このページの要点
- 消防法は用途と収容人員、建築基準法は用途変更と避難を見る。「区画」の意味も、ブースの区切りと防火区画は別。
- 美容や施術だけのサロンは、建築基準法の用途変更の確認の対象になりにくいが、物販・飲食の提供を付けると事情が変わる。
- 収容人員は、施術する利用者・お客様・同伴者も数え、防火管理者の選任の要否と契約上の人数の上限をそろえる。
- 区画の設置・変更は承諾制にし、避難経路、消火器、持込み物、点検の協力を、原契約の義務に合わせて利用者に写す。
シェアサロンの区画割りで、消防法と建築基準法は何を見ているのか
最初に、「区画」という言葉の意味をそろえます。シェアサロンの話で「区画」といえば、ブースや個室や席のように、利用者に使わせる範囲のことです。ところが、建築基準法には「防火区画」という別の区画があり、これは火と煙の広がりを止めるための区切りです。同じ言葉で別のものを指しているため、契約書の文面と行政の確認が食い違う原因になります。
| 区画の種類 | 何のための区切りか | 根拠の例 | 契約書との関係 |
|---|---|---|---|
| 賃貸上・利用上の区画(ブース、個室、席) | 利用者が使える範囲を決める | 運営者と利用者の契約 | 利用範囲、鍵、荷物の置き場、変更の承諾を定める |
| 防火区画 | 火災の拡大を防ぐため、耐火・準耐火の床や壁、防火設備で区切る | 建築基準法施行令112条(一定の建築物では、床面積の合計1,500㎡以内ごとに区画) | 建物側の設備。利用者が壊したり、開けたままにしたりしない義務として現れる |
ブースの間仕切りは、ふつうは防火区画ではありません。ただし、天井まで届く壁にするのか、上が開いた低いパーテーションにするのかで、煙の流れ方、火災の覚知、避難の見通しが変わります。設備側の検討が必要になる場合があるため、後で述べるとおり、区画を作る前の確認手順を契約に入れておきます。
二つの法律の見るところを、先に並べます。
| 項目 | 消防法 | 建築基準法 |
|---|---|---|
| 中心の問い | 火災を防ぎ、被害を小さくするために、使う人が何をするか | 建物の用途と構造が、安全の基準に合っているか |
| 主な規定 | 防火管理者の選任(8条)、避難に必要な施設の管理(8条の2の4)、消防用設備等の設置・維持(17条)と点検・報告(17条の3の3)、火の使用に関する市町村条例(9条) | 特殊建築物の用途変更の確認(6条1項1号・87条1項)、避難・消火に関する技術基準(35条)、特殊建築物等の内装(35条の2) |
| 鍵になる数字 | 収容人員(出入りし、勤務し、居住する人の数)、延べ面積、階 | 用途、床面積(200㎡など)、階数、延べ面積(1,000㎡など) |
契約書で整理するときは、この二つに加えて、貸主と運営者の間の賃貸借契約(以下「原契約」)を見ます。運営者が借りている建物で区画を作るのなら、用途や工事に関する原契約の定めが先に効くからです。
負担が流れる順序
実務で多い貸室の賃貸借契約には、使用目的を別表の用途に限り変更には貸主の書面承諾を要する、消防法令・建築関係法令の遵守と届出は借りる側の責任と費用で行う、間仕切りや配線の変更は工事内容を書面で出して承諾を得る、防火や設備点検のために貸主が立ち入れる、といった定めが並びます。運営者がこれらを引き受けている以上、利用者に同じ水準の義務を負わせておかないと、貸主から指摘されたときに、運営者が自分だけで責任を負う形になります。建物の借り方全体の考え方はシェアサロンの始め方・経営のページで整理しています。
ブースを作る・用途を変えるとき、建築基準法の手続は要るのか
