このページの要点
- 売春防止法11条は、情を知って場所を提供した者を処罰の対象にしている。知らずに貸した段階では直ちに該当しないが、気づいた後は貸し続けない仕組みが要る。
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)の性風俗関連特殊営業、旅館業法の宿泊、医師法・美容師法などの資格、許可や届出の要る営業を、名目ではなく行為の中身で規約に列挙する。
- 申込み時の目的の申告、本人確認、免許や届出の提示を貸す条件にする。本人確認の書類を取るときは、個人情報保護法21条の利用目的の明示も行う。
- 発覚したら、規約に基づく無催告解除、書面での退去要求、私物の保管と引取り、の順に進める。実力行使は自力救済にあたるおそれがあるため避ける。
個室を貸す側が、なぜ違法営業の問題に巻き込まれるのか
個室の時間貸しは、鍵のかかる小さな部屋を、時間単位で、さまざまな利用者へ渡す商売です。利用者が部屋の中で何をしているのかを、貸す側は常には見ていません。この「見えない」という性質が、リラクゼーション、エステ、整体、占いなどを名目にした申込みの中に、別の目的の利用が混じるリスクを生みます。貸す側が実際に困るのは、警察からの照会、近隣や他の利用者からの苦情、物件の持ち主(大家)への発覚、そして予約サイトや口コミでの評判の悪化です。
法律の面から、貸す側が意識しておきたい規定を、現行の条文で確認しておきます。
- 売春防止法11条1項は、情を知って、売春を行う場所を提供した者を、3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処すると定めています。同条2項は、売春を行う場所を提供することを業とした者を、7年以下の拘禁刑及び30万円以下の罰金としています。「情を知って」という要件があるため、知らずに貸した段階で直ちに該当するわけではありません。ただし、事実に気づいた後も貸し続ければ、その要件を満たしうる点が実務では重要です。
- 風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)2条6項2号は、個室を設け、その個室で異性の客の性的好奇心に応じて客に接触する役務を提供する営業を、店舗型性風俗特殊営業の一つとしています。この営業は、27条1項により営業所ごとの届出が必要です。28条1項は、学校、図書館、児童福祉施設などの敷地の周囲200メートルの区域内で営むことを禁じ、同条2項は条例による禁止地域も認めています。28条1項に違反した場合は、罰則の対象になります。
- 旅館業法2条5項は、「宿泊」を、寝具を使用して施設を利用することと定義しています。宿泊料を受けて人を宿泊させる営業は旅館業で、3条1項の許可が必要です。許可なく営んだ場合は、10条により6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処せられ、又はこれが併科されます。
これらは、営業を営む者に向けた規定です。場所の貸主に対する直接の義務や罰則が、すべての条文に書かれているわけではありません。それでも、貸した個室でこうした営業が行われれば、貸主は事情を聴かれ、物件の契約上の責任を問われ、評判を失う立場に立たされます。大家との関係では、借りた物件を契約で定められた用法に従って使う義務があり(民法616条、594条1項)、貸主の承諾なく第三者に使わせることもできません(612条1項)。承諾を得ずに第三者に使用させれば、貸主は契約を解除できます(612条2項)。個室の時間貸しは、そもそも大家の承諾の上に成り立つ商売です。承諾の取り方はシェアサロンの始め方のページで整理しています。
したがって、個室を貸す運営者に求められるのは、「知らなかった」と言える状況に頼らず、「知ったらすぐ止めた」と言える仕組みを持つことです。規約はその仕組みの中心になります。
排除する営業を、規約でどう言い表すか
禁止事項に「風紀を乱す行為」「公序良俗に反する行為」とだけ書いても、何が該当するのかを利用者も運営者も判断できません。排除したい営業を、法令の名称と具体的な行為の両方で書いておくと、注意するときも、解除するときも根拠になります。次の表は、類型ごとの根拠条文と規約への落とし込み方をまとめたものです。
| 類型 | 関係する条文 | 規約での書き方 | 運営者が確認する手がかり |
|---|---|---|---|
