このページの要点
- カード売上を受ける型はA〜Dの四つ。店が資金に触れるのは型Bで、論点が最も多い。
- 加盟店契約で、第三者の売上の処理が認められているかを書面で確認する。
- 資金決済法2条の2は、収納代行の一定の類型を為替取引とする規定で、該当しなければ直ちに問題なしとは言えない。個別に確認する。
- 預りの条項には、区分管理、支払いの時期、差引きの列挙、取消しの戻し額、差押えの手順を書く。
カード売上はだれのお金か:登場する五者と、売上を受ける四つの型
カード決済が使われる場面には、お客様、利用者、店(運営者)、決済代行会社、カード会社の五者が登場します。施術の契約はお客様と利用者の間で結ばれ、代金を請求できるのは利用者です。店は場所を貸し、決済の仕組みを用意しているだけなら、お客様に対する代金債権を持ちません。ところが、決済端末も加盟店契約も店のものなので、お金は先に店の口座へ入り、店が「他人の代金を受け取っている」という関係が生まれます。
カード決済のお金の流れ(店の端末で受ける型)
店の立場は、契約の言葉にすると、利用者から代金の受領を任された形です。法律行為ではない事務を任せる契約を準委任といい(民法656条)、任された人が事務を処理するに当たって受け取った金銭は、任せた人に引き渡さなければなりません(民法646条1項)。シェアサロンの契約がそのまま準委任に当たるとは限りませんが、受け取った金銭を引き渡す義務という骨組みは、多くの書き方で土台になります。
もう一つ、お客様が店に払った時点で、利用者への支払いが済んだことになるのかを決めます。店に受領の権限を与え、「店への支払は利用者への支払とみなす」と利用者との契約に書き、お客様にも画面や掲示で伝えておくと、お客様の支払義務がいつ消えるかがはっきりします。書いていないと、店が入金を受けられなかったときに、お客様の代金が支払い済みなのかが曖昧になります。
カード売上の受け方は、大きく四つの型に分かれます。型によって、店がお金に触れるかどうか、契約で決める中心が変わります。
| 型 | お金の流れ | 店の立場 | 契約で決める中心 |
|---|---|---|---|
| A 利用者が自分の端末・アカウントで受ける | 決済会社を通じて、利用者の口座へ直接入る | 資金に触れない。場所・電源・通信を提供する | 端末の持込みと設置のルール、通信や盗難の責任 |
| B 店の加盟店契約で受け、店が精算する | お客様から店の口座へ入り、締め日の後に利用者へ払い戻す | 利用者のために受け取って引き渡す | 加盟店契約との適合、預りの義務、差引き、取消しの負担、遅れたときの扱い |
| C 決済事業者の分配機能を使う | 決済事業者が利用者と店へ分けて入金する | 資金は受けず、分配の設定をする | 決済事業者との契約、利用者の登録と審査、手数料の負担、停止されたときの代替手段 |
| D 予約サイトの事前決済を使う | 予約サイトの運営者を通じて利用者へ支払われる | 決済には関与しないが、売上を把握する必要がある | 歩合の基礎になる売上の確認方法、キャンセル料の扱い |
Bは、利用者にとって手軽で、店にとっては最も論点が多い型です。Aは店の負担が小さい代わりに、利用者が自分で決済会社の審査を受けます。型を選ぶ基準は、店が事務を担えるか、利用者の売上を店が把握する必要があるか、の二つです。毎月の精算の手順(締め日、申告、明細、異議の期間)は料金プランと売上歩合の精算のページで整理しています。このページでは、その手前にある決済会社との関係と、預りの性格に絞ります。
店の加盟店契約で、利用者のお客様の売上を受けてよいのか
結論から言うと、よいかどうかは、決済代行会社との加盟店契約に書かれています。加盟店契約は、店が自分の商売の代金を受けることを前提に審査されているのが一般的で、他人の売上を処理することは、事前の承諾がなければ認められない型の契約が少なくありません。契約の内容は事業者ごとに違うため、確かめる項目を整理します。
- 申告した事業内容:申し込みのときの申告と実際の取引が一致しているか
- 第三者の売上の処理:他の事業者の売上を自己の売上として処理することが禁止か。事前に承諾を得れば可能か
- 入金日と売上の留保:入金までの日数、締め日、決済会社が売上の入金を保留できる場合
- 取消しの負担:チャージバックなどで売上が取り消されたときに、店がどの期限までに、いくら支払うことになるか
- 調査への協力:加盟店調査のときに、契約書や取引の資料を提出する義務があるか。利用者との契約書を決済会社やカード会社に開示することへの同意を、利用者から取っておく必要があるか