建築基準法の用途変更の確認が必要になるのは、変更後の用途が「特殊建築物」で、その用途の部分の床面積が200㎡を超える場合などです。建築物の用途を変更して、法6条1項1号の特殊建築物(別表第一(い)欄に掲げる用途に供するもので、その用途の部分の床面積の合計が200㎡を超えるもの)にするときは、類似の用途の間での変更を除いて、新築と同じように確認の手続を準用します(法87条1項)。法の別表第一には、劇場、病院、学校、百貨店、旅館、共同住宅などが並び、美容室やネイルサロンという語は挙がっていません。そのため、施術だけを行うサロンへの用途変更は、この確認の対象になりにくいと整理されます。ただし、これは用途が別表のどれにも当たらないという意味にとどまり、ほかの規制が及ばないという意味ではありません。
注意したいのは、物販や飲食の提供を付け加える場合です。別表第一(い)欄の(四)項には百貨店、マーケット、遊技場などが挙がり、政令(建築基準法施行令115条の3)は、これに類するものとして、公衆浴場、待合、料理店、飲食店、物品販売業を営む店舗(床面積が10㎡以内のものを除く)を定めています。サロンの一角で化粧品を売る、飲食を提供するといった使い方が、付随的なものか独立した店舗と見られるのかは、実態で判断されます。契約書には、物販・飲食の提供を始める前に運営者の承諾を要すると定めます。
住居や事務所の一室を使う場合
住宅やオフィスの一室を使ってシェアサロンを始めるときは、建築基準法の用途地域の制限が問題になります。用途地域ごとに建てられる用途が決められており(法48条)、用途を変更する場合にもこの制限が準用されます(法87条2項)。賃貸借契約や管理規約が居住専用・事務所利用に限られていないか、という契約上の制限も別にあります。使用目的の変更には貸主の書面承諾を要する定めが一般的で、承諾なく別の目的で使うと、解除の理由になります。
間仕切りの新設は「大規模の模様替」になるのか
建築基準法でいう「大規模の模様替」は、建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいいます(法2条15号)。主要構造部は壁、柱、床、はり、屋根、階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁は除かれます(同条5号)。したがって、構造上重要でない間仕切りでブースを作ることは、これだけでは大規模の模様替に当たりにくいことになります。反対に、構造上重要な壁を取り除く、階段を新設するなどの工事は、確認が必要な場合があります(法6条1項)。建築基準法上の手続が要らないことと、消防法の設備や避難の確認が要らないことは別の話です。後者は次の章以降で述べます。
条文例:区画の設置と変更(書き方の一例)
運営者は、利用区画(本施設のうち、利用者が使用できる範囲として運営者が定めたものをいう。以下同じ。)の位置、数及び間仕切りの仕様を、本施設の建物の貸主の承諾並びに建築基準法令及び消防法令に適合する範囲で定める。
利用者は、運営者の書面(電磁的方法を含む。)による事前の承諾なく、利用区画の内外に、壁、パーテーション、カーテン、天井材、配線、配管、ガス器具その他の設備を設置し、変更し、又は撤去してはならない。
運営者は、前項の承諾に当たり、避難経路、消火器具、火災報知設備その他の消防用設備等及び非常口の位置に支障が生じないことを確認し、必要な条件を付すことができる。
利用区画の変更に伴い、貸主、消防機関その他の行政機関への届出又は協議が必要となるときは、運営者がその窓口を務め、利用者は必要な資料の提供に協力する。費用は、利用者の希望による変更に限り、利用者の負担とする。
行政機関から、利用区画の変更、縮小又は使用の中止を求められたときは、運営者は、その内容を遅滞なく利用者に通知し、利用者は運営者の指示に従う。この場合の利用料の取扱いは第○条による。
(書き方の例)窓口を運営者に一本化し、希望による変更の費用だけを利用者の負担にしています。
防火管理者は必要か:収容人員の数え方と、利用者の人数の扱い
結論から述べると、防火管理者が必要かどうかは、建物の用途と収容人員で決まります。多数の人が出入りし、勤務し、または居住する防火対象物(建築物など)で政令の定めるものの管理について権原を有する者は、防火管理者を定め、消防計画の作成、消火・通報・避難の訓練、消防用設備の点検整備、火気の使用・取扱いの監督、避難・防火上必要な構造・設備の維持管理、収容人員の管理などを行わせなければなりません。選任したときは、遅滞なく消防長または消防署長に届け出ます(消防法8条1項・2項)。
