シェアサロンの料金プランと、売上歩合の精算

料金は、型を選んだだけでは決まりません。売上の定義、申告と明細、カード売上の預り、締め日と支払日までを言葉にして初めて、毎月の精算が回ります。

トップページ › シェアサロンの料金プランと、売上歩合の精算
「歩合は10%」と決めても、その10%を掛ける売上が何かを決めていなければ、毎月の金額が少しずつ食い違います。

このページの要点

  • 月額固定と月額+歩合は、(月額の差)÷ 歩合率の売上を境に損得が入れ替わる。型の選び方は、売上の波、売上の把握のしやすさ、カード決済の有無で決める。
  • 歩合の基礎になる売上は、税込か税別か、値引き、物販、回数券、返金、未収の扱いを列挙して定義する。
  • 毎月の精算は、締め日、申告、明細、異議の期間、確定の順で回す。カード売上を店が預かるなら、支払日と差引きの項目も日付と項目で書く。
  • 遅延損害金は利率を数字で書く(法定利率は民法404条)。店の払戻しの遅れにも同じ利率を定めておく。
シェアサロンの料金は、「型を選ぶこと」と、「売上・入金・締め日を言葉で決めること」の二段構えで成り立ちます。型を選んだだけでは足りません。歩合型やカード売上の預り型では、毎月の精算で「何を」「いつ」「誰が」計算するのかが決まっていないと、金額の食い違いと入金の遅れが繰り返されます。このページは、貸す側にも借りる側にも使えるよう、料金プランの選び方と、売上歩合の精算の手順を、一般的な考え方と計算例で整理したものです。計算例の数字はすべて説明のための仮の数字です。税金の取扱いは扱わず、契約書に税込か税別かを書く、という点にとどめます。

料金の5つの型と、損益の分かれ目

シェアサロンの料金は、一般に、月額固定、月額+歩合、時間制、最低保証+変動、固定使用料+光熱費の按分の5つに分けられます。型の名前と向く利用者の概観はシェアサロンの始め方のページ、料金条項の書き方はシェアサロン利用契約書のページにあります。ここでは、型を選ぶ基準と、選んだあとの精算に絞ります。

5つの型と、お金の動き方
型合いやすい使い方利用者側のリスク運営側のリスク
月額固定施術日が安定していて、固定のお客様が多い稼働が少ない月も同じ額を払うよく稼ぐ利用者の売上が増えても、収入は増えない
月額+売上歩合売上に波がある。開業直後で固定費を抑えたい売上が伸びるほど負担が増える。歩合の計算に納得できないと不満が残る売上の把握に手間がかかる。申告の漏れや誤りが起きる
時間制施術日が不定期。副業や短時間の利用長く使うほど割高になる。端数の切上げが気になる無断延長や、準備・片付け時間の扱いで揉める
最低保証+変動業務委託型の面貸しなど、店と利用者の関係が近い売上が少ない月でも最低額を払う最低額を高く設定しすぎると、利用者が続かない
固定使用料+光熱費の按分飲食の間借りなど、店の設備を共用する使用量が増えた月の追加請求按分の計算と、その根拠の説明に手間がかかる

月額固定と「月額+歩合」の損得は、売上がいくらを超えるかで入れ替わります。その分かれ目は、次の式で出せます。

月額固定のプランAと、月額+歩合のプランBの比べ方(仮の数字)

プランA:月額6万円、歩合なし
プランB:月額3万円、歩合は売上の10%
月の売上が20万円のときA 6万円/B 5万円
月の売上が30万円のときA 6万円/B 6万円
月の売上が40万円のときA 6万円/B 7万円
分かれ目の売上30万円

分かれ目の売上は、(Aの月額−Bの月額)÷ Bの歩合率で出せます。この例では、(6万円−3万円)÷ 0.1 = 30万円です。分かれ目より売上が少ない月が多いならB、多いならAが有利です。