- 停止と解除:どのような事由で、事前の通知なく取扱いを停止されたり、契約を解除されたりするか
利用者との契約書には、決済会社やカード会社から調査を求められたときに、契約書の全部または一部を開示できることへの同意を入れている例があります。調査を受けてから同意を取り直すのでは、間に合わないことがあるためです。確認は、口頭ではなく書面やメールで残します。担当者の回答は、契約の更新や交代で変わることがあるため、回答の日付と内容を保存しておきます。
加盟店契約に触れたとして決済会社が取扱いを停止し、売上の入金を保留すると、店は利用者へ払い戻す原資を失い、支払いが遅れます。利用者は債務不履行(民法415条1項)を理由に損害の賠償や契約の解除(民法541条)を考えるため、契約書に決済会社起因の遅れの扱いが書かれていなければ、争いになります。利用者との契約には、決済が停止されたときの代替手段(現金、利用者個別の端末、振込の案内)と、その間の費用の扱いを書いておきます。契約全体の組み方はシェアサロン利用契約書・利用規約の作り方のページにまとめています。
資金決済法の観点:預かって渡す行為は、どこから問題になるのか
先に断っておくと、このページは一般的な考え方の整理で、個別のサービスが登録を要するかを判断するものではありません。条文で確認すべき点を示します。
収納代行とは、他人(受取人)に代わって、代金を支払う側から資金を受け入れ、受取人に引き渡す行為をいいます。型Bの店がしているのは、これに近い行為です。資金決済法は、銀行等以外の者が為替取引を業として営むことを資金移動業とし、これには登録が必要としています。収納代行のうちどこまでが為替取引にあたるかを定めた規定が、資金決済法2条の2です。
同条は、受取人からの委託などを受けて、債務者から弁済として資金を受け入れ、受取人に引き渡す行為のうち、次の二つのいずれかに当たるものを、為替取引に該当するものと定めています。
- 1号:受取人が個人(事業として又は事業のために受取人となる場合を除く)であることその他の内閣府令で定める要件を満たす行為
- 2号:国内から国外へ向けて、又は国外から国内へ向けて資金を移動させる行為(利用者の保護に欠けるおそれが少ないものとして内閣府令で定めるものを除く)
- 同条に当たらない収納代行が直ちに為替取引でないと言い切れるかは、取引の内容に応じて個別に確認する必要があり、このページでは判断しない
この書きぶりからは、同条1号が、受取人が「事業としてではない個人」であることなどを要素にした類型であることが読み取れます。シェアサロンに当てはめると、受取人にあたるのは利用者です。利用者が施術を事業として行っている個人や法人であれば、「事業としてではない個人」の類型には入らないという整理が出発点になります。ただし、一つ目の注意のとおり、この類型に入らないからといって、直ちに為替取引にあたらないと言い切れるわけではありません。加えて、利用者には、趣味や副業の延長で単発のワークショップだけを行う人や、事業の準備中の人が混じることがあります。「事業として」にあたるかは実態で判断されるため、利用者の属性を契約の入口で確認しておきます。
国をまたぐ点も確認します。払戻先が外国の口座である、利用者が外国に在住している、外国の決済事業者を経由する、といった事情があるときは、二つ目の類型の検討が加わります。お客様が外国のカードを使ったという事実だけでは足りず、資金が国境をまたいで移るのかが基準になります。
実務の組み方は、次の順に考えると整理しやすくなります。
- 店が資金に触れない型(前の章のA・C・D)にできるかを、まず検討する。決済事業者が利用者へ直接入金し、店は手数料の設定をするだけ、という設計なら、店が「受け取って渡す」関係そのものが生じない
- 型Bにする場合は、預りの期間を短くし、受け取った資金を他の資金と区別して管理し、店の売上として扱わず、表示でも店の料金と利用者の施術料を区別する
- 規約の表現を実態に合わせる。決済会社に任せているだけなのに「当社が代金を預かる」と書くと資金を受け入れていると読まれ、店の口座に入るのに「代金に一切関与しない」と書くと実態と食い違う。見直しのたびに、そのときに施行されている条文と公表資料も確認する
預りの契約の組み方:受け取ったお金に対する店の義務
