項目を利用の条件にしておけば、書式が違っても、説明と同意の取得を確保できます。
- 気になる答えの例
- ひな形を使うかどうかを利用者任せにし、同意を取っているか誰も確認していない。
起きがちなこと:ひな形を配ったあとの運用
ひな形は、配った日が終わりではありません。配ったあとに起きがちなことを、場面ごとにまとめます。
ひな形を配ったあとに起きがちなこと
お客様が受付で返金を求める
- 起きがちなこと
- 同意書に施設名が大きく入っていて、お客様が施設を契約の相手と思っている。施設が謝罪や返金を先に約束してしまう。
- 先に確認すること
- お客様に案内する窓口(利用者)、施設が言ってよいこと(事実の聞き取りと取次ぎ)、利用者への連絡の順番。
利用者が退去したあと、同意書の原本が施設に残る
- 起きがちなこと
- 原本の保管場所も返却の手順も決めておらず、他人の顧客情報が残ったままになる。
- 先に確認すること
- 原本の保管者、退去時の返却と廃棄、廃棄の記録。
施設の公式SNSに、同意のない写真が載る
- 起きがちなこと
- 利用者のSNSへの同意しか取っておらず、施設が使う分の同意がない。
- 先に確認すること
- 写真の利用主体ごとのチェック欄、撤回の窓口、削除にかかる期間。
ひな形を改訂したのに、古い版が使われ続ける
- 起きがちなこと
- 改訂を通知したが、利用者がいつから新しい版にするかを決めておらず、どの版に同意したかも分からない。
- 先に確認すること
- 版番号と改訂日、採用の確認、古い版の使用停止の時期。
未成年のお客様が一人で来て、あとで親から苦情が出る
- 起きがちなこと
- 親権者の同意を確認する手順がなく、同意のない契約として取り消しの話になる。
- 先に確認すること
- 親権者の同意欄、同意を確認できる連絡の保管、来店時の確認方法。
ひな形は、予約、決済、領収、掲示、保管といった運用が書面と同じ向きにそろって、はじめて施設が当事者に見えなくなります。
よくあるご質問
ひな形に、施設の名前を一切入れてはいけませんか。
施術を行う場所を示すために、施設の名称を一行だけ入れることは差し支えありません。入れてはいけないのは、表題、主語、署名の宛名、連絡先、領収の名義のように、施設が契約の相手に見える箇所です。施設の名称が出てくるのは、施設が写真を使う場合の同意欄のように、施設自身が行うことを書く箇所に限ります。
お客様向けの同意書に、施設は責任を負わないと書いてはいけませんか。
書かないほうが安全です。お客様と施設の間に契約がなければ、同意書の一文は施設とお客様の合意として働く足場がなく、施設を契約に関わる立場に見せてしまうおそれがあります。施設の責任の範囲は、オーナーと利用者の利用契約と、館内のご案内で整理します。設備の管理に原因がある損害は、施設が負う前提で組みます。
施設の決済端末でお客様の代金を受け取る場合、同意書はどう書きますか。
代金は施設が利用者のために受領するもので、お客様が支払った時点で支払が完了すること、領収書は利用者の名義で出すこと、返金やお直しは利用者が行うことを書きます。あわせて、利用契約にも施設が受領して精算する旨を書き、両方をそろえます。予約と決済の両方を施設が握っている実態が強いなら、施設が当事者になる前提の契約・規約を整えるほうが実態に合います。
お客様が記入した同意書は、誰が保管すればよいですか。
お客様から直接、情報を取得した利用者が保管します。健康に関する記載を含むため、安全管理の措置を講じ、利用する必要がなくなれば消去するよう努める責任も、データを持つ者に生じます。施設が預かる場合は、目的、期間、返却や廃棄の方法を、利用契約に書いておきます。
ひな形を改訂したとき、すでに同意を取ったお客様にも新しい版が適用されますか。
お客様との契約の内容は、同意を取った時点の版が基本です。利用者が定型約款の変更の要件(民法548条の4)を満たして変更する場合は、効力が生じる時期を定め、変更する旨と内容を周知する必要があります。オーナーとしては、改訂版の通知、利用者の採用の確認、古い版の使用停止の時期を決め、版番号と改訂日を書面に残しておきます。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の施設に必要な対応は、物件の契約内容、利用者の業種、料金の受け取り方によって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 法務省 / 公正取引委員会 フリーランス法