月額が高いプランほど歩合の率を低くする設計は、利用できる曜日や時間帯でプランを分ける場合にも使われます。曜日や時間帯ごとにプランを並べ、利用者が自分の売上の規模に合う組合せを選べるようにする、という考え方です。集客の支援をつけるプランとつけないプランで月額を分ける場合は、支援の中身(掲載の有無、予約システムの提供、紹介の回数など)を別表にしておかないと、「支援付き」の意味をめぐって食い違います。

型を選ぶときの三つの問い

  1. 利用者の売上は安定しているか安定しているなら月額固定が分かりやすい。波が大きいなら、固定費を抑えて歩合を載せる型のほうが、利用者が参加しやすい。
  2. 運営側は、利用者の売上を正確に把握できるか店の予約システムやレジを通る売上が大半なら、歩合型でも精算の手間は小さい。利用者が自分の予約と会計を持つなら、申告と確認の手順が要る。
  3. お客様のカード支払いを、店の端末で受けるか受けるなら、預かった代金の払戻しと、利用料・歩合との差引きの手順を決める必要がある(後述)。受けないなら、精算の対象は利用料と歩合だけで済む。

歩合の基礎になる「売上」を言葉で決める

歩合型で最もよく起きる食い違いは、「歩合率は10%と決めたが、10%を掛ける売上がいくらなのかは決めていなかった」というものです。売上の定義は、次の論点ごとに決めておきます。

売上の定義で決めておく論点
論点決めること決めないと起きること
税込か税別か契約書に、どちらの金額を基準にするかを明記する同じ売上でも基準額がずれ、歩合額が食い違う
割引クーポン、紹介割引、ポイント利用を引いた後の額か、定価か。値引きを誰が負担するか店の販促で値引きしたのに、利用者の歩合が減って不満が出る
物販施術と別に売った商品を含めるか。含めるなら歩合率は同じか物販を含めるつもりの店と、含めないつもりの利用者がすれ違う
回数券・前払い売上に数えるのは、販売したときか、施術したときか退会や返金のときに、すでに歩合を払った分の扱いが揉める
キャンセル料無断キャンセルの料金を売上に含めるか施術していない売上の歩合を巡って食い違う
オプション・指名料施術料金に含めるか、別立てか請求項目によって歩合の対象が分かれる
返金・やり直し売上から差し引くか。差し引くなら、返金した月か、元の売上の月か月をまたぐ返金の処理が、毎月の精算とずれる
後払い・未収お客様から受け取った時点で数えるか、施術した時点で数えるかお客様が払っていない売上に対し、歩合を払うかで揉める

値引きの負担で、歩合の額が変わる例(仮の数字)

定価で計算した月の施術料金の合計50万円
店の販促クーポンによる値引きの合計5万円
歩合率10%
定価を基準にした歩合5万円
値引き後の額を基準にした歩合4万5千円
基準の違いによる歩合の差5千円

差は5千円です。値引きが店の販促によるものなら定価を基準にし、利用者が自分の判断で行った値引きなら値引き後の額を基準にする、というように、値引きの原因で分ける書き方もあります。

条文例:売上の定義(書き方の一例)

本契約において「売上」とは、乙が顧客から施術その他の役務の対価として受領した金額(税込)をいう。ただし、次の各号に掲げるものは売上に含めない。(1)顧客に返金した金額 (2)甲の販促により顧客に付与されたクーポンその他の値引きに相当する金額 (3)顧客が支払っていない未収の金額

乙が物販を行った場合の売上は、前項と同様に扱い、歩合率は〇%とする。

売上の計上は、顧客から対価を受領した日を基準とする。返金は、返金した日の属する月の売上から差し引く。

どれを含み、どれを除くかを列挙し、計上の時期を決める形です。含める・除くの判断は、料金の型や集客の支援の内容に合わせて変わります。

申告・明細・確定:毎月の精算を回す手順

売上の定義が決まったら、次は、それを毎月どう集めて、どう確定させるかです。歩合の精算は、一般に次の流れで回します。

売上歩合の精算の流れ(利用者の申告に基づく型)