| 性風俗関連特殊営業にあたる営業 | 風営法2条5項・6項、27条、28条。売春防止法11条 | 風営法の定める性風俗関連特殊営業にあたる営業、及びこれに類する役務の提供を、名目を問わず禁止する | 個室で客の性的好奇心に応じる役務を想起させる告知文、予約の入り方の不自然な偏り、短時間に多数の客が入れ替わる利用 |
| 風俗営業(接待を伴う営業など) | 風営法2条1項、3条1項 | 風営法の許可が必要な営業を、許可の有無にかかわらず本施設では行わせない | 飲食の提供や接待を想起させる持込み、深夜の利用 |
| 宿泊(旅館業) | 旅館業法2条5項、3条1項、10条 | 宿泊、居住、及び寝具を使った休憩・仮眠の提供を禁止する。利用時間は施術に必要な範囲に限る | 寝具やシャワー用品の大量の持込み、翌朝までの連続利用、荷物を置いたままの滞在 |
| 医業・無資格の医療類似行為 | 医師法17条、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律1条・12条 | 医療行為及びこれに準ずる行為の禁止。免許が必要な施術は、免許の写しの提示を利用の条件とする | 「治療」「治る」など医療を思わせる表示、無資格での「マッサージ」の表示 |
| 無免許の美容行為 | 美容師法2条・6条・11条 | 美容所の届出が必要な施術を行う場合は、届出の有無を申告し、写しを提示する | ヘアやまつげ施術を予定しているのに、届出の話が出ない利用 |
| 承諾のない物販・勧誘・撮影 | 契約上の用法の限定(個別の条項) | 目的外の物販、勧誘、撮影・配信・収録は、事前の書面承諾がない限り禁止する | 撮影機材、商品の持込み、告知と異なる集客 |
表の一番上の行について補足します。風営法の定義は、「接触する役務を提供する営業」という行為の中身で決まります。「リラクゼーション」「エステ」「マッサージ」といった看板の名目が何であるかは、判断の決め手になりません。規約でも、名目ではなく行為の中身で書くことが大切です。たとえば、「名称や表示のいかんにかかわらず、利用者が客の性的好奇心に応じて接触する役務を提供することを禁止する」という形です。
また、時間貸しの禁止事項の一般的な書き方(騒音、臭気、共用部の占有、人数の上限など)は、ミラーレンタル・時間貸しサロンの利用規約のページで扱っています。このページでは、それらに加えて、違法営業の排除に特有の条項に絞ります。
条文例:違法営業の禁止
利用者は、本施設を、第○条に定める許可用途の範囲でのみ利用し、次の各号に掲げる営業又は行為に利用してはならない。名称、表示、実態の説明のいかんを問わない。
(1)風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に定める風俗営業又は性風俗関連特殊営業に該当し、又はこれに類する営業。
(2)宿泊又は居住、及び寝具を使用した休憩又は仮眠の提供。
(3)医療行為及びこれに準ずる行為。
(4)法令上、免許、許可、登録又は届出を要する業務を、これらを受けず又は行わずに行うこと。
利用者は、前項に違反し、又は違反するおそれがあるときは、直ちに本施設の利用を中止し、当社の指示に従わなければならない。
(書き方の例)番号や条名の「○」は、自社の規約の構成に合わせて入れます。「類する営業」と書くことで、定義に収まらない形の脱法的な利用も対象に含められます。
申込みの段階で入口を絞る:目的の申告・本人確認・資格と届出の確認
違法営業への対策は、利用が始まってからより、申込みの段階のほうが効きます。申込みの時点で確認することを決め、確認できないときは貸さない、という運用を規約に反映します。
申込みの前にあらかじめ決めておく問い
問い:利用者の氏名、連絡先、事業の屋号や名称をどこまで確認し、何で裏づけるか
連絡のつかない利用者に貸すと、問題が起きた後に注意も請求もできなくなります。本人確認は、運転免許証などの確認書類を見る、事前に連絡先へ折り返す、といった方法でそろえます。
問い:何の施術・サービスに使うのかを、どの程度具体的に書いてもらうか
「リラクゼーション」だけでは判断できません。施術の内容、所要時間、使う道具、1日の予約数の見込みまで書いてもらうと、実態との食い違いに気づきやすくなります。
問い:免許が必要な施術について、写しの提示を貸す条件とするか
資格や届出が必要な施術で、提示を求めない運用にすると、無資格の利用を見落とします。提示を条件にして、拒んだ場合は貸さないことを規約に書きます。
問い:申込み内容と異なる利用を見つけたとき、どう扱うか