預りの条項は、店が受け取った金銭をどう扱うかと、いつ、いくら引き渡すかを決める条項です。民法は、受け取った金銭を自己のために消費した受任者に対して、消費した日以後の利息の支払い、なお損害があるときは賠償の責任を負わせています(民法647条)。金銭を預かって自由に使える形(消費寄託)なら、預かった額と同じ額を返す義務を負うことになります(民法666条1項)。呼び名が「預り金」でも「収納金」でも、中身が受領して引き渡す関係なら、これらの考え方が当てはまりうるため、契約書では呼び名よりも実際の扱いを書きます。
決めておく項目は、位置づけ(代金債権は利用者に帰属し、店は受領するにとどまること)、区分管理(店の他の資金と帳簿または口座で分け、自己の事業に使わないこと)、支払いの時期、差し引ける項目の列挙、明細、差押えの扱い、店が遅れたときの遅延損害金の七つです。
支払いの時期:期日を決める型と、入金を待つ型
支払いの時期の書き方は、期日型と入金後型に分かれます。どちらを選ぶかで、決済会社からの入金が遅れたときの負担が、利用者と店のどちらに寄るかが決まります。
| 項目 | 期日型(例:翌月末日までに支払う) | 入金後型(例:決済会社から入金された後に支払う) |
|---|---|---|
| 利用者にとっての利点 | 支払日が見通せる。遅れたときは店の債務不履行として請求しやすい | 入金があった範囲で払われるため、店が資金を立て替えることによる遅れは起きにくい |
| 利用者にとっての不安 | 店が決済会社の入金より前に払う設計だと、店の資金繰りが悪化し、結果として遅れる懸念が残る | 決済会社の入金が遅れると、いつまでも払われない。入金されない場合の扱いが書かれていないと、請求の根拠が弱い |
| 店にとっての負担 | 決済会社の入金が遅れても、期日には払う必要がある。入金より前に払うなら、店が一時的に立て替える形になる | 決済会社の都合で支払いが遅れても、店が遅延損害金を負わない |
期日を原則にしつつ、決済会社起因の遅れだけを例外にして、店に通知の義務を課す形(条文例の第3項)が、双方に受け入れられやすい書き方です。
差引きは相殺:書く項目と、差押えとの関係
預かった売上から利用料や歩合を差し引く処理は、法律の言葉では相殺です。二人が互いに同種の債務を負い、双方が弁済期にあるときは、対当額で相殺でき(民法505条1項)、相殺は相手方への意思表示によってします(民法506条1項)。契約書に差し引ける項目を書き、明細で差し引いた内訳を示すと、その明細が意思表示と通知の役割を果たします。「その他、店が必要と認めるもの」のような差引きの書き方は、利用者が何を引かれるのか予測できず、争いのもとになります。
もう一つ、利用者に債権者がいる場合の扱いを決めておきます。利用者の債権者が、利用者が店に対して持つ払戻しの請求権を差し押さえることがあります。差押命令は、利用者に取立てなどの処分を禁止し、第三債務者(差し押さえられた債権の債務者)である店に利用者への弁済を禁止するもので(民事執行法145条1項)、その効力は命令が店に送達された時に生じます(同条5項)。申立てがあれば、店には、送達の日から2週間以内に、差押えに係る債権の存否などを陳述するよう催告が来ます。店が故意または過失で陳述をしなかったとき、または事実と違う陳述をしたときは、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(民事執行法147条)。届いた日時を記録し、対象の債権について払戻しを止め、期限内に事実のとおり陳述し、利用者へ通知する、という順序を決めておきます。通常どおり払ってしまうと、店が二重に責任を問われかねません。
差押え後に店が取得した債権による相殺は、差押え前の原因に基づいて生じたものでなければ、差押債権者に主張できません(民法511条1項・2項)。毎月発生する利用料がどちらにあたるかは個別に分かれうるため、差押えがあった場合の差引きの範囲を契約書に決めておきます。
条文例:カード売上の受領と払戻し(書き方の一例)
甲は、乙の顧客が乙の提供する施術その他の役務の対価としてクレジットカードで支払うときは、乙のために、本施設に設置した決済端末により当該対価を受領することができる。顧客が甲に支払ったときは、乙に支払ったものとして扱う。
甲が前項により受領した金銭(以下「受領金」という。)は、乙に帰属する。甲は、受領金を、甲の他の資金と区別して帳簿により管理し、乙に払い戻す目的以外に使用してはならない。
甲は、毎月末日を締日として、締日までの受領金について、第4項により差し引く金額を控除した残額を、内訳を記載した明細を添えて、翌月末日までに、乙が指定する口座へ振り込んで支払う。ただし、決済事業者の事情により甲への入金が遅れたときは、甲は、遅れを知った日から○営業日以内に乙へ通知し、入金を受けた日から○営業日以内に支払う。