1. 締め日毎月末日などで、売上を数える期間を区切る
2. 申告利用者が、所定の書式で前月の売上を、期限までに申告する
3. 算出と明細店が歩合を算出し、内訳を記載した明細を交付する
4. 異議の期間利用者が、一定の日数内に、書面で異議を述べられる
5. 確定と支払い異議がなければ明細の内容で確定し、支払いまたは差引きを行う

売上の把握の仕方には、利用者の申告、店のシステムによる集計、その併用の三つがあります。

売上の把握の三つの方式
方式内容向く場面注意すること
利用者の申告利用者が、予約記録や会計の記録をもとに売上を申告する利用者が自分の予約と会計の仕組みを持っている申告の漏れと誤り。申告の根拠となる記録をどう保存し、どう示すか
店のシステムの集計店の予約システムやレジ、決済端末に記録された売上を集計する店の端末でカード決済を受ける現金売上が記録から漏れる。利用者が集計の中身を確認できる仕組みが要る
併用して突き合わせ両方の数字を照らし、差があれば原因を確認する売上の規模が大きい。トラブルを避けたい差異が出たときの優先順位と、確認の期限を決めておく

店が統一のレジで売上を管理する場合でも、利用者が自分の売上のデータを日ごとに見られるようにしておくと、申告をめぐる不信が起きにくくなります。売上の明細に、科目別(施術・物販など)、入金日、決済方法別の内訳を載せる書き方もあります。記録の保存期間は、一定期間(複数年)を定めておくのが一般的です。

申告が期限に遅れたり、誤っていたりしたときの扱いも、あらかじめ書いておきます。

  • 申告が期限に遅れたときは、店が把握している数字で暫定的に算出し、後から再申告で調整する、などの暫定の扱い
  • 申告に不備があれば、店が再申告を求められる
  • 虚偽や不正確な申告が判明したときは、是正と、不足分の追加請求ができる
  • 店が、申告の根拠となる予約記録や会計の記録の提示を求められる。これに利用者が協力する義務
  • 故意の虚偽申告は、契約の解除事由にもなりうる

虚偽申告により払うべき歩合が少なくなっていた場合、債務の本旨に従った履行をしていないとして、損害賠償を請求できる余地があります(民法415条1項)。ただし、請求額の立証や、記録の保存状況によって実際に請求できる範囲が変わるため、契約書で是正と追加請求の手順を決めておくほうが、争いを避けやすくなります。

条文例:売上の申告と是正(書き方の一例)

乙は、毎月〇日までに、前月分の売上を、甲の定める書式により申告する。申告には、売上の内訳(科目別、決済方法別)を記載し、根拠となる記録を添付する。

甲は、前項の申告の内容に不備があると認めるときは、乙に再申告を求めることができる。乙は、甲の求めに応じ、売上に関する記録を提示し、確認に協力する。

乙の申告が不正確であったことが判明したときは、乙は直ちに是正し、不足した利用料及び歩合金を甲に支払う。

確定の方法として、明細を受け取ってから一定の日数以内に書面で異議を述べなければ、内容を承認したものとみなす、という書き方があります。契約実務で広く使われる手順で、歩合型のシェアサロンにも応用できます。ただし、次の点は決めておきます。

  • 異議の期間は、利用者が明細を確認して根拠の記録と照らし合わせられるだけの長さにする。短すぎると、承認とみなす条項が一方的と受け取られる
  • 明細には、売上、歩合の算出、差し引いた項目を、すべて載せる。載っていない項目は、承認の対象にならないと読まれやすい
  • 承認とみなした後に誤りが分かったときの扱い。一般に、故意の虚偽や、明らかな計算の誤りは例外にする
  • 異議があったときの確認の手順と期限

条文例:明細の交付と、異議の期間(書き方の一例)