申告が虚偽だったことそのものを解除事由にしておくと、違法営業の立証を待たずに止められます。
問い:利用者のウェブサイトや告知文を、事前に提出させるか
看板やウェブの告知文は、営業の実態が最も表れる部分です。提出と、変更時の再提出を義務にしておくと、確認が運用に乗ります。
本人確認で書類を預かったり、写しを取ったりする場合は、個人情報を取得することになります。個人情報保護法21条は、個人情報を取得した場合の利用目的の通知又は公表(1項)と、契約書など書面に書かれた本人の情報を取得する場合の利用目的の明示(2項)を求めています。規約や申込みの画面に「本人確認、反社会的勢力でないことの確認、違法な利用の防止及び発覚時の対応のために取得する」と目的を書いておきます。取得した後は、安全管理措置も必要です(同法23条)。写しは、必要がなくなった段階で廃棄する運用が基本です。申込みの段階で反社会的勢力でないことを表明させる条項の書き方は、反社会的勢力の排除条項の書き方のページで説明しています。
資格や届出の確認では、利用者の側の責任を明確にしておくことも大切です。たとえば、美容師法は、美容師でなければ美容を業としてはならないと定め(6条)、美容所を開設しようとする者は、あらかじめ届出をしなければならないと定めています(11条1項)。まつげやヘアの施術を予定する利用者がいる場合、その施術の場所を誰が美容所として届け出るのかは、施設の運営の形によって変わります。規約では「必要な免許・届出は利用者の責任と費用で取得・維持し、運営者は確認義務も監督義務も負わない」とだけ書くのではなく、「提示を受けなければ貸さない」という入口の運用とセットにしたほうが、実際には違法営業を防ぎやすくなります。
なお、シェアサロンのように長期で場所を借りる利用者が、契約前に自分で確認しておきたい点はシェアサロンを借りる前のチェックポイントのページに整理しています。
利用中に異変へ気づく手がかりを残す
申込みの確認をすり抜ける利用者はいます。大切なのは、利用が始まった後に異変へ気づく手がかりを、あらかじめ残しておくことです。ただし、手がかりを集める手段が、利用者や施術を受けるお客様のプライバシーを侵すものであってはなりません。
運営者が整えておくこと
- 入退室の記録(鍵の解錠記録、予約の履歴)を保存し、規約に目的を書いておく
- 利用人数の上限を決め、予約時と異なる人数・時間帯を異変の手がかりにする
- 近隣や他の利用者からの連絡窓口を設ける
- 寝具・調理器具など、許可用途に必要のない物の持込みを禁止し、確認できるようにする
- 疑いが生じたときの事実確認の手順(連絡、立入り、写真の記録)を決める
利用者に求めること
- 予約時に申告した人数・時間・目的の範囲で利用すること
- 運営者からの事実確認の連絡に、一定の期間内に応じること
- 疑いが生じたときの立入り確認に、立会いのもとで協力すること
- お客様から確認の様子を尋ねられたときは、利用者が自分の責任で説明すること
- 申込み内容に変更があるときは、事前に届け出ること
立入り確認の条項は、特に慎重に書きます。施術中の部屋へ運営者が予告なく入ることは、施術を受けているお客様のプライバシーを侵し、利用者の営業を妨げます。次の点を押さえると、確認の必要性とプライバシーの両立がしやすくなります。
- 立入りは、規約違反の疑いが具体的にあるとき、及び安全上の緊急時に限る
- 施術中の入室は避け、利用者又はその代理人の立会いを原則にする(緊急時を除く)
- 確認のために撮る写真は、部屋の状態の確認に必要な範囲に限る
- 確認の結果と、その後の措置を記録に残す
防犯カメラは、玄関や入口など防犯上必要な範囲に限って設置し、施術室の内部を常時撮影しないことを規約と掲示に書いておきます。カメラの範囲と掲示の書き方は時間貸しの利用規約のページで詳しく扱っています。映像を警察などに提供する場合の規約の書き方は、後の章で述べます。
疑いの段階と、確定した後を分けて書く
違法営業が疑われる場面でも、運営者の側が確証を持てないことは多いものです。疑いだけで利用者の営業を止めれば、後から事実無根だったとわかったときに、利用者との間で別の争いが生じます。一方で、確証を待てば、その間に違法な利用が続きます。この二つのバランスを取るには、疑いの段階の措置と、確定した後の措置を分けて規約に書くことが有効です。
| 段階 | 運営者ができること | 規約に書いておく内容 |
|---|---|---|