「収容人員」とは、その防火対象物に出入りし、勤務し、または居住する者の数をいいます(消防法施行令1条の2第3項1号イ)。お客様や来訪者も数に入る構造です。選任が必要になる人数は用途で分かれます。
| 用途の区分(令別表第一) | 収容人員 | サロンに関わる例 |
|---|---|---|
| (三)項ロ 飲食店、(四)項 物品販売業の店舗など | 30人以上 | 飲食やカフェを併設する、物販を中心にする場合 |
| (十五)項 前各項に該当しない事業場 | 50人以上 | いずれの項にも当たらない用途の事業所は、この項に整理されることがある |
| (十六)項イ 複合用途(その一部が(一)〜(四)項などに当たるもの) | 30人以上 | ビルの別のテナントが飲食店・物販店で、サロンも同じ建物にある場合 |
| (十六)項ロ 上記以外の複合用途 | 50人以上 | 同上。ほかのテナントが(四)項などに当たらない場合 |
表の読み方に二つ注意があります。第一に、サロンが入る用途がどの項に当たるかは、建物の使い方の実態から判断されるもので、契約書の題名では決まりません。美容や施術の用途が政令別表第一のどの項に整理されるかは、所轄の消防署に確かめる事柄です。第二に、複合用途の建物では、収容人員は、各項と同一の用途に供されている部分を、それぞれ一つの防火対象物とみなして算定した数を合算します(消防法施行規則1条の3第2項)。サロンの区画が小さくても、建物全体の分類と人数によっては、選任の義務が生じることがあります。だれが選任するかは、建物の中で管理について権原を持つ者がだれかで決まります。
収容人員の算定の例
算定式は用途ごとに決められています。例えば、(十五)項では、従業者の数と、主として従業者以外の者の使用に供する部分の床面積を3㎡で除した数を合算します(消防法施行規則1条の3第1項)。シェアサロンでは、施術する利用者が雇用されていなくても、現に出入りして勤務している以上、数から外さない扱いが安全です。算入の仕方は事前に消防署に確かめます。
収容人員の算定の例(説明のための仮の数字)
38人は、(十五)項の50人以上には達しませんが、(三)項・(四)項や(十六)項イの30人以上には達します。同じ人数でも、どの項に当たるかで選任の要否が変わります。
防火管理者には資格が必要で、講習の種類は延べ面積などで分かれます(令3条)。契約では、防火管理者を定める主体(貸主か運営者か)、消防計画の周知の手順、避難訓練への参加義務(利用者が個人事業主でも、区画で勤務する以上は参加させる)、運営者の指示に従う義務と従わないときの区画の使用停止を決めます。
条文例:防火管理への協力(書き方の一例)
運営者は、消防法その他の法令に基づき、本施設の防火管理者を定め、消防計画を作成し、これを利用者に周知する。
利用者は、前項の消防計画及び運営者の防火管理上の指示に従い、避難訓練に参加し、火気の取扱いについて運営者の指示を遵守しなければならない。
利用者は、利用区画内に同時に在室する者(利用者、お客様、同伴者、補助者その他一切の者を含む。)の人数を、運営者が指定する方法で事前に申告し、第○条の上限を超えてはならない。
利用者が前二項に違反し、運営者が防火管理上必要と認めたときは、運営者は、利用区画の使用の全部又は一部を停止することができる。
(書き方の例)人数に「お客様、同伴者、補助者」まで含めることで、収容人員の数え方と契約上の上限をそろえています。
区画割りは、避難経路と消防設備にどう響くか
ブースや個室を増やすほど、避難の経路は長く、狭く、折れ曲がりやすくなり、消火器や感知器の位置が実際の間取りと合わなくなりやすくなります。そのため、契約では「区画を変える前に、避難と設備を確認する」手順を置きます。法律が求めることを順に整理します。