甲は、毎月、売上、利用料、歩合金及び差引項目の内訳を記載した明細を、乙に交付する。

明細の交付を受けた日の翌日から〇日が経過するまでに、乙から書面又は電子的方法による異議の申出がないときは、乙は明細の記載内容に同意したものとして扱う。ただし、乙の故意による虚偽の申告があったとき、及び明細に明らかな計算の誤りがあったときは、この限りでない。

乙が異議を述べたときは、甲及び乙は、売上に関する記録を照合し、〇日以内に確認の結果を書面で共有する。

カード売上の預りと払い戻し、そして相殺

お客様の支払いを、店の決済端末で受けるシェアサロンは少なくありません。このとき、施術の対価は利用者のものなのに、お金はいったん店に入ります。店が預かって、締め日ごとに利用者へ払い戻す形になるので、その手順を決めておきます。この預りが加盟店規約や資金決済法との関係でどう整理されるかは、カード売上の預りと決済代行の整理のページで説明しています。

店の端末でカード決済を受けるときのお金の流れ

お客様施術後、店の端末でカード決済をする
店決済事業者から入金を受け、利用者の分を預かる
締めと集計締め日に、預かった額と、差し引く項目を集計し、明細を作る
利用者支払日に、差引き後の額を指定の口座で受け取る

店が、利用者のために受け取った代金を引き渡す義務を負う、という考え方は、委任の場合に、受任者が事務の処理で受け取った金銭を委任者に引き渡さなければならないとする規定(民法646条1項。法律行為でない事務の委託には、準委任として同法656条で準用)と同じ方向にあります。ただし、シェアサロンの契約がそのまま委任に当たるとは限りません。実際には、契約書に「店が利用者のために受領する」「いつまでに払い戻す」と明記することが、預りの出発点になります。

預り型の契約で決めておきたいことは、次のとおりです。

  • 締め日と支払日。たとえば、毎月末日締め、翌月末日払いのように、日付で書く。「店が確認でき次第」のような書き方は避ける
  • 決済手数料を、誰が、どのように負担するか。売上から差し引くのか、店が負担するのか
  • お客様からの返金、カード会社への異議申立てによる取消しがあったときの扱い。すでに払い戻した後なら、利用者に戻してもらう手順
  • 差し引ける項目と、その順序。利用料、歩合、立替金、前の月の過払い分など
  • 店から利用者への支払いが遅れたときの遅延損害金。利用者の遅延と同じ利率にそろえておくと、一方的と受け取られにくい
  • 支払いの内訳が分かる明細の交付。入金額だけが振り込まれ、計算の根拠が見えないと、不信の原因になる

決済の仕組みの面では、店が決済事業者と結んでいる契約で、自店以外の事業者の施術代金を店の端末で受けることが認められているかどうかも、店の側で確認しておく事項です。契約の内容によっては、利用者の売上を別の方法で受け取る仕組みを選ぶ必要が出てきます。

歩合や利用料との差引きは、法律の言葉では「相殺」です。民法は、二人が互いに同種の債務を負い、双方の債務が弁済期にあるときは、対当額で相殺できるとし(民法505条1項)、相殺は相手方への意思表示によってするとしています(同法506条1項)。シェアサロンでは、店が預かった売上を払い戻す債務と、利用者が店に払う利用料・歩合の債務が向かい合うので、そのまま相殺の形になります。契約書に「店は、預かった売上から利用料、歩合金、立替金を差し引いて支払うことができる」と書き、差し引いた内訳を明細で示す、という手順にしておくと、意思表示と通知の役割を、明細が果たします。

月次の精算書の例(仮の数字)

当月の売上の合計(歩合の基準)60万円
うち、カードで店が預かった額48万円
うち、現金で利用者が直接受け取った額12万円
差引き:月額の利用料3万円
差引き:売上60万円 × 歩合10%6万円
差引き:立替をした消耗品の実費4千円
差引き:決済手数料(利用者の負担分)1万円
利用者への支払額(48万円−10万4千円)37万6千円