甲が受領金から差し引くことができる金額は、次の各号に限る。(1)本契約に基づく利用料及び歩合金 (2)甲が立て替えた消耗品等の実費 (3)決済手数料のうち乙が負担する部分 (4)第○条により乙が甲に支払うべき取消しの戻し額
乙の債権者による差押え、仮差押えその他の通知を受けたときは、甲は、遅滞なく乙に通知し、法令に従って処理する。この処理のために甲が払戻しを留保したことによる遅延について、甲は責任を負わない。
甲が本条による払戻しを遅滞したときは、甲は乙に対し、遅滞した金額に対して年○%の割合による遅延損害金を支払う。乙が本契約に基づく金銭の支払いを遅滞したときの利率も同じとする。
(書き方の例)「甲」は店、「乙」は利用者です。○は運用に合わせて数字を入れます。利率は、法定利率(民法404条)と、約定利率が法定利率を超えるときは約定利率によるとする定め(民法419条1項)を踏まえて数字で書き、双方に同じ利率を置きます。
返金・取消し・チャージバックは、だれがどこまで負担するのか
結論から言うと、売上が取り消されたとき、店は決済会社から戻しを求められる一方で、利用者へはすでに払い終えているのが普通です。払い済みのお金を取り戻す手順が契約書にないと、店が負担して終わります。
チャージバックは法律の用語ではなく、手続の進み方や回答の期限、提出する資料は、決済会社の規約で決まります。異議の理由は、「注文していない」という不正使用の申出、「内容が違う」という申出、二重請求の申出、返金を断られたお客様がカード会社を窓口にする場合などで、最後の型は、返金のルールが不明確なときに起きやすくなります。取消しがあった月と元の売上があった月はずれるため、次の計算例で、戻し額を翌月以降の払戻しから差し引く流れを確認します。
取消しがあった月の払戻しの計算例(仮の数字)
200,000円−7,200円−50,000円−1,800円=141,000円です。取り消された額が当月の売上を超える月は払戻しがマイナスになるため、繰越しか請求かを決めておきます。手数料の返還は決済会社の規約によるため、この例は一つの仮定です。
戻し額の差引きは翌月以降の払戻しからが原則です。そのうえで、払戻しが不足するときの繰越しか請求か、退去後に通知が来たときも請求できること(保証金の充当の順序を含む)、決済会社が求める資料を利用者が期限内に提出する協力義務を書いておきます。店の設定の誤りで二重に決済されたような、店に原因がある取消しは店が負担します。
返金の判断も決めておきます。施術への不満による返金は利用者の施術にかかわるので、判断するのは利用者です。店が一方的に返金してその分を差し引けるとすると、利用者は同意していない返金の費用を負担させられます。返金は利用者の判断で行い、店の端末の誤操作のような店に原因があるときだけ店が負担する、という区別が、争いを避けやすい書き方です。施設全体のトラブルへの対処はシェアサロン・間借りの利用者トラブル対処のページでも扱っています。
条文例:取消しの戻し額と返金(書き方の一例)
顧客の返金は、乙が判断する。甲は、乙の指示に基づき、決済端末により返金の処理を行い、返金額(返金に係る決済手数料を含む。)を、乙に払い戻すべき金額から差し引くことができる。ただし、甲の端末の操作の誤りその他甲に起因する事由による返金は、甲が負担する。
カード会社への異議の申立てその他の事由により、受領金に係る売上が取り消された場合は、甲は、取消しを知った日から○営業日以内に乙へ通知する。乙が既に払戻しを受けた金額は、甲が決済事業者に支払った額又は支払うべき額の限度で、甲の請求に基づき、乙が甲に返還する。
甲は、前項の返還を、次回以降の払戻しから差し引く方法によって受けることができる。なお不足があるときは、乙は、甲の請求から○日以内に不足分を支払う。本契約の終了後も同様とする。
(書き方の例)返還の額を、実際に甲が負担する額の限度としているため、一方的な請求ではないことが読み取れます。
お客様に向けた表示と、店の免責の書き方
お客様から見れば、支払先は店の端末です。窓口を分けて画面や掲示に書いておくと、お客様が店に施術の苦情を持ち込むことが減ります。お客様は、通常、消費者です。店が決済の取扱いについてお客様に責任を負う場面で、「当店は一切の責任を負いません」と書くと、事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項として、消費者契約法8条1項1号により無効です。責任に上限を置く場合は、故意または重大な過失による場合を除くと、上限を定めるその一文の中に書く必要があります(同条3項)。「故意または重大な過失による場合を除き」と別の文に離して書くと、軽い過失にだけ適用されることを明らかにしていない条項として、無効とされるおそれがあります。