避難に必要な通路に物を置かない
政令で定める防火対象物の管理について権原を有する者は、廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設について、避難の支障になる物件が放置されたり、みだりに置かれたりしないように管理し、防火戸の閉鎖の支障になる物件も同様に管理しなければなりません(消防法8条の2の4)。消火器具は、通行または避難に支障がなく、使用に際して容易に持ち出すことができる箇所に設置するものとされています(施行令10条2項2号)。シェアサロンでは、荷物、収納、施術台、パーテーションが、避難口や消火器の前をふさぎやすい点が問題になります。集合住宅の規則には、階段・消火栓・消火器・避難器具の付近に物を置かない、共用部分に私物を放置しない、という定めがあり、共用部分に置き換えて書けます。
消火器・消防用設備と、その点検
消火器は、用途と延べ面積などで設置が必要になります。例えば、(十五)項の防火対象物は延べ面積が300㎡以上、(三)項・(四)項は150㎡以上((三)項は、火を使用する設備や器具を設けたものは面積にかかわらず)が基準で、それ以外でも、地階、無窓階(避難や消火活動に有効な開口部のない階)、3階以上の階で床面積が50㎡以上のものは設置の対象となります(施行令10条1項)。少量危険物(指定数量の5分の1以上、指定数量未満)を扱う建築物にも必要です(同項4号)。設置された消防用設備等は、定期に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告しなければなりません(消防法17条の3の3)。契約では、点検と報告を行うのが貸主か運営者か、利用者は点検の立入りにどう協力するか、消火器や非常口を動かさない義務を書きます。
建築基準法の避難規定が及ぶ建物の場合
建築基準法の避難規定のうち、廊下の幅や直通階段の設置などを定めた節は、特殊建築物(法別表第一(い)欄(一)〜(四)項)、階数が3以上の建築物、窓その他の開口部を持たない居室のある階、延べ面積が1,000㎡を超える建築物に限って適用されます(施行令117条1項)。2階建て以下で延べ面積が小さいテナントビルのサロンには、この節の規定が及ばないことがあります。一方、3階建て以上の建物の上階にサロンを置くときは、次の数字が現実の問題になります。
| 項目 | 数字 | 区画割りへの影響 |
|---|---|---|
| 廊下の幅(令119条) | 居室の床面積の合計が200㎡(地階は100㎡)を超える階の廊下は、両側に居室がある場合1.6m以上、その他は1.2m以上(共同住宅などの例外を除く) | ブースを廊下の両側に並べると、広い幅が必要になる |
| 歩行距離(令120条) | 居室から直通階段までの歩行距離。一般の居室では、主要構造部が準耐火構造または不燃材料の建築物は50m以下、その他は40m以下。内装を準不燃材料でした場合は10m加算(15階以上を除く) | 壁で迂回路ができると、実際の歩行距離が延びる |
| 二以上の直通階段(令121条1項6号ロ) | 5階以下の階で居室の床面積の合計が、避難階の直上階は200㎡、その他の階は100㎡を超えるとき(主要構造部が準耐火構造または不燃材料の建築物は、400㎡・200㎡) | 階全体を一つのサロンが借りて、居室を増やすときの検討事項 |
数字は建物の構造と階数で変わるため、契約書に数字を書き込むのではなく、「建築基準法令及び消防法令に適合する範囲で区画を作る」「適合の確認は運営者の責任で行い、利用者は運営者の指示に従う」と書き、確認の手順を別紙の配置図で残す方法が現実的です。貸主の管理領域と運営者の管理領域を分けて書いておくと、責任の線を引きやすくなります。
| 区画の作り方 | 避難・煙への影響 | 消防設備への影響 | 契約で決めること |
|---|---|---|---|