| 疑いが生じた段階 | 事実確認の連絡、告知文や予約内容の提出要求、次回の予約の一時保留 | 確認に応じる義務、一定の期間内に応じないときは利用停止ができること、停止中の料金の扱い |
| 違反の可能性が高い段階 | 利用の一時停止、鍵・認証権限の一時停止、後続予約の調整 | 停止の要件(具体的な違反の疑い)、停止期間の上限、後続の利用者への対応費用の負担 |
| 違反が確認された段階 | 催告なしの解除、退去の要求、関係機関への相談・通報 | 無催告解除の事由、解除後の既払い料金の扱い、違約金、損害賠償、関係機関への情報提供の同意 |
疑いの段階の措置を設ける理由は、運営者が「不適切と判断したとき」といった曖昧な基準で、いつでも止められる状態を避けるためでもあります。要件を具体的に書いておけば、利用者に説明するときも、後から運営者の対応の妥当性を示すときも、規約が根拠になります。曖昧な解除事由が運営者に不利に働く場面は、利用者トラブルの対処のページでも触れています。
疑いを理由に利用者へ確認を求める場面では、言い方にも注意が必要です。違法な営業をしていると決めつけるような書面や口頭の連絡は、利用者の信用を傷つけるおそれがあります。確認の連絡は、「規約に基づく利用状況の確認です」「次の資料の提出をお願いします」と、事実の確認と資料の依頼にとどめ、評価や断定は含めないようにします。
発覚したときの解除と退去:手順を規約に書き、実力行使は避ける
違法営業が確認されたら、運営者はその日のうちに動く必要があります。次の手順を、規約の条項と社内の対応メモの両方にしておくと、慌てずに済みます。
発覚した日から退去までの流れの例
- 事実を記録する気づいた日時、情報の出どころ(通報、苦情、点検)、予約の履歴、告知文の画面、利用者とのやり取りを保存します。後で説明が必要になったときの基礎資料です。
- 利用を止める規約の解除条項に基づき、無催告で解除する旨を書面又は電子メールで通知し、以後の入室権限を止める旨を伝えます。利用者が部屋にいるときの対応は、後述の自力救済の点に注意します。
- 退去を求める解除後は、書面で退去の期限を示して退去を求めます。私物の持出しの方法と期間、鍵・カードの返却方法も同じ通知に書きます。
- 後続の利用者と大家に対応する後続の予約者への連絡と返金、近隣への対応を行います。大家には、必要に応じて経緯を説明します。
- 必要に応じて警察などの関係機関へ相談する性風俗にあたる営業の疑いが強いときは、所轄の警察署に相談します。映像や利用者の情報を提供するときは、個人情報の取扱いの根拠を整理します。
解除の条項は、民法の原則だけに頼らず、規約に事由を列挙しておくことが大切です。民法541条は、相当の期間を定めた催告をしても履行がなければ解除できると定め、542条は、催告なしに直ちに解除できる場合を限定して列挙しています。違法営業への利用は、この列挙にそのまま当てはまるとは限らないため、規約に「法令に違反する営業に本施設を使用したとき、又はそのおそれが認められるときは、催告なしに解除できる」と明記しておく意味があります。
条文例:発覚時の解除と退去
利用者が第○条(違法営業の禁止)に違反したとき、申込み時の申告に虚偽があったとき、又は前条の確認に正当な理由なく応じないときは、当社は、催告をすることなく、直ちに本契約を解除し、利用を停止することができる。
前項により解除したときは、利用者は、当社が指定する期限までに、自己の物品を持ち出して本施設から退去し、鍵、カードその他の貸与物を返還しなければならない。
利用者が前項の期限までに物品を持ち出さないときは、当社は、当該物品を○日間保管した後、利用者に通知のうえ、利用者の費用で引取りを求めることができる。
第1項による解除があったときは、当社は、既に受領した利用料金を返還せず、また、利用者は、当社が被った損害を賠償する。
当社は、第1項に該当する事実を確認したときは、警察その他の関係機関に、必要な範囲で通報し、情報を提供することができる。利用者は、あらかじめこれに同意する。
(書き方の例)日数や金額は、運営の実態に合わせて決めます。物品の処分を前提にせず、「保管と引取り」の手続にしている点がポイントです。
ここで注意したいのは、自力救済の問題です。解除したからといって、運営者が利用者の私物を勝手に運び出す、廃棄する、部屋を締め出して中の物を使えなくするといった実力行使をすることは、原則として許されないと解されています。利用者が退去に応じない場合の最終的な手段は、裁判所の手続です。規約には「退去を求め、応じない場合は以後の入室をお断りし、損害を請求する」という手順を書き、私物は保管と引取りの手続にします。鍵やスマートロックの権限を停止することは、解除後に新たな入室をお断りする措置として規約に書けますが、利用者が室内にいる間に出入りを妨げる使い方は避けます。時間貸しの自力救済の考え方は、時間貸しの利用規約のページの無断延長の項目と共通します。