条文例:お客様向けの表示(書き方の一例)
本施設でのお支払いは、施術者に代わって当店が受け取ります。当店にお支払いいただいた時点で、施術者へのお支払いが完了したものとして扱います。施術や返金に関する問合せは施術者へ、決済や端末の不具合に関する問合せは当店へお願いします。
当店は、当店、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失による場合を除き、決済端末の障害により生じた損害について、○円を上限として賠償します。
(書き方の例)免責ではなく、賠償の上限を置く形にしています。
個人情報の扱いにも触れます。取消しの調査のために、お客様の氏名や予約の記録を利用者へ渡す場面では、個人データの第三者提供に原則として本人の同意が必要です(個人情報保護法27条1項)。明細は予約番号と金額に絞り、氏名などは載せない設計が安全です。また、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる義務があります(同法23条)。カード番号そのものを店や利用者が保持しない設計(決済会社が管理する方式)を選ぶのが基本です。
よくある失敗と直し方
実務で多い書き方を、場面ごとに整理します。
書き方の例(一般的な例):カード売上の預りと決済に関する条項
| 場面 | よくある書き方 | 整えた書き方 | 整える理由 |
|---|---|---|---|
| 支払日 | クレジット決済の売上は、月末締め、翌月末日に支払う(決済会社の入金サイクルは確認していない) | 決済会社の入金日より後に期日を置く。入金が遅れたときの通知と支払日を例外として書く | 入金より先に払う設計だと、店が立て替える形になり、資金繰りの悪化が利用者への遅れにつながるため |
| 差引き | 歩合や利用料との差引きの可否が書かれていない。または「その他店が必要と認めるもの」を差し引ける | 差し引ける項目を列挙し、明細で内訳を示す。差引きは相殺であることを前提に、順序を決める | 差引きの根拠が曖昧だと、払戻額をめぐって争いになるため |
| 遅延損害金 | 利用者の遅れにだけ年14.6%の遅延損害金を定め、店の払戻しの遅れには定めがない | 店の遅れにも同じ利率の遅延損害金を数字で書く | 一方にだけ利率を課す書き方は、一方的と受け取られやすいため |
| 店の立場の表現 | 「当社は決済代行として代金を受領し、精算する」とだけ書き、売上の主体や、預りの扱いが書かれていない | 代金債権は利用者に帰属し、店は利用者のために受領するにとどまること、区分管理すること、自己の収益としないこと、利用者への表示でも店の料金と施術料を区別することを書く | 店が販売の主体と読まれないようにし、預りの実態を説明できるようにするため |
| 取消しの負担 | 決済関連のトラブルは、別途協議して定める | 取消しの通知、戻し額の算定、差引きの方法、不足分の支払期限、退去後の扱いを書く | 協議だけでは、取消しが起きた日に動けないため |
収納金を扱う業務の契約書では、収納金を自己の固有財産とせず自己資産と区別して管理する、相手方の承諾なく流用や担保設定をしない、一定期間を超えて滞留させない、自己の料金と他人に帰属する金員を分けて表示する、といった補強が行われます。
ヒヤリングで確認すること
契約書や規約を整える前に、店の実際の運用を聞いておきます。答えによって、型A〜Dのどれか、どの条項が必要かが変わります。
カード売上を受ける店に、あらかじめ確認する事項
店の加盟店契約で、他の事業者の売上を処理してよいかを、決済会社に書面で確認しましたか。
- 聞く理由
- 第三者の売上の処理が禁止または承諾制の契約では、承諾がないまま続けると、取扱いの停止や売上の保留につながるためです。
- 気になる答えの例
- 「担当者に口頭で聞いた」「複数の施術者の売上があることは伝えていない」
利用者への支払日は、決済会社からの入金日の前ですか、後ですか。
- 聞く理由
- 前の場合は、店が一時的に立て替える形になり、資金繰りと遅れのリスクが店に集まります。
- 気になる答えの例
- 「入金が遅れても、約束の日には払っている(自己資金で立て替えている)」
受け取ったカード売上は、店の他のお金と、口座または帳簿で分けて管理していますか。預りの最長期間は決めていますか。
- 聞く理由