| 天井まで届く固定壁 | 通路が折れ曲がり、歩行距離が延びる。建物によっては壁の仕上げ材に制限がかかる(法35条の2) | 感知器、照明、散水が区画の中に届くかの確認が必要になることがある | 貸主の承諾、施工者、図面の提出、退去時の撤去 |
| 床置きの可動パーテーション | 位置が日々動き、通路幅を狭めたり、避難口や消火器をふさいだりする | 消火器の位置が隠れる | 配置図の固定、通路の最低幅、位置を変えるときの承諾 |
| ドア付きの個室 | 内部の火災に気づくのが遅れる。内側から施錠すると、外から開けられない | 感知器の増設が必要になることがある | 施錠の方法、非常時に外から開ける手段、鍵の保管 |
カーテンなどの防炎物品の規制は、政令で定める防火対象物が対象で、(一)〜(四)項などが挙がります(消防法8条の3、施行令4条の3第1項)。(十五)項の事業場だけの建物は挙がっていませんが、飲食店や物販店が入る複合用途の建物では、その部分が対象になるため、建物側の素材の基準を利用者に伝えます。
定員、同時利用人数、火気・薬剤の持込みを、契約でどう決めるか
契約で決めるのは、「何人まで同時にいてよいか」と「何を持ち込んでよいか」の二つで、どちらも数字と数え方を書きます。
人数の上限は、立ち入る全員を数える
教室や施設を時間で貸す契約では、同一時間帯の利用人数の上限を数字で書き、その人数には従業員、講師、受講者、保護者など、施設に立ち入るすべての者を含める、という書き方が使われます。利用の前に人数を申告して承諾を得る、上限を超えたときは利用の停止や退出などの措置をとれる、施設の安全管理や法令遵守のために貸す側が上限の変更を求められる、という定めも添えられます。これをシェアサロンに置き換えると、上限は「ブースの数×(施術者とお客様)に、スタッフと同伴者を加えた数」を目安に、収容人員の算定と建物の避難の余裕を見て決めます。
同時在室人数の上限の考え方(説明のための仮の数字)
この15人を、消防署に確かめた収容人員の算定や避難経路の幅と照らして、無理がないかを見ます。上限を超える予約は受けない設定を予約の仕組みにも反映します。
火気・薬剤・電気機器の持込み
シェアサロンの利用契約には、火気や危険物の持込みを禁止する定めが、多くの書き方で置かれています。例えば、キャンドルや可燃性ガスなどの火気・危険物の持込みと使用を禁止する、消防法その他の関係法令により規制される危険物、薬品、臭気物の持込み、使用、保管を禁止する、といった形です。ただ、「規制される危険物」とだけ書くと、利用者はどこまでが対象か読み取れません。危険物とは、消防法の別表第一の品名欄に掲げる物品で、性質欄の性状を持つものをいいます(消防法2条7項)。ネイルの除光液やアルコール系の消毒液のような引火性のある液体は、品名と量によって危険物に当たる可能性があります。量が少なければ規制の対象外でも、保管の量と場所は決めておきます。
電気についても、設備や機器の新設・変更を禁止する定めが集合住宅の規則などに見られます。複数の利用者が機器を同時に使うとブレーカーの容量を超えるおそれがあるため、持ち込む機器は申告制にします。
条文例:人数の上限と持込み物(書き方の一例)
利用区画における同時在室人数の上限は、○名とする。この人数には、利用者、お客様、同伴者、補助者、運営者の職員その他、利用区画に立ち入る一切の者を含む。
利用者が前項の上限を超えて利用したとき、又は超えるおそれがあると運営者が認めたときは、運営者は、利用の停止、退出の求めその他必要な措置をとることができる。
利用者は、本施設に、裸火を使用する器具(キャンドル、ガスバーナー等)及び可燃性ガスを持ち込んではならない。
利用者は、消防法の危険物に該当するおそれのある薬剤及び引火性の液体を持ち込むときは、品名及び数量を運営者に申告し、運営者が定める量及び保管場所の範囲内で保管する。
利用者は、消費電力の大きい電気機器を持ち込むときは、事前に運営者の承諾を得る。
(書き方の例)数字を空欄にしてあるのは、建物ごとの収容人員と電気容量の確認を済ませてから決めるためです。
よくある失敗と直し方
実務で多い書き方を整理します。