現金で受け取った12万円は、店が預かっていないので払戻しの対象ではありません。ただし、売上の合計には含まれ、歩合の計算には入ります。差引きの合計は10万4千円です。

もう一つ、決めておきたいのは、預かった額が差し引く額を下回る月の扱いです。たとえば、現金払いの比率が高い利用者は、店が預かる額が少なく、利用料と歩合を差し引くと不足する月が出ます。不足分は、請求書を出して、別に支払ってもらう手順が必要です。

預り型の精算で、食い違いが起きやすい書き方

  • 支払日が「別途通知する」「店が確認でき次第」とされていて、日付が決まっていない
  • 差し引ける項目が「その他店が必要と認めるもの」とされ、項目が限定されていない
  • 明細の交付が書かれておらず、入金額だけが振り込まれる
  • 利用者が遅れると年率の遅延損害金がかかるが、店の払戻しの遅れには定めがない

最低保証と光熱費の按分:変動する費用の精算

最低保証と変動額を組み合わせる型は、売上が少ない月でも店の収入を一定に保つための設計です。ところが、「最低保証額に変動額を上乗せする」のか、「売上連動額が最低保証額を超えたときに、その超過分だけを払う」のかで、結果がかなり違います。

最低保証額8万円、売上連動の率20%の場合(仮の数字)
月の売上上乗せ型(最低額+売上×率)いずれか高い額型(最低額と売上×率の高い方)
30万円8万円+6万円=14万円売上×率が6万円なので、最低額の8万円
40万円8万円+8万円=16万円売上×率が8万円なので、8万円
50万円8万円+10万円=18万円売上×率が10万円なので、10万円

契約書の言葉がどちらの設計なのかを、計算例で確認するのが有力な方法です。条文に計算例を一つ添えておけば、貸す側と借りる側が同じ数字を思い描いているかを、契約の前に確かめられます。最低保証額を、契約の初期だけ減額する組み方もあります。減額の期間、本来の額に移る時点、途中で解約したときの扱いを、書いておきます。また、利用者が店に払う金銭の名目(使用料か、別の対価か)は、実態との関係が問われます。名目と実態の関係は、面貸し契約書のページで整理しています。

光熱費を按分する型では、方式を決めたうえで、計算の根拠を請求書に載せます。

光熱費の按分の方式
方式内容注意すること
月額に含める光熱費も含めた使用料を、定額で払う使い過ぎの扱い。大幅な上昇があったときの見直し
使用量の按分面積、使用時間、人数などの割合で、実際の請求額を分ける割合の根拠を示す。割合を変更する条件
概算+実績の精算概算額を毎月負担し、実績との差を後で精算する概算の根拠。精算の時期。季節による変動
メーター別利用者の区画に個別のメーターを付け、実測値で請求する設置の費用。検針の方法と時期

ゴミの処理費も、月額に含めるか、定額で別建てにするかを決めます。トイレの紙やハンドソープなどの消耗品は、利用者が補充する、店が負担する、などの分担を決めておくと、請求の根拠が明確になります。間借りのように店の設備を共用する場合の費用の考え方は、間借り営業のページにもあります。

日割り・プラン変更・料金改定・遅延損害金

月の途中で使い始めたり、やめたりしたときの計算は、日割りの方式で変わります。

日割りの方式
方式計算注意すること
暦日で按分月額 × 利用日数 ÷ その月の日数月によって1日あたりの額が変わる。計算例を契約書に添えると分かりやすい
30日で固定月額 × 利用日数 ÷ 3031日の月は割安に、28日の月は割高になる
日割りなし月の途中の開始は翌月分から。途中の解約でも返金しない利用者が不利と感じやすい。募集の段階から示す

たとえば、月額が3万円で、6月11日から使い始める場合、6月の利用日数は20日です。暦日で按分すると、3万円 × 20 ÷ 30 = 2万円です。月の日数が31日の月なら、同じ20日でも3万円 × 20 ÷ 31 で、約1万9千円になります。