- 区分と滞留の管理は、預りの実態を説明する根拠になります。混ざっていると、返す義務の有無や、差押えのときの処理が難しくなります。
- 気になる答えの例
- 「店の口座にまとまって入り、月末に計算して払っている」「預りの期間は決めていない」
返金の判断はだれがし、費用はどこから出ていますか。
- 聞く理由
- 判断者と負担者が食い違うと、利用者と店の間で争いになるためです。
- 気になる答えの例
- 「その場で店が返金し、利用者に後で請求している」
利用者の国籍や居住地、払戻先の口座の所在、外国の決済事業者の利用はありますか。
- 聞く理由
- 国をまたぐ資金の移動があると、資金決済法の検討が加わるためです。
- 気になる答えの例
- 「払戻先は外国の口座」「外国の決済サービスで受けている」
利用者の債権者から差押えの通知が届いたとき、だれが何をするか決めていますか。
- 聞く理由
- 手順がないと、通常どおり払ってしまい、店が責任を問われかねないためです。
- 気になる答えの例
- 「届いたことはないが、どうすればよいか分からない」
起きがちなこと
カード売上の預りで起きがちなことと、先に確認すること
決済会社から、取扱いの停止を言い渡された
- 起きがちなこと
- 複数の施術者の売上を店名義で受けていることが、加盟店契約の定めに触れると判断され、売上の入金が保留される。利用者への払戻しの原資がなくなり、支払いが遅れる
- 先に確認すること
- 加盟店契約の第三者の売上の処理の定めを確認し、書面で承諾を得る。利用者との契約に、決済が止まったときの代替手段と通知の義務を書く
退去した後に、取消しの通知が来た
- 起きがちなこと
- 最終精算を終え、保証金も返したあとに売上が取り消され、店が決済会社に戻しを払う。利用者に請求したくても、根拠が契約書にない
- 先に確認すること
- 取消しの戻し額を、契約終了後も請求できること、請求の期限、保証金の充当の順序を書く
利用者の債権者から、差押命令が届いた
- 起きがちなこと
- 通常どおり払戻しをしてしまい、差押債権者から二重の請求を受ける。陳述の催告に答えず、損害賠償を問われる
- 先に確認すること
- 届いた日時の記録、払戻しの停止、期限内の陳述、利用者への通知を、手順として決めておく
借りる側が、契約の前にこれらの点を確認する視点はシェアサロンを借りる前のチェックポイントのページにまとめています。
よくあるご質問
施術者のお客様のカード代金を、店の決済端末で受けてもよいですか?
店の加盟店契約が、他の事業者の売上の処理を認めているかによります。禁止または承諾制の契約もあるため、決済会社に書面で確認します。認められる場合も、利用者との契約書に、受領の権限、区分管理、支払いの時期、差引き、取消しの戻し額を書いておきます。
カード売上を店が預かると、資金決済法の規制を受けますか?
一律には言えません。資金決済法2条の2は、受取人が個人(事業としてではない場合)である収納代行や、国をまたぐ収納代行を為替取引に当たるものと定めており、当てはまるかどうかは取引内容に応じて個別に確認する必要があります。店が資金に触れない型にするか、触れる場合は預りの期間や管理を整え、所管官庁の資料で確認します。
カード会社の異議で売上が取り消されたとき、店は利用者に請求できますか?
契約書に定めておけば、請求の根拠になります。取消しの通知の時期、戻し額の算定、次回以降の払戻しからの差引き、不足分の支払期限、契約終了後も請求できることを書きます。書かれていないと、店が負担して終わりやすくなります。
利用者の債権者から差押命令が届いたら、どうしますか?
効力は命令が店に送達された時に生じ、店は利用者への弁済を禁止されます(民事執行法145条)。届いた日時を記録し、払戻しを止め、陳述の催告に送達の日から2週間以内に事実のとおり答えます。陳述をしなかったり事実と違う陳述をしたりすると、損害賠償の責任を負います(同法147条)。
お客様向けに「店は一切責任を負いません」と書いてよいですか?
お客様が消費者のときは、事業者の債務不履行による損害賠償責任を全部免除する条項として、消費者契約法8条1項1号により無効です。上限を置くなら、故意または重大な過失による場合を除くことを、上限を定める一文の中に書きます(同条3項)。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の施設に必要な対応は、物件の契約内容、利用者の業種、料金の受け取り方によって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 法務省 / 公正取引委員会 フリーランス法