関係機関に映像や利用者の情報を提供する場面にも、整理が必要です。個人情報保護法27条1項は、本人の同意なく個人データを第三者に提供することを原則として禁じ、例外として、法令に基づく場合(1号)や、人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合で本人の同意を得ることが困難なとき(2号)などを挙げています。規約で、違法な利用の防止と発覚時の対応のために警察などへ提供する場合があることを利用目的として示し、利用者の同意を取っておくと、運用の根拠が整います。ただし、同意があるからといって何でも提供してよいわけではなく、提供する範囲は、事案の解決に必要なものに絞ります。
違約金・損害賠償・料金の扱いと、条項の点検
違法営業が発覚して解除したとき、運営者に生じる損害は、後続の利用者への返金、清掃や原状回復の費用、評判の悪化、調査にかかった費用などです。これらをどこまで請求できるかを、あらかじめ決めておきます。
- 既払いの利用料金は返さない、と明記する(解除の原因が利用者にあるため)
- 違約金を定める場合は、金額を数字で書き、損害賠償の予定であるか、実損とは別の違約金であるかを明確にする
- 損害賠償の範囲に、後続の利用者への返金・割引、苦情対応の費用、調査費用を例示する
- 原状回復の費用と、清掃・消臭などの特別清掃の費用を実費で請求できるようにする
違約金は、民法420条3項により賠償額の予定と推定されます。違約金と実損の関係を書かないままでは、実損が違約金を超えても追加で請求できないおそれがあります。時間貸しの違約金の考え方は時間貸しの利用規約のページでも整理しています。違法営業の場面では、後続の利用者への返金や調査の費用など実損が大きくなりやすいため、違約金の額と、実損を別に請求できるかどうかを、条項の中で分けて書いておきます。同じ行為について違約金を二重に請求する構成になっていないかも、点検が欠かせません。
利用者が事業者である場合、消費者契約法の制限は直接には及びません。同法2条は、事業として又は事業のために契約の当事者となる場合の個人を「事業者」としており、施術のために個室を借りる個人も、通常は事業者として扱われます。ただし、趣味や私的な集まりのために借りる個人が混じる施設では、利用者が「消費者」にあたることがあり、その場合、解除に伴う損害賠償の予定や違約金のうち、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分は無効です(同法9条1項1号)。利用者の層に応じて、条項を使い分けられるようにしておくと安心です。
条項を作るときの落とし穴
違法営業の排除の条項は、強く書くほど安心に見えますが、書き方を誤ると、かえって運営者の立場を弱くします。よくある誤りを整理します。
書き方の例(一般的な例):違法営業の排除に関する条項
| 場面 | よくある書き方 | 整えた書き方 | 整える理由 |
|---|---|---|---|
| 禁止事項 | 「公序良俗に反する行為」「風紀を乱す行為」とだけ書く | 風営法・旅館業法・医師法など、対象の法令と行為を列挙し、「これらに類する行為」を加える | どの行為が該当するのかを、利用者にも運営者にも判断できるようにするため |
| 解除 | 「当社が不適切と判断したとき」は直ちに解除できる | 違反、申告の虚偽、確認への不応答、といった具体的な事由を列挙したうえで、無催告の解除を認める | 曖昧な基準は、利用者との争いで運営者に不利に働くため |
| 退去 | 「退去しないときは荷物を撤去し、鍵を交換する」 | 「退去を求め、応じない場合は以後の入室を断り、損害を請求する。私物は保管と引取りの手続による」 | 実力行使は自力救済にあたるおそれがあり、規約自体が過大と受け取られるため |
| 確認 | 運営者はいつでも利用者の室内に立ち入れる | 疑いが具体的なとき・緊急時に限り、原則として立会いのもとで確認できる | 施術を受けるお客様のプライバシーと、利用者の営業を守るため |