書き方の例(一般的な例):消防・建築の安全に関わる条項
| 場面 | よくある書き方 | 整えた書き方 | 整える理由 |
|---|---|---|---|
| 禁止事項(危険物) | 消防法その他の関係法令により規制される危険物、薬品、臭気物の持込み、使用、保管を禁止する | 裸火・可燃性ガスの禁止を独立させ、引火性の液体と薬剤は「申告のうえ、定めた量と場所の範囲内で可」とする | 「規制される」の範囲が読めないと、利用者が違反に気づかず、運営者も是正を求める根拠が弱くなるため |
| 法令遵守の責任 | 利用者は、関係法令を遵守し、許認可は自己の責任と費用で取得する | 利用者が負うもの(持込み機器、薬剤、人数の申告)と、運営者が負うもの(避難設備の維持、防火管理者、点検)を分けて書く | 施設側の責任範囲を明示しておくほうが、免責全体の有効性を保ちやすいため |
| 区画の変更 | 原契約では間仕切りの変更に貸主の承諾が必要だが、利用契約には書かれていない | 利用者による設置・変更・撤去を運営者の承諾制にし、配置図と消防設備への影響の確認を条件にする | 原契約の義務を利用者に写さないと、運営者だけが貸主に責任を負うため |
| 責任の線引き | 利用者は、施設の利用に起因する損害について、運営者に補償を求められない | 利用者の責任に帰すべき損害と、避難設備の不備など運営者の管理に属する事項に起因する損害を分け、後者は運営者が負うとする | 施設の構造や設備の不備による事故まで請求を放棄させる書き方は、利用者に偏りすぎ、争われやすいため |
区画の設計と契約の性質の整合も確認します。ブースを壁で独立させ、鍵を持たせ、荷物を常置させる設計は、利用者が区画を占有している色合いを強めます。賃借人は、貸主の承諾なく賃借物を第三者に使用させることができず、違反すると貸主は契約を解除できます(民法612条)。占有を与えない設計にするのか、承諾を得て転貸するのかは、間借り契約書・転貸の承諾・サブリースのページと美容室の面貸し契約書のページで整理しています。
ヒヤリングで確認すること
契約を整える前に、建物と運用の実態を聞きます。答えで、書く条項と数字が変わります。
区画割りを行う運営者に、あらかじめ確認する事項
建物の用途と、同じ建物にあるほかのテナントの用途は何ですか。原契約の使用目的は、どう書かれていますか。
- 聞く理由
- 消防法上の区分は、建物の使い方の実態で決まり、ほかのテナントに飲食店や物販店があると、複合用途として扱われる場合があるためです。
- 気になる答えの例
- 「ほかのテナントは分からない」「使用目的は事務所のままで借りている」
区画は何か所で、壁・可動パーテーション・カーテン・ドアのどの作り方ですか。図面はありますか。
- 聞く理由
- 作り方によって、避難の経路、消火器の位置、感知器の届き方、貸主の承諾の要否が変わるためです。
- 気になる答えの例
- 「利用者が各自で置いている」「図面は手元にない」
同じ時間帯に、最大で何人が出入りしますか。施術する人、お客様、同伴者、スタッフの内訳は。
- 聞く理由
- 収容人員の算定と、契約上の人数の上限の根拠になるためです。
- 気になる答えの例
- 「繁忙日は数えていない」「お子様連れの人数は想定していない」
防火管理者はだれですか。消防計画と避難訓練は、貸主側と運営者側のどちらが行っていますか。消防用設備の点検報告はだれの担当ですか。
- 聞く理由
- 選任の主体と、利用者に求める協力の内容を決めるためです。
- 気になる答えの例
- 「だれが担当か決まっていない」「貸主がやっているはずだが確認していない」
利用者はどんな機器・薬剤・火気を使いますか。ブレーカーの容量や、薬剤の保管場所は決めていますか。
- 聞く理由
- 持込み物の禁止と許可の線引きを具体化し、申告の対象を決めるためです。
- 気になる答えの例
- 「各自の判断で持ち込んでいる」「保管場所は共用の棚」
貸主から、区画の設置、用途、工事、利用者の入れ替えについて、書面の承諾を得ていますか。