プラン変更は、「変更を希望する月の前月の〇日までに書面で申し出て、店が承諾したときに、翌月から適用する」というように、締め切りと適用の時期を決めておきます。月の途中での変更を認めるのか、認める場合は日割りにするのか、歩合率の切り替えをいつから適用するのかも、書いておく項目です。

料金改定は、物価や維持費の変動、店が借りている建物の賃料の改定などを理由に、事前の通知で行う例があります。決めておきたいのは、通知の時期、適用の開始時点(通知後の利用分から、または次の更新から)、そして、改定に応じられない利用者が、違約金なしで解約できる機会です。建物の賃料の改定と連動させる場合に、「協議する」とだけ書いてあると、協議がまとまらなかったときに動けません。改定の算式や上限を書くか、協議がまとまらない場合の扱いまで書いておきます。

規約型の場合、定型約款の変更は、利用者の一般の利益に適合するとき、または変更の必要性・内容の相当性などに照らして合理的なときに限って認められ、効力発生時期を定めて、事前に周知しなければ効力を生じません(民法548条の4第1項から第3項)。また、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、相手方に不利益となるように取引の条件を設定・変更することは、不公正な取引方法に当たりうるとされています(継続して取引する相手方に対する場合について、独占禁止法2条9項5号ハ。同法19条は、事業者が不公正な取引方法を用いることを禁止しています)。実際に問題になるかは、地位の優越の有無や、条件の変更の内容を個別に見て判断されるため、改定の理由と手続を、契約の段階で透明にしておくことが無難です。

遅延損害金は、利率を数字で書きます。民法は、金銭の給付を目的とする債務の不履行の損害賠償額を、遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率で定めるとし、約定の利率が法定利率を超えるときは約定の利率によるとしています(民法419条1項)。法定利率は年3パーセントとされ、3年を一期として見直される変動制です(同法404条2項・3項)。契約で別の利率を定めることもできます。年14.6パーセントは、消費者契約について、支払期日の翌日から支払日までの損害賠償額の予定や違約金の合計が、この割合で計算した額を超える部分を無効とする規定の数字です(消費者契約法9条1項2号)。利用者が事業者として契約する場合には、この規定は直接には及びませんが、定める水準の目安として使われることがあります。

遅延損害金の計算例(仮の数字、年14.6%)

支払期日に払われなかった額10万円
遅れた日数30日
計算:10万円 × 0.146 × 30日 ÷ 365日1,200円

期日の翌日から支払日までを数えます。1年を365日として日割りで計算する、などの計算方法も契約書に書いておきます。督促の手数料など、別の費用を請求するなら、その旨も別に書きます。

遅延損害金は、利用者が払うときだけでなく、店が預かった売上を払い戻すのが遅れたときにも定めておきます。両者が同じ利率だと、一方的と受け取られにくくなります。

解約・退去のときの最終精算

契約が終わる月は、通常の月より精算の項目が増えます。最終精算の手順を決めておかないと、退去の日にもめたり、退去後に請求が残ったりします。利用者が病気・廃業・死亡などで手続きできない場合の最終精算については、休会・産休・病気・廃業・死亡時の契約の扱いのページで説明しています。

最終精算の順番

  1. 最終月の利用料の日割り日割りの方式に従って計算する。月の途中で終わる場合の返金の有無も確認する。
  2. 最終月の売上の申告と明細退去後でも、最終月の売上を、通常と同じ期限で申告してもらう。明細と異議の期間も通常と同じ手順を使う。
  3. 預かっている売上の最終払戻しカード売上を預かっている場合、最終の締め日の分を、通常と同じ期限で払い戻す。
  4. 未払い、立替金、遅延損害金の差引き差し引ける項目を明細に載せ、差し引いたあとの残額を計算する。
  5. 保証金の充当と返還保証金を預かっている場合、何にどの順で充当するか、充当の順序を決めておく。残額は、未履行の債務がないことを確認して、一定期間内に返す。