| 通報 | 運営者は、利用者に関する情報を自由に第三者へ提供できる | 違法な利用の防止と発覚時の対応のために必要な範囲で、関係機関へ提供することに同意を得る | 個人情報の取扱いの根拠を示し、提供の範囲に歯止めをかけるため |
このほか、運営者の側にも、規約に書いた内容を実際に運用する責任があります。規約に「入室記録を保存する」と書いても保存していなければ、規約は機能しません。確認の手順、対応する担当者、連絡先、記録の保管場所を、社内の運用メモとして決めておくことが、規約の実効性を支えます。そのほか、利用者のお客様に起因する事故やトラブルの責任分担はシェアサロン利用契約書・利用規約のページで整理しています。
起きがちなことと、対策の整理
最後に、個室の時間貸しで違法営業をめぐって起きがちな場面を、型に分けて整理します。
| 起きがちなこと | 原因 | 備え |
|---|---|---|
| 申込みの名目と、実際の利用が違っていた | 利用目的の申告が「リラクゼーション」の一言で、確認する手がかりがなかった | 施術の内容・所要時間・告知文の提出を求め、虚偽申告を解除事由にする |
| 苦情で初めて気づき、対応が遅れた | 近隣や他の利用者からの連絡窓口がなく、記録も残っていなかった | 連絡窓口を設け、入退室記録を保存し、確認の手順を決めておく |
| 確認したら言い争いになった | 疑いの段階と確定後の措置が分かれておらず、断定的な連絡をした | 疑いの段階は事実確認と資料依頼にとどめ、評価を含めない |
| 解除したのに利用者が居座った | 退去の手順が規約になく、私物の扱いも決めていなかった | 解除後の退去の期限、私物の保管・引取り、鍵の返却を書面で示す |
| 後続の利用者への返金が負担になった | 後続への影響を、損害の範囲に入れていなかった | 後続の返金・割引・苦情対応の費用を損害として例示する |
| 大家から指摘を受けた | 大家の承諾が、個室の時間貸しという形まで及んでいなかった | 承諾の範囲を書面で確認し、違法営業を禁じる規約の写しを共有する |
個室の時間貸しは、手軽に始められる分、貸す側の責任が見えにくい商売です。入口で絞り、利用中に気づく手がかりを残し、発覚した日に止める根拠を持つ。この三つがそろった規約と運用があれば、万が一の場面でも、運営者は落ち着いて対応できます。
よくあるご質問
個室の時間貸しで、利用者が違法な営業をしていたと後から知った場合、貸した側も処罰されますか?
売春防止法11条は、情を知って場所を提供した者を処罰の対象にしています。知らずに貸した段階では直ちに該当しませんが、事実を知った後も貸し続ければ「情を知って」の要件を満たしうるため、気づいた時点で利用を止める仕組みが重要です。個別の判断は事実関係によります。
リラクゼーションの名目で借りた個室を、宿泊に使われる心配はありませんか?
旅館業法2条5項は、寝具を使用して施設を利用することを宿泊としています。宿泊料を受けて人を宿泊させる営業には許可が必要です(3条1項)。規約で宿泊・居住に加え、寝具を使った休憩・仮眠の提供も禁止し、利用時間を施術に必要な範囲に限っておくと、対策になります。
利用者の本人確認で身分証の写しを取ってもよいですか?
個人情報を取得する以上、取得の利用目的を本人に通知・公表又は明示する必要があります(個人情報保護法21条)。目的を規約や申込み画面に書き、取得後は安全管理措置を講じ(同法23条)、必要がなくなった写しは廃棄する運用にします。
違法営業が発覚したら、すぐに荷物を出して部屋の鍵を替えてよいですか?
利用者の私物を勝手に運び出したり、締め出したりする実力行使は、自力救済にあたるおそれがあります。規約に基づく無催告の解除、書面での退去要求、私物の保管と引取りの手続という順序で進め、退去に応じないときは裁判所の手続によります。
違法営業の疑いがある利用者に、どのような連絡をすればよいですか?
疑いの段階では、規約に基づく利用状況の確認であることを伝え、告知文や利用内容の提出を依頼するにとどめます。違法な営業と決めつける表現は、利用者の信用を傷つけるおそれがあるため避け、評価は確認の結果が出てから行います。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の施設に必要な対応は、物件の契約内容、利用者の業種、料金の受け取り方によって異なります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。参考: e-Gov法令検索 / 厚生労働省 / 法務省 / 公正取引委員会 フリーランス法