- 聞く理由
- 承諾がないと、区画を作ったこと自体が原契約の違反になりうるためです。
- 気になる答えの例
- 「口頭で了解を得ている」「聞いていない」
起きがちなこと
区画割りで起きがちなことと、先に確認すること
区画を増やしたところ、消火器が個室の中に入ってしまった
- 起きがちなこと
- ブースの追加で、通路にあった消火器が特定の利用者の個室の中に入る。点検が届かず、非常時に持ち出せない
- 先に確認すること
- 区画を変える前に、消火器の位置と通路の幅を配置図で確認する。消火器の前に物を置かない義務と、点検時の立入りの協力を契約に書く
繁忙日に、想定を超える人数が入った
- 起きがちなこと
- 予約が重なり、お客様と同伴者が待機し、同時在室人数が上限を超える。収容人員の算定との関係で、防火管理の前提が崩れる
- 先に確認すること
- 上限に同伴者まで含める。予約の仕組みで上限を超える予約を受けないようにし、超過時の措置を契約に書く
貸主に伝えないまま、間仕切りを設置した
- 起きがちなこと
- 貸主の定期点検で見つかり、原契約の違反を指摘される。是正の費用と期間が運営者の負担になり、利用者との契約には、費用を転嫁する根拠がない
- 先に確認すること
- 原契約の工事の承諾の定めを確認し、利用契約に同じ承諾制を写す。設置前に貸主の書面承諾を取る
借りる側が契約の前に確かめる視点はシェアサロンを借りる前のチェックポイントのページに、時間単位で貸す形の規約の組み方はミラーレンタル・レンタルサロン・時間貸しの利用規約のページにまとめています。事故やクレームが起きたときの手順はシェアサロン・間借りの利用者トラブル対処のページでも扱っています。
よくあるご質問
シェアサロンのブースを増やすとき、建築基準法の手続は必要ですか?
構造上重要でない間仕切りでブースを作るだけなら、主要構造部の工事に当たらず(建築基準法2条5号)、確認が通常問題になりにくい場面です。用途を特殊建築物に変更して床面積が200㎡を超える場合や、構造上重要な壁を撤去する場合は確認が必要になることがあります。ただし、消防法の設備や避難の確認は別に必要です。
防火管理者は、シェアサロンに常に必要ですか?
常に必要なわけではありません。用途と収容人員で決まり、飲食店や物販店は30人以上、(十五)項の事業場は50人以上などの区分があります(消防法施行令1条の2第3項)。複合用途の建物では、建物全体の分類と人数で決まることもあるため、所轄の消防署に確かめます。
収容人員には、施術する利用者やお客様も数えますか?
収容人員は、出入りし、勤務し、または居住する者の数です(消防法施行令1条の2第3項1号イ)。お客様や来訪者も構造上は含まれ、施術する利用者も、雇用でなくても勤務している以上、数える扱いが安全です。算定式は用途ごとに決まっているため、具体的には消防署に確かめます。
消火器や非常口の前に荷物を置くことは、契約で禁止できますか?
禁止できます。消火器具は通行や避難に支障がなく、容易に持ち出せる箇所に設置するものとされ(消防法施行令10条2項2号)、避難に必要な施設に支障となる物件を置かないよう管理する義務もあります(消防法8条の2の4)。契約には、通路の最低幅、荷物の置き場、置いたときの撤去の義務と費用を書いておきます。
貸主の承諾なくパーテーションを設置すると、どうなりますか?
原契約に、造作・間仕切りの設置に貸主の書面承諾を要する定めがあれば、その違反になります。違反は解除の理由になりうるほか、是正費用の負担も生じます。運営者は、原契約の承諾制を利用契約に写し、利用者の設置前に承諾を得る手順を定めておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の施設に必要な対応は、物件の契約内容、利用者の業種、料金の受け取り方によって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 法務省 / 公正取引委員会 フリーランス法