退去後に、お客様から返金の請求が来たり、売上の誤りが分かったりすることもあります。最終精算が済んだ後の再精算を認めるのか、認めるなら期限をどうするのかを、書いておきます。未払いが出たときの催告・利用停止・解除、保証金の充当の手順は利用者トラブルの対処のページに整理しています。借りる側が解約の期限と手数料をどう確認するかは借りる前のチェックポイントのページで扱っています。

起きがちなことと、精算ルールに書く項目

ここまでの点が決まっていないときに、実際に起きやすいことを、場面ごとにまとめます。

起きがちなこと

歩合の額が、毎月少しずつ食い違う

起きがちなこと
「売上」の定義が書かれていないと、税込と税別、値引きの前後、物販の扱いが、店と利用者で違ってしまう
先に確認すること
売上の定義を、含めるものと除くものを列挙して決める。計算例を条文に添える

売上の申告が漏れていた

起きがちなこと
現金売上が申告されず、あとで店のシステムの記録との差が見つかることがある。再申告や追加請求の手順が決まっていないと、対応が遅れる
先に確認すること
申告の期限と書式、根拠の記録の提示、是正と追加請求の手順を決める。異議の期間と、故意の虚偽の例外も書く

カード売上の入金が遅れる

起きがちなこと
支払日が「確認でき次第」とだけ書かれていると、いつ入金されるか分からない。差引きの内訳が示されないことも、不信のもとになる
先に確認すること
締め日と支払日を日付で書く。明細で差引項目を示す。店の払戻しの遅れにも遅延損害金を定める

月の途中の開始や終了で、請求額に納得できない

起きがちなこと
日割りの方式が書かれていないと、暦日の按分か30日の固定かで、金額が違ってくる
先に確認すること
日割りの計算式を契約書に書き、計算例を添える

料金を上げると言われた

起きがちなこと
建物の賃料の改定を理由に、料金が一方的に上がることがある。改定に応じられない場合の解約の機会が書かれていないと、受け入れるしかなくなる
先に確認すること
改定の理由、通知の時期、適用の時期、解約の機会を書く。協議だけで終わらせず、算式や上限も検討する

退去したあとに、精算が残った

起きがちなこと
最終月の売上の申告、預かった売上の払戻し、保証金の返還の順番が決まっていないと、退去後に精算が残りやすい
先に確認すること
最終精算の順番と期限を決め、最終精算後の再精算の扱いも書いておく

最後に、精算ルールを書面にするときの項目を整理します。

  • 売上の定義(税込か税別か、値引き、物販、回数券、キャンセル料、返金、未収の扱い)
  • 売上の把握の方式(申告、店のシステム、併用)と、申告の期限・書式・根拠の記録
  • 明細の内容、異議の期間、承認とみなす範囲と例外
  • カード売上の預りの有無、締め日、支払日、差し引ける項目と順序、決済手数料の負担
  • 最低保証額・光熱費の按分の算式と、計算例
  • 日割りの方式、プラン変更の締め切り、料金改定の手続と、応じられない場合の解約
  • 遅延損害金の利率(双方向)と、計算方法
  • 解約・退去時の最終精算の順番と、最終精算後の再精算の扱い

契約書全体の組み方はシェアサロン利用契約書のページ、借りる側の視点でのチェックは借りる前のチェックポイントのページに、それぞれまとめています。

書き方の例(一般的な例):料金・精算の条項の書き方

よくある書き方と整えた書き方
場面よくある書き方整えた書き方整える理由
売上の定義売上とは、施術代金の総額をいう税込か税別か、値引き、物販、返金、未収の扱いを列挙し、計上の時期を決める含めるものがあいまいだと、毎月の歩合額が食い違うため
カード売上の支払預かったカード売上は、翌月に支払う毎月末日締め、翌月末日までに、明細とともに、差し引く項目を示して支払う支払日と差引きの内訳が分かれば、入金の遅れや不信を防げるため
遅延損害金の利率利用者の遅延は高い利率、店の払戻しの遅れには定めがない双方の遅延に、同じ利率の遅延損害金を定める片方だけに利率を課す書き方は、一方的と受け取られやすいため
異議の期間明細に異議を述べなければ承認したものとみなす差引項目を含む明細を交付し、故意の虚偽と明らかな計算の誤りは例外にする承認とみなす範囲が広すぎると、有効性が争われやすくなるため

よくあるご質問

月額固定のプランと、月額+歩合のプランは、どちらが得ですか?

売上の水準で入れ替わります。分かれ目の売上は、(月額固定の月額−月額+歩合の月額)÷ 歩合率で出せます。たとえば、月額6万円のプランと、月額3万円+歩合10%のプランなら、(6万円−3万円)÷ 0.1 = 30万円です。毎月の売上が分かれ目を超える見込みなら月額固定、下回る月が多いなら歩合型が有利です。

歩合の基礎になる売上は、税込と税別のどちらにすべきですか?

どちらが正しいということはなく、契約書にどちらの金額を基準にするかを明記することが大切です。あわせて、割引後か定価か、物販・回数券・キャンセル料・返金・未収の扱いも決めておきます。税金の取扱いそのものは、このガイドでは扱いません。

店の端末で受けたカード売上は、いつ、いくら入金されますか?

契約書の定めによります。たとえば、毎月末日締め、翌月末日払いのように、締め日と支払日を日付で決め、利用料、歩合、立替金、決済手数料などを差し引いた内訳を明細で示す形が分かりやすい書き方です。差し引く項目や順序が書かれていない場合は、契約前に確認します。

売上の申告が間違っていたとき、どうなりますか?

契約書に、再申告、是正、不足分の追加請求の手順を書いておくのが一般的です。明細を受け取ってから一定の日数以内に異議がなければ承認とみなす定めがあっても、故意の虚偽や明らかな計算の誤りは例外にしておくのが通常です。虚偽の申告で不足が生じた場合は、債務不履行による損害賠償の問題にもなりえます(民法415条1項)。

遅延損害金は何パーセントにすればよいですか?

民法上の法定利率は年3パーセントで、3年ごとに見直される変動制です(民法404条2項・3項)。契約で別の利率を定めることができ、約定の利率が法定利率を超えるときは約定の利率によります(同法419条1項)。年14.6パーセントは消費者契約法9条1項2号の数字で、事業者間の契約には直接は及びませんが、目安として使われることがあります。利率は数字で書き、店の払戻しの遅れにも同じ利率を定めておきます。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。個別の施設に必要な対応は、物件の契約内容、利用者の業種、料金の受け取り方によって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 法務省 / 公正取引委員会 フリーランス法

アトラス行政書士法人|毎日5組限定契約書・利用規約の無料チェックお手元の書類の問題点を、行政書士が詳しく指摘します。1書類につき24時間以内に回答・お1人様3種類まで無料チェックの詳細を見る›

ご依頼の前に:対応の内容

料金は書類ごとの定額です(税込):契約書 1通15,000円/利用規約+プライバシーポリシー 2点で23,000円/特定商取引法に基づく表記 11,000円 料金表を見る

詳しい内容を見る

シェアサロン・面貸し・間借りの契約書や規約でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

公式LINEで無料相談する
アトラス行政書士法人 公式LINEの友だち追加QRコード
  1. 公式LINEを友だち追加
  2. 「シェアサロン・面貸し・間借りのサイトを見た」とメッセージを送信
  3. ご相談内容を確認し、LINEでご返信します(365日・深夜や休祭日も通常対応)

相談無料です。料金が発生するのは、お申込みいただいた書類の作成と、お手元の書類の修正・加筆だけです。

LINEで友だち追加して無料相談する

申込フォーム・お電話でもご相談いただけます。

ご依頼・納品の流れを見る